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第六章

本心を聞かせて 18

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「俺は絶対、植田さんを傷つけないから。植田さんが好きだって、何万回でも言うよ。不安なんて一瞬だって感じさせない」

 彼はずっと、本当に長い間、いつだって、こうして真っ直ぐに想いを伝えてくれていた。

 ようやく、あまりにも頑なだったわたしの心が理解した。

 彼の気持ちを疑う必要なんて、少しもないことを。

 
「島内さんの言う通りです。やきもち……妬きました、橋本さんに」
「植田さん……」

 わたしも玄関に降りた。
 そして、自分から彼の腕にそっと触れた。

「島内さんが橋本さんと付き合っていると考えたらつらくて、どうにかなりそうでした」

 その言葉を聞いて、彼の顔にスローモーションみたいにゆっくり笑みが広がっていった。

 今なら、はっきり言える。

 わたしがこの世で一番好きな笑顔。

「本当に?」

 頷くと同時に、彼の胸に抱きしめられていた。
 わたしの髪に口づけを落としながら、島内さんは囁いた。

「ああ。もうずっと、本当に長い間こうしたかった。奈月に触れたくてたまらなかった」
「島内……さん」
「奈月」

 彼は両手でそっとわたしの頬をつつんだ。

 壊れものを扱うように優しく。

 彼の、慈しみと欲望がないまぜになった眼差しを受け、わたしは眼を閉じた。
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