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第六章
本心を聞かせて 3
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そんなふうに言ってもらえたことは、とても嬉しかった。
みなさんの足を引っ張っているのではないかと引け目しか感じていなかったから。
心が温かく満たされた。
さらに2杯、3杯とグラスを重ねるうちに、室長と島内さんは、いつもより大きな声で議論をはじめた。
島内さん、結構お酒に弱いんだ。
ちょっと呂律がまわってない。
これも意外なことのひとつ。
勝手に底なしだと思い込んでいた。
この1週間で、わたしのなかの島内さんはどんどんアップデートされていった。
結局わたし、彼のこと、なんにも知らないんだ。
そんなことを考えながら、ぼんやりふたりを眺めていたら、多田さんが小声で話しかけてきた。
「えっ?」
聞こえづらかったので、わたしは少し多田さんのほうに身体を寄せた。
「植田さんさあ、やっぱ島内と付き合ってるの?」
「えっ?」
「いや、仲いいから、君たち。島内もすぐ植田さんのこと、庇うし」
「違います。前に仕事で関わったことがあって知り合いではありますけれど」
「ずいぶんむきになるんだな。ますます怪しい気がするけど。じゃあ橋本さんのほうか」
「橋本さん?」
「あっちもなんか、怪しいからさ。まあ、俺としてはあのふたりがっくっついてくれたほうが、都合がいいけど」
そう言って、見つめてくる目が坐っている。
やっぱりだいぶ酔っていそう。
しつこく絡まれたら嫌だなと思ったところで、ちょうど室長が「.よし、そろそろお開きにするか」と声をあげた。
「俺、ちょっとトイレ」
そう言って、多田さんが席を外したので、ほっと息をついた。
みなさんの足を引っ張っているのではないかと引け目しか感じていなかったから。
心が温かく満たされた。
さらに2杯、3杯とグラスを重ねるうちに、室長と島内さんは、いつもより大きな声で議論をはじめた。
島内さん、結構お酒に弱いんだ。
ちょっと呂律がまわってない。
これも意外なことのひとつ。
勝手に底なしだと思い込んでいた。
この1週間で、わたしのなかの島内さんはどんどんアップデートされていった。
結局わたし、彼のこと、なんにも知らないんだ。
そんなことを考えながら、ぼんやりふたりを眺めていたら、多田さんが小声で話しかけてきた。
「えっ?」
聞こえづらかったので、わたしは少し多田さんのほうに身体を寄せた。
「植田さんさあ、やっぱ島内と付き合ってるの?」
「えっ?」
「いや、仲いいから、君たち。島内もすぐ植田さんのこと、庇うし」
「違います。前に仕事で関わったことがあって知り合いではありますけれど」
「ずいぶんむきになるんだな。ますます怪しい気がするけど。じゃあ橋本さんのほうか」
「橋本さん?」
「あっちもなんか、怪しいからさ。まあ、俺としてはあのふたりがっくっついてくれたほうが、都合がいいけど」
そう言って、見つめてくる目が坐っている。
やっぱりだいぶ酔っていそう。
しつこく絡まれたら嫌だなと思ったところで、ちょうど室長が「.よし、そろそろお開きにするか」と声をあげた。
「俺、ちょっとトイレ」
そう言って、多田さんが席を外したので、ほっと息をついた。
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