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第漆話 夜明ケ
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「……はぁ、……んんっ!」
「……ちゅ……おい、逃げるな」
叶夜に押し倒された後、覆い被されたまま何度も繰り返される接吻に、蘭は身体の奥底から込み上げる熱い何かから逃れようと身じろいだ。だが、それを一切許さない叶夜に抱き留められ、唇を貪られていた。
「んっ……!月影……待ってくれ」
「待つわけないだろ、んちゅ……俺がどれだけ今夜を待ち望んでいたかわからせてやる。……んっ」
「ん……はぁ……」
息苦しさから逃れようと蘭が口を開けると、間髪入れずに叶夜の分厚い舌がねじ込まれて来た。
「んんっ……!」
「ちゅ……、甘いな」
満足したように唇を離した叶夜の下では、目を潤わせながら睨みつける蘭の姿があった。
「そんな顔されると、余計にそそられるなぁ」
「いきなり……がっつくなんて」
「……蘭、お前……可愛いな」
「はぁっ?!」
「もっと見せてくれ。……お前の乱れる姿を」
叶夜はそう言うと、着物の帯を器用に解き始めた。抵抗することを諦めた蘭は、叶夜にされるがまま――。気づけば月夜に照らされる中、褥の上で蘭の身体は露わとなり、その姿を叶夜はまじまじと見ていた。
「……あんまり見るな」
上から凝視されるのに耐えかねた蘭は、恥ずかしさのあまり腕で身体を隠そうとした。
「隠すな」
そう言いながら叶夜は両手でやんわりと押さえ込み、まじまじと蘭の身体を見つめていた。熱を帯びた視線に耐えかねた蘭は、頬を赤らめながら顔を逸らした。
「……これ」
叶夜は、蘭の首元に着けられた首輪をなぞった。
「Ωの首輪……。陽斗に着けられたのか」
「そう……だよ」
「外し方は聞いてないのか?」
「……うん」
「そうか。……これが着いている、ということは」
叶夜は何かを探すように蘭の身体に触れた。そして――。
「……あった」
蘭の腰あたりに触れ、じっと見つめながら叶夜は言った。
「ちょ……くすぐったいんだけど。そんな所に何があんのさ」
「黒薔薇」
「は?」
「……噂通り、だな」
叶夜に優しくちゅ、と腰に口づけされた途端、蘭の身体はビクッと反応した。
「月影っ……!」
蘭は逃れようと必死に抵抗したが、蘭よりも体格の良い叶夜に敵うはずもなく、気付いたときにはうつ伏せの姿勢となっていた。
「蘭は陽斗からどこまで聞いているんだ?」
背中を手で撫でながら尋ねる叶夜の声色は、どこか切なそうな雰囲気がしていた。叶夜の表情を見ようと蘭が顔を振り向けると、見計らっていたかのように叶夜は蘭の唇を啄んだ。
「ちゅっ」
「……んっ、っておい!」
「くははははは。そう怒るなって。お前が怒ってても、俺には可愛くしか見えねぇぞ」
「……くっ」
宥めるように、叶夜は蘭の頭をぽんぽんと撫でた。
「……で、何があるって」
「ん?……あぁ、俺がさっき口付けた場所に、黒い薔薇があるんだ」
「は?……なんでそんな所に」
「おそらくだが、お前の首輪と関係している」
「……俺は何にも知らないのに、なんで……月影……様が知ってるんですか」
冷静さを取り戻した蘭は、これまで叶夜に対する態度を改めようと試みた。
「くくく……。俺と二人きりの時は無理しなくてもいいさ。お前らしく振舞ってくれ」
「けど……」
「お?さっきはあんなに威勢が良かったのに急にどうしたんだ」
「んぐぐ……。わかったよ!俺らしく振舞えばいいんでしょ!」
――なんなんだよコイツ……。調子狂うんだけど……。
「なんなら、下の名前で呼んでくれてもいいぞ」
「それはない」
「……即答かよ、まぁ今すぐじゃなくてもいつか呼んでくれ」
「……考えとく。で?この首輪と、腰の黒い薔薇だっけ?なんの関係があんのさ」
「詳しくはわかんねぇんだけど、噂で聞いた事があってな」
蘭に覆い被さっていた叶夜は頬杖をつきながら隣に寝転がった。
「俺の先々代から聞いた話だ。Ωの首輪を着けた者には黒薔薇が身体に現れる、ってな。俺も話として聞いていただけだから真相はわかんなかった。けど、この話は真だった、ってことだけは今わかった」
「ふぅん。……黒薔薇か……。そう言えば菊兄の腰にもあった。呪い……とか言ってたような」
「……呪い、ねぇ」
叶夜は蘭の腰を抱き寄せ、互いの鼻と鼻がくっつきそうなくらい至近距離で見つめていた。
「……まじまじと見ないで欲しいんだけど」
「お前のその瞳……綺麗だよな」
「なっ!」
「……俺の、俺だけのものにしていいか?」
「何言ってんだよ。……今だけはお前のもんだろ」
蘭は言ってる途中から恥ずかしさのあまり頬を赤らめ、小声になっていた。そんな様子を目の当たりにした叶夜は、一瞬目を見開き驚いた表情を見せたが、屈託のない笑顔を見せた。
「そう言えばそうだったな。……今からお前の初めてを俺が貰う、いいな」
「うん」
蘭が頷くと同時に、叶夜は蘭の上に覆い被さり深い口付けをした。
「んっ……んちゅ」
「……ぁ、……んん」
手慣れた手つきで叶夜は蘭の身体を弄り、蘭の一番敏感な所にたどり着いた。
「はっ……そこはっ!……んっ!」
「俺との口付けでこんなにして……。ほんと可愛いな」
「ぁっ……」
今まで感じたこともない感覚に蘭は戸惑っていた。
「声、抑えなくていい。ありのままのお前を見せてくれ」
耳元で囁かれる声に、蘭の身体は思わずビクりと反応した。
「ん……ぁあっ」
その後も、叶夜は蘭に快楽を与え続けた――。
「蘭っ……、蘭……はっ」
名前を呼びながら時折強引に求める叶夜だったが、蘭はそんな彼を受け入れた。
初めて身体を重ねた二人が寝に就いたのは、明け方のことだった――。
朝日が差し込む中、先に目を覚ましたのは叶夜だった。
腕に重みを感じ隣を見ると、そこには気持ちよさそうに寝息を立てて眠る蘭の姿があった。
「……蘭」
名を呼んだ途端少しだけ身じろいだ蘭は、無意識に叶夜の方へと身体を寄せて来た。
「……っ!無意識に煽ってくるなんて……、こんなの……生殺しじゃねぇか。……はぁ、俺以外の奴に触れて欲しくねぇな」
叶夜は蘭の額にそっと口付け、もうひと眠りしようと再び目を閉じたのだった。
「……ちゅ……おい、逃げるな」
叶夜に押し倒された後、覆い被されたまま何度も繰り返される接吻に、蘭は身体の奥底から込み上げる熱い何かから逃れようと身じろいだ。だが、それを一切許さない叶夜に抱き留められ、唇を貪られていた。
「んっ……!月影……待ってくれ」
「待つわけないだろ、んちゅ……俺がどれだけ今夜を待ち望んでいたかわからせてやる。……んっ」
「ん……はぁ……」
息苦しさから逃れようと蘭が口を開けると、間髪入れずに叶夜の分厚い舌がねじ込まれて来た。
「んんっ……!」
「ちゅ……、甘いな」
満足したように唇を離した叶夜の下では、目を潤わせながら睨みつける蘭の姿があった。
「そんな顔されると、余計にそそられるなぁ」
「いきなり……がっつくなんて」
「……蘭、お前……可愛いな」
「はぁっ?!」
「もっと見せてくれ。……お前の乱れる姿を」
叶夜はそう言うと、着物の帯を器用に解き始めた。抵抗することを諦めた蘭は、叶夜にされるがまま――。気づけば月夜に照らされる中、褥の上で蘭の身体は露わとなり、その姿を叶夜はまじまじと見ていた。
「……あんまり見るな」
上から凝視されるのに耐えかねた蘭は、恥ずかしさのあまり腕で身体を隠そうとした。
「隠すな」
そう言いながら叶夜は両手でやんわりと押さえ込み、まじまじと蘭の身体を見つめていた。熱を帯びた視線に耐えかねた蘭は、頬を赤らめながら顔を逸らした。
「……これ」
叶夜は、蘭の首元に着けられた首輪をなぞった。
「Ωの首輪……。陽斗に着けられたのか」
「そう……だよ」
「外し方は聞いてないのか?」
「……うん」
「そうか。……これが着いている、ということは」
叶夜は何かを探すように蘭の身体に触れた。そして――。
「……あった」
蘭の腰あたりに触れ、じっと見つめながら叶夜は言った。
「ちょ……くすぐったいんだけど。そんな所に何があんのさ」
「黒薔薇」
「は?」
「……噂通り、だな」
叶夜に優しくちゅ、と腰に口づけされた途端、蘭の身体はビクッと反応した。
「月影っ……!」
蘭は逃れようと必死に抵抗したが、蘭よりも体格の良い叶夜に敵うはずもなく、気付いたときにはうつ伏せの姿勢となっていた。
「蘭は陽斗からどこまで聞いているんだ?」
背中を手で撫でながら尋ねる叶夜の声色は、どこか切なそうな雰囲気がしていた。叶夜の表情を見ようと蘭が顔を振り向けると、見計らっていたかのように叶夜は蘭の唇を啄んだ。
「ちゅっ」
「……んっ、っておい!」
「くははははは。そう怒るなって。お前が怒ってても、俺には可愛くしか見えねぇぞ」
「……くっ」
宥めるように、叶夜は蘭の頭をぽんぽんと撫でた。
「……で、何があるって」
「ん?……あぁ、俺がさっき口付けた場所に、黒い薔薇があるんだ」
「は?……なんでそんな所に」
「おそらくだが、お前の首輪と関係している」
「……俺は何にも知らないのに、なんで……月影……様が知ってるんですか」
冷静さを取り戻した蘭は、これまで叶夜に対する態度を改めようと試みた。
「くくく……。俺と二人きりの時は無理しなくてもいいさ。お前らしく振舞ってくれ」
「けど……」
「お?さっきはあんなに威勢が良かったのに急にどうしたんだ」
「んぐぐ……。わかったよ!俺らしく振舞えばいいんでしょ!」
――なんなんだよコイツ……。調子狂うんだけど……。
「なんなら、下の名前で呼んでくれてもいいぞ」
「それはない」
「……即答かよ、まぁ今すぐじゃなくてもいつか呼んでくれ」
「……考えとく。で?この首輪と、腰の黒い薔薇だっけ?なんの関係があんのさ」
「詳しくはわかんねぇんだけど、噂で聞いた事があってな」
蘭に覆い被さっていた叶夜は頬杖をつきながら隣に寝転がった。
「俺の先々代から聞いた話だ。Ωの首輪を着けた者には黒薔薇が身体に現れる、ってな。俺も話として聞いていただけだから真相はわかんなかった。けど、この話は真だった、ってことだけは今わかった」
「ふぅん。……黒薔薇か……。そう言えば菊兄の腰にもあった。呪い……とか言ってたような」
「……呪い、ねぇ」
叶夜は蘭の腰を抱き寄せ、互いの鼻と鼻がくっつきそうなくらい至近距離で見つめていた。
「……まじまじと見ないで欲しいんだけど」
「お前のその瞳……綺麗だよな」
「なっ!」
「……俺の、俺だけのものにしていいか?」
「何言ってんだよ。……今だけはお前のもんだろ」
蘭は言ってる途中から恥ずかしさのあまり頬を赤らめ、小声になっていた。そんな様子を目の当たりにした叶夜は、一瞬目を見開き驚いた表情を見せたが、屈託のない笑顔を見せた。
「そう言えばそうだったな。……今からお前の初めてを俺が貰う、いいな」
「うん」
蘭が頷くと同時に、叶夜は蘭の上に覆い被さり深い口付けをした。
「んっ……んちゅ」
「……ぁ、……んん」
手慣れた手つきで叶夜は蘭の身体を弄り、蘭の一番敏感な所にたどり着いた。
「はっ……そこはっ!……んっ!」
「俺との口付けでこんなにして……。ほんと可愛いな」
「ぁっ……」
今まで感じたこともない感覚に蘭は戸惑っていた。
「声、抑えなくていい。ありのままのお前を見せてくれ」
耳元で囁かれる声に、蘭の身体は思わずビクりと反応した。
「ん……ぁあっ」
その後も、叶夜は蘭に快楽を与え続けた――。
「蘭っ……、蘭……はっ」
名前を呼びながら時折強引に求める叶夜だったが、蘭はそんな彼を受け入れた。
初めて身体を重ねた二人が寝に就いたのは、明け方のことだった――。
朝日が差し込む中、先に目を覚ましたのは叶夜だった。
腕に重みを感じ隣を見ると、そこには気持ちよさそうに寝息を立てて眠る蘭の姿があった。
「……蘭」
名を呼んだ途端少しだけ身じろいだ蘭は、無意識に叶夜の方へと身体を寄せて来た。
「……っ!無意識に煽ってくるなんて……、こんなの……生殺しじゃねぇか。……はぁ、俺以外の奴に触れて欲しくねぇな」
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