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第二章
傷ついたきみを甘やかしたい 13
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でも、意外な形で、その幸運はやってきた。
入社してひと月ほど経ったころ、早々とロッカーの鍵を失くしてしまった。
主任に尋ねると、
「ったく、早すぎんじゃないのか、失くすの」
と小言を言われながら「総務に頼め」と教えられた。
すいませんと頭を掻きながら席に戻って、彼女が出ればいいと思いながら、内線をかけた。
すると……
受話器の向こうから、あの、澄んだ声が聞こえてきたのだ。
ラッキー!
俺は胸の内で叫んでた。
いやー、良かった。
鍵、失くして。
総務にも予備はないらしく、合い鍵を作るのに中1日かかるという。
「それまでにロッカーから出さなければならないものはありますか? マスターはあるので開けることはできますけれど」
「いえ、それは大丈夫です」
「では木曜日にはできてますから。午前でも大丈夫ですよ」
ああ、もっと聞いていたいんだけど、この声。
「あの、お名前……伺っといていいですか?」
「あ、失礼しました。総務部第1課の植田です」
「じゃあ、植田さんを尋ねて行きます」
「わたしが不在でもわかるようにしておくから大丈夫ですよ」
いや、不在のときになんて絶対行かない。
このチャンス、逃すわけにはいかない。
入社してひと月ほど経ったころ、早々とロッカーの鍵を失くしてしまった。
主任に尋ねると、
「ったく、早すぎんじゃないのか、失くすの」
と小言を言われながら「総務に頼め」と教えられた。
すいませんと頭を掻きながら席に戻って、彼女が出ればいいと思いながら、内線をかけた。
すると……
受話器の向こうから、あの、澄んだ声が聞こえてきたのだ。
ラッキー!
俺は胸の内で叫んでた。
いやー、良かった。
鍵、失くして。
総務にも予備はないらしく、合い鍵を作るのに中1日かかるという。
「それまでにロッカーから出さなければならないものはありますか? マスターはあるので開けることはできますけれど」
「いえ、それは大丈夫です」
「では木曜日にはできてますから。午前でも大丈夫ですよ」
ああ、もっと聞いていたいんだけど、この声。
「あの、お名前……伺っといていいですか?」
「あ、失礼しました。総務部第1課の植田です」
「じゃあ、植田さんを尋ねて行きます」
「わたしが不在でもわかるようにしておくから大丈夫ですよ」
いや、不在のときになんて絶対行かない。
このチャンス、逃すわけにはいかない。
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