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第2章 シンデレラ・プロジェクトって?

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「わあ……」
 一歩足を踏み入れるなり、息を飲んだ。

 そこは、まるでヨーロッパの宮殿の一室のような、豪奢なインテリアで飾られた部屋だった。

 部屋の中央には大きなシャンデリアが輝き、窓にはドレープを描いた光沢が美しいベージュピンクのカーテンがかけられている。
 その前には、大きな陶器の壺に白を基調とした花々が生けられ、床は薄いピンクにグレイの斑入り大理石。
 金色の猫足のアンティークの寝椅子がソファー替わりに置かれていた。

「ここは?」
「VIP専用のサロンだよ」
 
 部屋の奥には真珠色のオーガンジーで仕切られたブースがあった。
 中に入ると、大きな鏡の前にアンティーク家具を思わせる革製のセット椅子が置かれていて、サイドに洗髪台も備えられていた。

「さ、こっちへ来て」
 上着を脱ぎながら、玲伊さんはわたしをセット椅子に座らせた。

「準備するから、ちょっと待っていて」

 彼はカラカラと音をさせて、アンティーク調のワゴンを引いてきた。

 ケープの色は黒。
 え、これ、シルクだ。肌ざわりがとってもいい。
 
 彼はわたしの髪からゴムをはずし、とかしはじめた。

「やっぱり枝毛だらけだな。前から気になってたんだよ。ちゃんと手入れしてないだろう」
「え、でもトリートメントは使ってますけど」
「ただシャンプーのあとにつけて流してるだけだろ。それじゃ、ほぼ効果ないから」
「はあ」


「本当はスペシャルトリートメントをしてやりたいところだけど、それはまた今度。俺も15時半から予約が入ってるし、優ちゃんも用事があるんだろう?」

「はい。毎週水曜日と土曜日には、店に近所の小学生が集まってくるんです」
「小学生が?」
「すぐ近くに都営団地がありますよね」
「ああ、昔、あそこでよく遊んだな」

「毎回3~4人、遊びに来ます。読み聞かせをしたり、宿題を見てたりして過ごしているだけですけれど」
「へえ、そっか。じゃあ、今は簡単なセットとメイクだけにしておくよ」

 玲伊さんはヘアアイロンのプラグをつなぎ、それからブラシを手に持った。
「ハーフアップかお団子、どっちがいい?」
「えーと、じゃあ、お団子で」
「了解」

 玲伊さんはあっという間に髪をまとめてくれた。
 次に前髪をクリップで留め、コットンで顔を拭き、まるで絵具箱のような、色とりどりのメイク道具が入ったボックスを開け、魔法のような手際で、わたしの顔にメイクを施してゆく。

 その間、ドキドキしっぱなし。
 玲伊さんとの距離が近すぎる。

「ちょっと、目つぶって」
 わたしの肩をつかみ、覆いかぶさるようにアイメイク。
「上、向いてくれる」
 今度は顎に手を添えられ、紅筆で口紅を塗られ……
 ものの10分で、メイクは完成した。

「鏡、見てごらん」
「えっ? すごい」
「言ったとおりだろう?」
 玲伊さんはさらに仕上げだよ、と言って、ヘアアイロンでおくれ毛をカールした。
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