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2・意外な告白
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横にいて似合うのは楚々とした大和なでしこタイプ……かな。
わたしとは真逆の。
そんなことを思いながら、サングリアのグラスに手を伸ばし、室長のビールの入ったグラスに軽く合わせた。
「乾杯」
「いただきます」
カット・オレンジで飾られたグラスを満たしているルビー色のサングリアをゴクリと一口。
ああ、この味。
やっぱり美味しい。
「美味しい?」
「はいっ。フルーツの酸味がワインによく合って、ほんと、天上的な美味しさなんですよ」
彼は愉しそうに笑った。
「そんなに幸せそうな顔をされると、こっちも嬉しくなってくる。久保……あのさ」
と、室長は何か言いかけたけれど、なかなか口を開かない。
なんか、いつもと様子が違う。
少し不自然な沈黙が続く。
「室長……?」
よし、と小さく気合いを入れて、室長はわたしに目を向けた。
「今日来てもらったのは、他でもないんだけど」
「はい」
「単刀直入に言うけど……、久保、僕と付き合う気ない?」
「えっ?」
わたしは思わず手にしていたグラスを落としかけた。
向かいの室長はふーっとひとつ、長い大きな息を吐いた。
「もどかしい1日だったよ。時間が経つのがとにかく遅くてね。落ち着かなかった」
室長の言葉の意味を追いきれないほど、頭が混乱していた。
なんか、とんでもないセリフを耳にしたような……
「あの……すみません。さっきの、もう一度、お願いできますか?」
「僕と付き合って欲しいって言ったんだけど」
やっぱり聞きちがいじゃない⁉︎
「な、なんで……?」
「3年前、君がプランナー室に来たときからいい子だなと思ってたよ。でも今回のプロジェクトを通じて、さらに久保の仕事への姿勢や情熱に心を打たれてね。そして、気づいたんだ。君に今までにない特別な感情を抱いてる自分に」
「冗談、ですよね?」
「僕が冗談でそんなこと言う人間だと思う?」
いや、そんな人じゃない。
わたしは即座に首を振った。
「でも、なんでわたしに」
つい何度も確認してしまう。
それほど意外だったから。
「いや、それは、その、だから、君が好きだからに決まっているだろうって、そんなに何度も言わせるなよ」
室長は照れ臭そうに頭を掻いている。
好きって……
えーっ!
今までそんな素振り、1ミクロンもなかったですけど?
突然の告白すぎて、どう返事をしたらいいのかわからない。
「でも、本当にどうしてですか? こんな女らしさのカケラもない……」
室長はかぶりを振った。
「そんなことないよ。君はどんなに忙しくても笑顔を絶やさないし、後輩の面倒見もいいし。とても細やかな気配りができる、素敵な女性じゃないか」
顔から火を吹きそう。
「えっと、あの……」
わたしの戸惑いを察して、室長は場を取りなすように言った。
「ごめん、唐突すぎたね。まず食べよっか。せっかくの料理が冷めちゃうから」
「は、はい」
テーブルには色とりどりのタパスや美味しそうに湯気を立てたアヒージョが並んでいる。
まずは食べて落ちつこう。
空腹では頭もよく回らない。
わたしとは真逆の。
そんなことを思いながら、サングリアのグラスに手を伸ばし、室長のビールの入ったグラスに軽く合わせた。
「乾杯」
「いただきます」
カット・オレンジで飾られたグラスを満たしているルビー色のサングリアをゴクリと一口。
ああ、この味。
やっぱり美味しい。
「美味しい?」
「はいっ。フルーツの酸味がワインによく合って、ほんと、天上的な美味しさなんですよ」
彼は愉しそうに笑った。
「そんなに幸せそうな顔をされると、こっちも嬉しくなってくる。久保……あのさ」
と、室長は何か言いかけたけれど、なかなか口を開かない。
なんか、いつもと様子が違う。
少し不自然な沈黙が続く。
「室長……?」
よし、と小さく気合いを入れて、室長はわたしに目を向けた。
「今日来てもらったのは、他でもないんだけど」
「はい」
「単刀直入に言うけど……、久保、僕と付き合う気ない?」
「えっ?」
わたしは思わず手にしていたグラスを落としかけた。
向かいの室長はふーっとひとつ、長い大きな息を吐いた。
「もどかしい1日だったよ。時間が経つのがとにかく遅くてね。落ち着かなかった」
室長の言葉の意味を追いきれないほど、頭が混乱していた。
なんか、とんでもないセリフを耳にしたような……
「あの……すみません。さっきの、もう一度、お願いできますか?」
「僕と付き合って欲しいって言ったんだけど」
やっぱり聞きちがいじゃない⁉︎
「な、なんで……?」
「3年前、君がプランナー室に来たときからいい子だなと思ってたよ。でも今回のプロジェクトを通じて、さらに久保の仕事への姿勢や情熱に心を打たれてね。そして、気づいたんだ。君に今までにない特別な感情を抱いてる自分に」
「冗談、ですよね?」
「僕が冗談でそんなこと言う人間だと思う?」
いや、そんな人じゃない。
わたしは即座に首を振った。
「でも、なんでわたしに」
つい何度も確認してしまう。
それほど意外だったから。
「いや、それは、その、だから、君が好きだからに決まっているだろうって、そんなに何度も言わせるなよ」
室長は照れ臭そうに頭を掻いている。
好きって……
えーっ!
今までそんな素振り、1ミクロンもなかったですけど?
突然の告白すぎて、どう返事をしたらいいのかわからない。
「でも、本当にどうしてですか? こんな女らしさのカケラもない……」
室長はかぶりを振った。
「そんなことないよ。君はどんなに忙しくても笑顔を絶やさないし、後輩の面倒見もいいし。とても細やかな気配りができる、素敵な女性じゃないか」
顔から火を吹きそう。
「えっと、あの……」
わたしの戸惑いを察して、室長は場を取りなすように言った。
「ごめん、唐突すぎたね。まず食べよっか。せっかくの料理が冷めちゃうから」
「は、はい」
テーブルには色とりどりのタパスや美味しそうに湯気を立てたアヒージョが並んでいる。
まずは食べて落ちつこう。
空腹では頭もよく回らない。
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