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第五章

急接近の夏 7

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「光栄だな。総務のマドンナと一緒に仕事することになって」

 彼はそう言って、手を伸ばして握手を求めてきた。

「えっ? マドンナって?」
「自分がどう呼ばれているか知らなかった? まあ、そこがマドンナのマドンナたる所以だろうけど」

 そんなあだ名、まったくの初耳だったので、わたしは曖昧な表情で受け流した。

 すると島内さんが口をはさんだ。

「何、挨拶にかこつけて口説いてるんですか」
「するか。お前じゃないんだから」
「俺は見境なく声をかけたりしませんよ。多田さんみたいに」

「こら。初日から何、ごちゃごちゃもめてるんだ? そろそろ打ち合わせを始めるぞ」
 室長がわたしたちに声をかけたとき、同時に最後のひとりが入室してきた。

「おお、わが社のイケメントップ3が集結してるじゃない。なかなか壮観ねえ」

 橋本郁美さんだ。
 そんなことを言っている彼女自身、とても美しい人だった。

 企画部でマーケティングを担当されていた。
 歳はたぶん30代前半。
 ロイヤルブルーのノースリーブのパンツスーツがとても素敵。ショートボブの髪型によく似合っている。

 前職は中堅コンサルティング会社で、うちの社長が直々に引き抜いた、とこれまた噂の人物だった。
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