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10(一樹サイド)
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週明けだというのに、取引先の社長がなかなか離してくれず、家に帰りついたのは午前1時すぎだった。
ドアを開けると、テレビの音がしていた。
梶原さん、起きてたのか。
リビングに向かうと彼女はカウチソファーの上で丸まって眠っていた。
こんなところで寝たら、風邪ひくのに。
その寝姿がまるで幼子のようにたよりなくて、俺は思わず彼女の髪を撫でていた。
「うん……」とかすかな声を上げ、彼女はゆっくり目を開けた。
まだ夢のなかにいるような顔で俺を見ている。
「あ、おかえり」
「こんなところで寝たら、風邪ひきますよ。先に寝ていてよかったのに」
「でも……浅野くん、「おかえり」って言ってもらいたいって」
「それで……待っていてくれたんですか?」
俺が適当に言ったことを真に受けて……本当に、この人は。
まずい。
抱きしめてしまいたくなるほど、彼女を愛しく思う気持ちがこみあげてくる。
そう、俺はずっとこの人に恋してきた。
配属された日、微笑みかけてくれた、あのときから。
仕事に慣れず戸惑う俺を、一番親身になって助けてくれたのは彼女だった。
美しい人なのにそれをまったく鼻にかけず、異性からも同性からも信頼されている彼女に、俺はどんどん惹かれていった。
伊川さんと付き合っていると知ったときはショックで眠れなかった。
それでも諦められなかった。
あの夜、橋の上で彼女を家に誘ったとき、誓って下心はなかった。
冷え切って震えている彼女を一刻も早く温かい場所に連れていってあげたい。
本当にそのことしか頭になかった。
とはいえ、こうして身近に接したら、想いは嫌でも募る。
ゲームで自分の気持ちをごまかすのも、そろそろ限界。すっかり生殺し状態だ。
手ひどい失恋を経験したばかりの彼女に身勝手に気持ちをぶつけたりしたら、さらに悩ませてしまうことになる。
そう思って、必死で自分を抑えている。でも……
「こんな無防備で可愛い寝姿なんて見せられたら、いつまで耐えられるか、自信ないよ」
心の中で、そうひとりごちた。
ドアを開けると、テレビの音がしていた。
梶原さん、起きてたのか。
リビングに向かうと彼女はカウチソファーの上で丸まって眠っていた。
こんなところで寝たら、風邪ひくのに。
その寝姿がまるで幼子のようにたよりなくて、俺は思わず彼女の髪を撫でていた。
「うん……」とかすかな声を上げ、彼女はゆっくり目を開けた。
まだ夢のなかにいるような顔で俺を見ている。
「あ、おかえり」
「こんなところで寝たら、風邪ひきますよ。先に寝ていてよかったのに」
「でも……浅野くん、「おかえり」って言ってもらいたいって」
「それで……待っていてくれたんですか?」
俺が適当に言ったことを真に受けて……本当に、この人は。
まずい。
抱きしめてしまいたくなるほど、彼女を愛しく思う気持ちがこみあげてくる。
そう、俺はずっとこの人に恋してきた。
配属された日、微笑みかけてくれた、あのときから。
仕事に慣れず戸惑う俺を、一番親身になって助けてくれたのは彼女だった。
美しい人なのにそれをまったく鼻にかけず、異性からも同性からも信頼されている彼女に、俺はどんどん惹かれていった。
伊川さんと付き合っていると知ったときはショックで眠れなかった。
それでも諦められなかった。
あの夜、橋の上で彼女を家に誘ったとき、誓って下心はなかった。
冷え切って震えている彼女を一刻も早く温かい場所に連れていってあげたい。
本当にそのことしか頭になかった。
とはいえ、こうして身近に接したら、想いは嫌でも募る。
ゲームで自分の気持ちをごまかすのも、そろそろ限界。すっかり生殺し状態だ。
手ひどい失恋を経験したばかりの彼女に身勝手に気持ちをぶつけたりしたら、さらに悩ませてしまうことになる。
そう思って、必死で自分を抑えている。でも……
「こんな無防備で可愛い寝姿なんて見せられたら、いつまで耐えられるか、自信ないよ」
心の中で、そうひとりごちた。
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