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宇髄先生の治療①
しおりを挟む*ひなのside
——翌日
「ひなちゃん、起きて」
ん……
「おーい、ひなちゃーん」
んん……、んっ?
あれ、この声……
ひな「宇髄先生……?」
今日はずーっと寝てたい気分。
お昼も過ぎ、誰にも邪魔されず気持ちよく寝てたのに、目を開けるとなぜか宇髄先生がいた。
なんで宇髄先生来たんだろう。
藤堂先生、朝なんか言ってたっけ??
って、今朝の診察はほとんど寝ながらで覚えてない。
そういえば、さっきお昼ごはんの時、後で宇髄先生が来るとかなんとかって、祥子さんが言ってた気もするけど……
それも半分寝てて覚えてないな。
そもそも、お昼食べたんだっけ?食べなかったっけ?
と、寝ぼけた頭で寝ぼけたことを言ってると、
宇髄「ごめんな、ひなちゃん。しばらく生理来てないから、ちょっとお腹触らせて」
と、宇髄先生に布団をめくられた。
生理……
言われてみれば……
生理が止まっているということに、言われて初めて気がついた。
事故があってから、確かに一度も来ていない。
生理って……
ちゃんと来なかったら……
どう……なるん……だっ……け……?
もう、嫌な予感しかない。
宇髄「ここどう?痛い?」
気づけば、宇髄先生がパジャマに手を入れて下腹部を押している。
ちょっと待って、そんなすぐ触らないで……
もし痛かったら……また溜まってたらどうすんの……
寝ぼけた頭が冴えてきて、"やめて、触らないで"って、宇髄先生の手を退けようとした。
だけど、
ひな「ゔっ……」
手を伸ばした瞬間、押されたところに痛みが走り、宇髄先生の手首をガシッと掴んでしまう。
宇髄「痛いか?」
ひな「……っ、フリフリフリフリ……!!」
反射的に首を振るけど、血の気が引いて頭が真っ白。
嘘……気のせいだよね……?
今のは、ただ急に触られたから……
宇髄「ひなちゃん、もう一回押すぞ?」
嫌……待って、そこ押さな……
ひな「ゔっ……」
宇髄「ここ、痛むんだな?」
ひな「……」
わたしの目から、スーッと涙がこぼれ落ちる。
なんで……なんでわたしお腹痛いの?
生理遅れてるの、ちょっと遅れてるだけだよ。
事故のせいだもん仕方ないじゃん。
押されなかったら痛くもなんともない。
張ったり苦しかったりもしない。
なのになんで?
なんで宇髄先生は突然来て、なんでお腹診たりなんか……
宇髄「ひなちゃん、今から検査しに行……」
ひな「嫌!!」
涙を拭ってくれようとした宇髄先生の手を払う。
宇髄「嫌だな。でも、押したらお腹痛かったよな?自覚症状がなかったんなら、そんなに悪くはないはずだから。早いうち処置しとこう」
ひな「だから嫌だってば!!」
わたしは布団を被り、宇髄先生に背を向けた。
宇髄「ひなちゃん……」
困ったようにため息をつく宇髄先生。
椅子に腰掛ける音がしたから、じゃあ今日はやめとこうなんて、逃がしてはもらえなさそう。
でも、いきなりお腹悪くなってるなんて、そんなの知ったこっちゃないんだから……
ひな「検査なんて行きたくない。あの椅子嫌い。グスッ」
くぐもった声でそう言うと、
宇髄「内診台に乗るのが嫌なら、ここで検査してもいいぞ。必要な機械さえ持って来れば、検査から治療まで全部してやれるから。ただ、あんまりそうはしたくないけどな」
と。
ひな「検査も治療も、何もしたくないっ……」
今度はそう言い返すと、
コンコンコン——
誰かが部屋に入ってきた。
祥子「ひなちゃーん。って、あれ?達弥もう来てたの?」
えっ?祥子さん……?
誰かと言っても、どうせ藤堂先生だろうと思ってたら、部屋に来たのは祥子さんだった。
宇髄「あぁ。前の仕事が早く終わって。藤堂には連絡入れたけど」
祥子「藤堂先生、午後一で救急呼ばれたのよ。スマホ見てないかも」
宇髄「それで返事なかったのか」
祥子「そうね」
テンポの良い2人の会話。
このまま、夫婦で仲良く話しといてくれたらと思ったけど、
祥子「ひなちゃん寝てる?」
宇髄「いいや。寝てはないんだけど……祥子は?ラウンドか?」
祥子「うん。検温と血圧測りにね」
宇髄「そうか。ひなちゃーん?祥子がお熱測らせてって」
と、声をかけられてしまう。
どうしよう、返事したくないな……。
検査に連れてかれるのは絶対に嫌。
でも、祥子さんはわたしの熱測らないとダメなんだよね。そのために来たんだよね。
なら、とりあえず祥子さんの言うことだけ……。
わたしは布団をギュッと掴み、そーっと寝返りを打って顔を出した。
祥子「あら、ひなちゃんどうしたの」
涙は拭って顔を出したけど、泣いてたことはバレてしまう。
祥子「しんどい?何かあった?」
そう言って、わたしの脇にサッと体温計を挟む祥子さん。
その隙で、宇髄先生と目が合い逸らしたことを、祥子さんは見逃さない。
祥子「達弥に嫌なこと言われたのね。それとも嫌なことされた?こんな可愛い子泣かすなんて、宇髄先生ったらひどいわね~。最低だわ」
なっ……!?
さ、最低って……。
嫌なこと言われたのも、されたのも、その通りと言えば……その通り?だけど、宇髄先生は悪いわけじゃない。
だから、わたしのために冗談で言ってるとわかっていても、宇髄先生が可哀想というか、ちょっと申し訳ない気持ちになって、
ひな「宇髄先生は最低じゃないです……なんでもないので、大丈夫です……」
宇髄先生にはなるべく聞こえないよう、小声でボソッとつぶやくと、
祥子「女の子のなんでもないと大丈夫は、99パーセント嘘なのよ。仮に嘘じゃなくても、涙が出ちゃう何かがあったでしょう?我慢は良くないよ、ひなちゃん」
って、優しく頭を撫でてくれて、目からまた涙がスーッと。
祥子「ほら。やっぱり、大丈夫ではないと思うな」
そう言って、涙を拭ってくれる祥子さん。
これ以上、祥子さんに心配はかけたくない。
でもだからこそ、検査に行くとも行きたくないとも言えなくて。
とりあえず、祥子さんの綺麗な手をわたしの涙で汚すのが申し訳なく、顔をそらして自分の手を濡らした。
すると、
宇髄「検査が怖いんだよな。心の準備ができないな」
祥子さんではなく、宇髄先生に頭をぽんぽんっとされ、不意打ちで来た宇髄先生の優しさに、わたしは気が抜けてしまい、
ひな「検査も治療も全部やだ……お腹悪くなってるなんて知らない。嫌なの……グスン、もうやだっ……!! グスン」
声を上げて泣きじゃくった。
***
——20分後
祥子「私もついて行こうか?」
宇髄「祥子は内科あるだろ」
祥子「大丈夫よ。VIPの対応……というより、ひなちゃんだもの。師長も二つ返事でOKするわ」
涙が引いて、落ち着いて、
それじゃあ、検査に行きますか。
という空気の中、相変わらず渋るわたしに祥子さんが付き添いを提案する。
宇髄「師長が良しとしたって、仕事は溜まるだろ。祥子の代わりできるやついるのか?」
祥子「もう。だから大丈夫だってば」
宇髄「本当かぁ?まぁ、祥子がそう言うんなら……ひなちゃん。祥子も来てくれるって言ってるけど、どうする?ついて来てもらうか?」
今の会話を聞かされて、お願いしますと言えるわけがない。
いつも忙しいのに来てくれて、今だって、3分で終わるはずだったのを30分も引き留めてしまっている。
もう本当に、祥子さんに迷惑ばっかりかけられない。
ひな「……行く」
宇髄「ん?」
ひな「ひとりで……宇髄先生と処置室行きます……」
祥子「ひなちゃん、大丈夫?」
大丈夫かと聞かれたら大丈夫じゃないけども、それは、祥子さんがいるいない関係ない。
ひな「コクッ……」
と頷くと、
宇髄「えらいな、お利口さん」
宇髄先生はわたしの頭を撫で、
宇髄「祥子。藤堂にひなちゃん処置室連れて行くって、伝えといて」
祥子「了解」
わたしは宇髄先生と婦人科の処置室へ。
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