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第六章
本心を聞かせて 6
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「島内さん」
ビクッと身体を震わせて、島内さんは目を覚ました。
「着きましたよ」
「あ、俺、寝ちゃったんだ。ごめん、重かっただろ?」
「大丈夫です」
「すぐ起こしてくれてもよかったのに」
「気にしないでください。じゃあ、また明日」
「あ、ああ。明日ね。おやすみ」
タクシーのドアが閉まってから、ふーっと息をつく。
15分ほど同じ姿勢でいたから腕が痺れている。
わたしは無意識に、まだ彼の温もりの記憶が残っている右腕にそっと触れていた。
嫌じゃなかった、ぜんぜん。
それどころか、もう少し、あのままでもいいとさえ思っていた。
一緒の部署になって、島内さんと毎日過ごすようになって数週間。
彼の嫌なところがまったく思いつかない。
それどころか、感心することや素敵だと思うことばかりで。
それってやっぱり……好きになったってことなのか。
でも、そう告げたいという気持ちより、まだ不安がまさっていた。
とにかく、素敵すぎるのだ、島内さん。
だから、よけい心配になる。
彼を好きになる女性はわたしだけじゃないはず、だと。
ビクッと身体を震わせて、島内さんは目を覚ました。
「着きましたよ」
「あ、俺、寝ちゃったんだ。ごめん、重かっただろ?」
「大丈夫です」
「すぐ起こしてくれてもよかったのに」
「気にしないでください。じゃあ、また明日」
「あ、ああ。明日ね。おやすみ」
タクシーのドアが閉まってから、ふーっと息をつく。
15分ほど同じ姿勢でいたから腕が痺れている。
わたしは無意識に、まだ彼の温もりの記憶が残っている右腕にそっと触れていた。
嫌じゃなかった、ぜんぜん。
それどころか、もう少し、あのままでもいいとさえ思っていた。
一緒の部署になって、島内さんと毎日過ごすようになって数週間。
彼の嫌なところがまったく思いつかない。
それどころか、感心することや素敵だと思うことばかりで。
それってやっぱり……好きになったってことなのか。
でも、そう告げたいという気持ちより、まだ不安がまさっていた。
とにかく、素敵すぎるのだ、島内さん。
だから、よけい心配になる。
彼を好きになる女性はわたしだけじゃないはず、だと。
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