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3章 決闘
決闘
しおりを挟む二回戦、俺の覗き見で予想は同じ。
当然、交代でオーナーになったクライヴが勝った。
これで一対一の展開。
三回戦、オーナーになったジャンヌはオウムを選ぶと椅子に座り、紙と筆を持って考え込む仕草をした。当然、クライヴの予想を読んだ俺の指示を待っているのだが。
「この勝負に勝ったお前が、俺にどんな命令をするのか分からないが……」
なかなか予想を頭に浮かべないクライヴが、低音の利いた声でジャンヌに話しかける。
「俺が勝った場合、お前にはこう命令する。俺の経営する売春宿で働け、と」
小さく鼻で笑うジャンヌ。それにおかまいなくクライヴがこう続けた。
「そこは嘘などない、本能を曝け出した欲望の世界だ。お前の言う、強い流れとかは何の意味も持たない。俺は、その泰然とした姿から、欲望に溺れる姿に変わるお前を見たいのだ」
クライヴを見るジャンヌの目が険しくなる。
俺は戸惑った、この顔つきはいつものジャンヌらしくない。明らかに怯えを隠す為に威嚇する顔だ。
「おい! 奴の心理攻撃だ。引っ掛かるんじゃねーぞ!」
俺の声に、はっ! とした表情になり、鼻から息を抜くジャンヌ。
そして自分のこめかみを、指でトントンと叩く。
(あやうくこの男のペースに乗せられるところだった。すまないタクミ)
「まあしゃーねえよ、コイツは百戦錬磨の裏街道人間なんだからよ。俺だって生身でこんなターミネーターみたいなゴッツイ筋肉ダルマと向き合ったらチビってしまうぜ、多分」
(ふふふ、成程、前にお前から聞いたターミネ-ターという不死身の暗殺者とはあの男のような姿をしているのか)
「マジそっくりだぜアイツ。メガネをサングラスに変えて皮ジャン着させたら完璧って感じ」
(また訳のわからない言葉を使って)
クックックと一人笑いするジャンヌ。
そしていつも通りの、気怠い目つき、ニンマリとした口元に戻った。
「ふふ、クライヴ殿、貴様の経営しているその買春宿、美味しいワインを部屋に届けてくれるのだろうな? 私はワインにはうるさくてな、まずいワインだったら承知しないぞ」
じっとジャンヌを見詰めるクライヴ。俺はその頭に指を突っ込んでみた。
指先から流れ込む思考は揺らいでいる。大きく見え隠れするのは『こいつは気がふれているのか?』といった思考だった。
突如思考が切り替わったクライヴが紙に筆を走らせる。
「おい、奴の予想は〝右〟だ」
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