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第二章
傷ついたきみを甘やかしたい 6
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島内さんはそう言って、隣に座るわたしの頭をそっと撫でた。
わたしはぼんやり彼を見つめた。
柔らかく触れる彼の手の温もりがただただ心地よかった。
髪に触れたまま、彼は柔らかな笑みを浮かべていた。
***
「そろそろ出る?」
わたしが頷くと、島内さんはウェイターを呼んだ。
椅子から立ち上がると、自分が思っていた以上に酔っていた。
店を出て「ごちそうさまでした」と頭を下げたとき、頭がくらっとして、よろめいた。
「大丈夫?」
「すみません。ちょっとめまいがして……」
「ほら、つかまって」
彼はわたしを支えながら、ゆっくりエレベーターホールに向かった。
エレベーターに乗ったのはわたしたちだけだった。
閉ボタンを押した直後、彼はわたしの左手を取り、少し持ち上げた。
「ここ、擦りむいてるよ。道で転んだときだな」
そう言って、上目遣いでわたしを見ながら、彼は囁いた。
「なあ、今夜、俺を睡眠薬代わりにしないか?」
「睡眠薬?」
「ぐっすり寝かせてあげるよ、俺が。つらいことなんてなかったと思えるぐらい、頭が真っ白になるまで甘やかして」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、握られていた手が強い力で引かれた。
わたしはバランスを崩し、彼の胸に引き込まれた。
すぐに彼の指がわたしの顎を掬い上げ、唇が降ってきた。
わたしはぼんやり彼を見つめた。
柔らかく触れる彼の手の温もりがただただ心地よかった。
髪に触れたまま、彼は柔らかな笑みを浮かべていた。
***
「そろそろ出る?」
わたしが頷くと、島内さんはウェイターを呼んだ。
椅子から立ち上がると、自分が思っていた以上に酔っていた。
店を出て「ごちそうさまでした」と頭を下げたとき、頭がくらっとして、よろめいた。
「大丈夫?」
「すみません。ちょっとめまいがして……」
「ほら、つかまって」
彼はわたしを支えながら、ゆっくりエレベーターホールに向かった。
エレベーターに乗ったのはわたしたちだけだった。
閉ボタンを押した直後、彼はわたしの左手を取り、少し持ち上げた。
「ここ、擦りむいてるよ。道で転んだときだな」
そう言って、上目遣いでわたしを見ながら、彼は囁いた。
「なあ、今夜、俺を睡眠薬代わりにしないか?」
「睡眠薬?」
「ぐっすり寝かせてあげるよ、俺が。つらいことなんてなかったと思えるぐらい、頭が真っ白になるまで甘やかして」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、握られていた手が強い力で引かれた。
わたしはバランスを崩し、彼の胸に引き込まれた。
すぐに彼の指がわたしの顎を掬い上げ、唇が降ってきた。
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