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第4章 〈レッスン1〉 ハグの効用
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玲伊さんはわたしの言葉に吹き出すと「ゆっくり堪能して。かわいそうだけど、しばらくお預けだからね」と言った。
「ああ、そうでした」
わたしのその顔を見て、玲伊さんはまた吹き出す。
「この世の終わりみたいな顔してるよ。なんならおかわりしてもいいよ」
わたしは慌てて首を振った。
「さすがにこんな立派なパフェふたつは食べられないですよ」
「じゃあ、俺のソルベも食べる?」
そう言って、ソルベを乗せたスプーンをわたしの前に差し出す。
えっ?
それを食べろってこと?
わたしはブンブンと首を振った。
「いえ、どうぞおかまいなく」
その言い方がツボにハマったようで、玲伊さんはいっそう顔をほころばせた。
「ああ、楽しいよ。優ちゃんと一緒にいると」
そう言って、琥珀色の目を輝かせる。
唇には穏やかに笑みを浮かべて。
正面からそんな顔で見つめられると、恥ずかしくてたまらない気持ちになってくる。
照明を落とした店でよかった。
きっと今、わたし、火を噴きそうなほど真っ赤な顔をしているはず。
これ以上、玲伊さんの眼差しに反応しすぎてしまわないように、とにかく目の前のパフェに集中した。
玲伊さんはもうとっくにソルベを食べ終わっている。
スマホでも見ていてくれればいいのに、なんだか愉しげにわたしを見つめている。
わたしはあくまでパフェを食べるのに集中していると装った。
本当は、味がよくわからなかったのだけれど。
「よし」と玲伊さんは言った。
「じゃあ、今回のプロジェクトを完走したら、都内で一番豪華なスイーツビュッフェをおごるよ」
「ほんとですか?」
「ああ。俺からのご褒美」
「じゃあ、その日を楽しみに頑張ります」
玲伊さんはうんと軽く頷き、目を細めた。
「あー、本当においしかったです。ちゃんと最後まで楽しめるように底のほうにもマンゴーがたっぷり入っていて」
「満足した?」
「はい」
「じゃあ、行こうか」
玲伊さんはレシートを取り、レジに向かった。
レジで会計している彼を離れて眺める。
そして体からあふれ出しそうになる「彼が好き」という気持ちを必死に抑え込んだ。
今日、二人で過ごしてみて、よくわかった。
わたし、やっぱり〈妹ポジション〉でいるなんて無理だ。
この気持ちを伝えてしまったほうが楽になれるかもしれないとも思う。
でも、あんなに優しい玲伊さんのことだ。
今、わたしに気持ちを打ち明けられたら困るに決まっている。
それにわたしだって、もう今のように彼と接することはできなくなる。
告白して、玉砕して、それで距離を置けるならいい。
でも、わたしはこれから数カ月間、玲伊さんの施術を受ける身だ。
気まずくなったりしたら、とても耐えられない。
とにかく今は、シンデレラ・プロジェクトを完走して、玲伊さんの期待に応えなければ。
「ああ、そうでした」
わたしのその顔を見て、玲伊さんはまた吹き出す。
「この世の終わりみたいな顔してるよ。なんならおかわりしてもいいよ」
わたしは慌てて首を振った。
「さすがにこんな立派なパフェふたつは食べられないですよ」
「じゃあ、俺のソルベも食べる?」
そう言って、ソルベを乗せたスプーンをわたしの前に差し出す。
えっ?
それを食べろってこと?
わたしはブンブンと首を振った。
「いえ、どうぞおかまいなく」
その言い方がツボにハマったようで、玲伊さんはいっそう顔をほころばせた。
「ああ、楽しいよ。優ちゃんと一緒にいると」
そう言って、琥珀色の目を輝かせる。
唇には穏やかに笑みを浮かべて。
正面からそんな顔で見つめられると、恥ずかしくてたまらない気持ちになってくる。
照明を落とした店でよかった。
きっと今、わたし、火を噴きそうなほど真っ赤な顔をしているはず。
これ以上、玲伊さんの眼差しに反応しすぎてしまわないように、とにかく目の前のパフェに集中した。
玲伊さんはもうとっくにソルベを食べ終わっている。
スマホでも見ていてくれればいいのに、なんだか愉しげにわたしを見つめている。
わたしはあくまでパフェを食べるのに集中していると装った。
本当は、味がよくわからなかったのだけれど。
「よし」と玲伊さんは言った。
「じゃあ、今回のプロジェクトを完走したら、都内で一番豪華なスイーツビュッフェをおごるよ」
「ほんとですか?」
「ああ。俺からのご褒美」
「じゃあ、その日を楽しみに頑張ります」
玲伊さんはうんと軽く頷き、目を細めた。
「あー、本当においしかったです。ちゃんと最後まで楽しめるように底のほうにもマンゴーがたっぷり入っていて」
「満足した?」
「はい」
「じゃあ、行こうか」
玲伊さんはレシートを取り、レジに向かった。
レジで会計している彼を離れて眺める。
そして体からあふれ出しそうになる「彼が好き」という気持ちを必死に抑え込んだ。
今日、二人で過ごしてみて、よくわかった。
わたし、やっぱり〈妹ポジション〉でいるなんて無理だ。
この気持ちを伝えてしまったほうが楽になれるかもしれないとも思う。
でも、あんなに優しい玲伊さんのことだ。
今、わたしに気持ちを打ち明けられたら困るに決まっている。
それにわたしだって、もう今のように彼と接することはできなくなる。
告白して、玉砕して、それで距離を置けるならいい。
でも、わたしはこれから数カ月間、玲伊さんの施術を受ける身だ。
気まずくなったりしたら、とても耐えられない。
とにかく今は、シンデレラ・プロジェクトを完走して、玲伊さんの期待に応えなければ。
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