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突沸②
しおりを挟む神崎「捕まえたっ!ひなちゃんどうしたの、何が嫌になっちゃった?先生たちのことが嫌い??でも、危ないから物は投げちゃダメね。ひなちゃんが怪我しちゃうから。よし、とりあえずベッドにごろんしようか!」
そう言って、暴れるわたしをひょいっと抱き上げる神崎先生。
神崎先生って、こんなにがっしりしてたんだ……。
黒柱の中じゃ末っ子キャラで、ちょっと子どもっぽい印象すらあったのに。
宇髄先生や工藤先生を見慣れていただけで、神崎先生も普通に背が高いし、筋肉しっかりだし、御見逸れした。
……って、何を考えているのだと、ハッとしたのも束の間。
ベッドに下ろされたわたしは、先生たち総出で押さえつけられる。
ひな「嫌っ……!!離して!!嫌だって言ってるの!!」
五条「うるさい!暴れるなっ!お前が悪いんだろ!こんなことして!!」
藤堂「ごめんね。ひなちゃんの腕血が出ちゃってるから、嫌だけど治させてね」
神崎「お利口さんしてたらすぐ終わるよ~」
怒鳴る五条先生は上半身を。
藤堂先生は針を抜いた左腕を。
神崎先生は左の足元を。
そして、宇髄先生は右半身を1人で押さえ、工藤先生は何やら右腕を触っている。
やだ……注射される……っ!
そう思ったわたしは、
ひな「嫌だぁ!!」
喉が切れそうなくらいにまた叫ぶ。
工藤「ひなちゃん大丈夫だぞー!ちょっと冷たいだけだからなー!」
工藤先生が冷たいって言うのは、消毒のアルコール。
工藤先生の注射はいつも、消毒と穿刺が流れるようで、いつ針を入れられたのかわからない。
でも、わたしはその技術をもう知ってるから。
消毒が冷たいのに気を取らせようとしてるけど、そんなのに引っかかるとかないんだから。
ひな「痛いの嫌だぁ!!」
宇髄「ひなちゃん、痛くないから大丈夫だぞ。工藤先生、いつも痛いことしないだろ?」
ひな「痛いの!!痛く無くても全部やなのっ!!!」
また、誰も離してくれない……。
こんなに叫んでるのに、わたしの声なんて有って無いも同然なんだ。
どうしてこんな扱いしか受けないんだろう。
わたし、前世で何したって言うの……。
もう、疲れた。
考えても仕方のないことは考えないでおこう。
ただ、先生たちがその気ならこっちだって……
ひな「離してって言ってんのっ!!バカぁっ!!!」
力を振り絞り、手足をジタバタ、全力で抵抗してみせる。
すると、
神崎「い"っ!!?!……ぁ"ゔっ……、ぐぬ……」
藤堂「か、神崎先生大丈夫!?」
神崎「だ、大丈夫じゃナイ……」
工藤先生に穿刺されたと思われる拍子で、一際暴れたわたしの足が、神崎先生のどこかに直撃してしまったよう。
……が、わたしはそんなことに気づいていない。
五条「ひなぁあっ!!!!!お前はいい加減にせんかぁあっ!!!!!」
何億ボルトもの凄まじい雷をただいきなり落とされた。
なんでよ……なんで……
先生たちが酷いことして、なんでわたしが怒られるの……?
雷に打たれたわたしは、一瞬にして全てのブレーカーが落ちた。
力の抜けたわたしに、先生たちの手も僅かに緩まる。
ひな「こっちの台詞だよ……もういい加減にして……。なんで……みんなでわたしをいじめるの…………?」
五条「はぁ??」
怒り狂う五条先生の相槌は、わたしの耳に届かない。
ひな「痛くないのに、お腹の治療したり。心臓も、元気なのに手術とか。毎日吸入したり、注射したり、ご飯食べさせたり。嫌って言ってるのに……治りもしないのに……どうしてこんな酷いことばっかりするの……」
五条「あぁ??」
藤堂「悠仁」
ひな「どこも悪くないのに……そんなにわたしを傷つけるのが楽しい……?」
五条「ひな、お前何言ってんだ……?」
部屋の空気はすでに凍りついている。
だけど、わたしの口は止まらない。
ひな「それとも、わたしのことが嫌いだから……?ずっと病院にいて鬱陶しい?アメリカ行く直前に怪我して、留学行けなくなって、五条先生はわたしのせいで人生狂ったもんね。わたしがいなければ、こんなことになってない。今ごろアメリカにいて、人生思い通りだったでしょ?わたしは邪魔なんでしょ……」
五条「あのな……」
藤堂「そんなことないよ。先生たちはみんな、ひなちゃんのこと考え」
ひな「わたしのこと考えてるならもうやめてよ……っ。考えてるなんて嘘ばっかり……っ。先生たちの思い通りにならないと怒って……わたしのこと力尽くで押さえたりして……。先生たちのやってること…………あの人と同じじゃんっ!!!!わたしは先生たちの奴隷なのっ!?!?」
五条「……ひな、お前それ本気で言ってんのか……?」
ひな「……本気だよ……本気で思ってるよ……」
五条「…………そうか。なら、もう好きにしろ。治療も全部やめてやるから、自分の思うようにしたらいい。俺たちが何をすることもないから、病院も勝手に出て行け。それと……
俺は、ひなの人生にもう必要ないな」
***
そう言われた後のことは覚えてない。
頭の中が真っ白に、目の前は真っ暗に。
とんでもないことを言ってしまったと、そう思ったのが記憶の最後。
ひな「ハァ、ハァ……ハァ、ハァ……」
院長「ひなちゃん、少し苦しいからマスクつけるね」
あれから3日。
黒柱の先生たちは、誰ひとりわたしのところへ来なくなった。
代わりに、蒼先生、豪先生、りさ先生、それから祥子さんが来てくれて、時々蓮先生も来てくれる。
豪「ひなちゃんゆっくり呼吸してな。胸ごめんね」
ひな「ハァ、ハァ…………」
……ポタッ……ポタッ……
豪先生が聴診する間、粒となって落ちる涙を蒼先生が拭いてくれる。
上がった熱が下がらない。
目が覚めると、自分でもやばいと感じるほどの熱になっていて、いろんな薬を毎日投与してもらっているけど、一向に落ち着く気配はなく。
呼吸が苦しくなったり、喘息の発作が出たり。
豪先生がまめに心音を聴いて、心電図もチェックするから、正直、不安で怖くて仕方ない。
どうして、こんなことになっちゃったかな……。
どうして、あんなこと言っちゃったかな……。
これまでの人生、わたしにとって手は凶器だった。
でも、ここにいる人たちの手は違う。
ノワールへ来て間もない頃、眠れないわたしを五条先生が初めて抱きしめてくれたあの夜。
五条先生の手が大きくて優しくて……神様の手かと思った。
まこちゃんの手も、藤堂先生の手も、神崎先生の手も。宇髄先生の手も、工藤先生の手も、祥子さんの手も。りさ先生、蓮先生、蒼先生、豪先生、夏樹に傑、そして、お父さんにお母さん……。
みんなの手はいつだってわたしの傷を癒やし、わたしのことを守ってくれた。
あの人と同じだなんて、先生たちに言ったのは本心じゃない。
ああいう時に本音が出ると言われれば、言い訳する術は思いつかないけれど、少なくとも今はそんなこと1ミリも思ってない。
ひな「ハァ、ハァ……ゴメ……ナサィ……ケホッ……、ゴメ……」
院長「ひなちゃーん?マスクまだだよ。落ち着くまでこのまましててね」
外そうとしたマスクを蒼先生につけ直される。
わたし、みんなに謝らなくちゃいけないのに……。
……ポタッ……ポタッ……、ポタポタッ……
ひな「ハァハァ……ケホッ、ハァ……ハァ……」
院長「ひなちゃん、今は何も考えなくて良いんだよ。考え事しないで、眠ることだけ考えようね。たくさん眠ってしっかり休めば、必ず良くなるからね」
言いながら、蒼先生は止まらない涙をまた拭ってくれる。
聴診を終えた豪先生は、蒼先生と話す声は聞こえるけど、何をしているんだろう。
ぽんぽん……って、頭を撫でてくれたような気がするんだけど……。
気づけば、わたしは強い眠気に襲われて、また五条先生に会えないまま深い眠りに落ちていった。
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