167 / 233
帰るまでが遠足②
しおりを挟む*五条side
——数分後
藤堂「ひなちゃーん、病院着いたよー!」
傑の車が到着し、後部座席のドアを開けると、お尻とタオルに血を滲ませて横たわるひなが。
夏樹「先生、ひなのさっき発作起こして、激しく咳き込んで急に意識失くした……」
藤堂「発作……?」
藤堂先生がひなを抱え出し、用意していたストレッチャーに乗せると、
ん……?
これって……
五条「おい、ちょっと待てっ!!」
バンバンバンッ——!
駐車場へ行こうと動きかけた車のボディを叩いて引き止め、俺は勢いよく助手席のドアを開けた。
五条「おい!お前らひな何食った!?ひなに何か食わせたか!?」
ひなの首元には発疹が出てる。
アナフィラキシーを起こしてることはすぐにわかったが、
宇髄「何に反応したんだ……?」
というのがわからない。
藤堂「ひなちゃん呼吸弱いです……急ぎましょう!」
五条「こら、聞いてんのか!!夏樹、お前降りて一緒に来い!!」
突然俺に怒鳴られて、思考が停止したように固まる2人。
先生たちが急いでひなを連れて行く後ろで、俺は夏樹を助手席から引っ張り出して、一緒に中へ連れて行った。
五条「ここ来るまでにひな何か食っただろ、ひなが食べたもの全部言え!」
宇髄先生と藤堂先生にひなを任せ、初療室の前で夏樹に問いただす。
夏樹「え、えっと……昼はみんなで蕎麦食べて、車の中でお菓子食った」
五条「その蕎麦、普通の蕎麦か?蕎麦つゆはどんなやつだ?」
夏樹「十割蕎麦って書いてて、普通の蕎麦つゆだったけど」
五条「お菓子は?どんな菓子食った?」
夏樹「えっと……っ、ひなのはグミとたまごボーロばっかり食べて、俺のえびせんと傑からチョコももらって食べてた」
五条「……そのチョコなんか入ってなかったか?」
夏樹「ア、アーモンドチョコだった」
五条「アーモンド?」
と話してるところに、車を駐めた傑も合流。
五条「アーモンドだけだな?ピーナッツ入ってなかったな?」
夏樹「うん、入ってないよ。な、傑?」
七海「え?」
夏樹「ひなのにあげたチョコって、ピーナッツなんか入ってないよな?」
七海「入ってないよ!ひなの落花生はアレルギーでしょ?それは前から聞いてたから、食べるものは全部気をつけてた。落花生が入ったものはひなの一切食べてない」
ひなの食物アレルギーは落花生だけ。
それも幸い程度は軽い方で、仮に製造ラインで落花生を含んでいたとしても、落花生そのものを食べなければこんな症状にならないはず。
五条「なら、他に何か触ったとかは?飲み物は何飲んでた?アナフィラキシーなんて何もなしに起こるはずないぞ……」
と言うと、
夏樹「飲み物もお茶とりんごジュースだけだった。水なくてお茶で薬飲んだけど、それは別に大丈夫だろ?」
ん?
お茶で、薬……?
五条「待て、ひな何か薬飲んだのか?」
ここのところずっと調子がいいひなは、普段は薬を飲んでない。
何かあった時のためにいくつか薬を持っておくよう言ってあったが、生理痛の鎮痛薬は持ってないって話だったし、旅行の間に薬を飲んだなんて聞いてない。
夏樹「うん、飲んだ。ひなの生理の薬持って来なかったって言ったじゃん?それで、傑が鎮痛薬持ってたからさ。ひなのに飲む?って聞いたら、うんって」
……っ!?
まさか……
五条「それってどの鎮痛薬だ……?」
七海「どのって、ドラッグストアに売ってるロキソ……」
五条「んぁ!!?」
ロキソプロフェン……
ひながショックを起こしたのはそのせいだ。
ひなの身体はロキソプロフェンが使えない。
喘息の発作を誘発してしまうから、解熱や鎮痛にはアセトアミノフェンを量を調節した上で投与しなければいけない。
五条「勝手に市販薬なんて飲ませるな!!ふざけてんのか、この馬鹿どもがぁ!!!」
バシッ!!
突然発作を起こして意識を失ったと言うのも、これで話が通じる。
医者になろうという者が何抜かしたことを……。
傑と夏樹を思いっきり引っ叩き、俺は初療室に駆け込んだ。
***
——数時間後
藤堂「ひなちゃーん?今病院だよ、ICUにいるからね」
目が覚めたひなは、こうして病院へ来るのが久しぶりだったせいか、すぐには状況を把握出来ていない様子。
藤堂「目覚めたね。気分悪くない?」
ひな「コクッ……」
と頷くと、俺がいることにも気がついた。
ひな「五条先生……」
五条「おかえり」
そう言って手を握ると、ひなはなぜ病院にいるのか思い出したようで、
ひな「わたし……、傑は……?車、わたし傑の車汚しちゃったの……!っ、藤堂先生……?藤堂先生が買った車、血がついちゃって……ハァハァ、わたしが生理になったから……ハァハァ」
って、さっそくパニックになりかける。
藤堂「ひなちゃん、車のことは気にしなくて良いよ」
ひな「血なんかついたら取れないのに……っ、傑は?傑に謝らないと!!」
藤堂「大丈夫大丈夫。クリーニングすれば綺麗に落ちるから、心配しなくても大丈夫。傑も怒ったりしてなかったでしょ?」
ひな「でもわたしのせいで……せっかく楽しい旅行だったのに、わたしが倒れるから台無しになっちゃった……グスン」
五条「そんなことないだろ。ひなは楽しかったんだろ?夏樹と傑も楽しかったって言ってたのに、台無しだなんて言うな」
ひな「でも、帰るまでが遠足でしょ……?」
五条「も~……ひなぁ~?"でも"って言うのやめなさい。ちゃんと俺のところに帰って来たんだから、それでいい。ほら、身体疲れてるから今日はもう寝なさい」
と、ひなの手をまたギュッと握り、今度は頭も撫でてひなを寝かしつけた。
14
お気に入りに追加
140
あなたにおすすめの小説
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
お兄ちゃんはお医者さん!?
すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。
如月 陽菜(きさらぎ ひな)
病院が苦手。
如月 陽菜の主治医。25歳。
高橋 翔平(たかはし しょうへい)
内科医の医師。
※このお話に出てくるものは
現実とは何の関係もございません。
※治療法、病名など
ほぼ知識なしで書かせて頂きました。
お楽しみください♪♪
好きだった幼馴染に出会ったらイケメンドクターだった!?
すず。
恋愛
体調を崩してしまった私
社会人 26歳 佐藤鈴音(すずね)
診察室にいた医師は2つ年上の
幼馴染だった!?
診察室に居た医師(鈴音と幼馴染)
内科医 28歳 桐生慶太(けいた)
※お話に出てくるものは全て空想です
現実世界とは何も関係ないです
※治療法、病気知識ほぼなく書かせて頂きます
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
My Doctor
west forest
恋愛
#病気#医者#喘息#心臓病#高校生
病気系ですので、苦手な方は引き返してください。
初めて書くので読みにくい部分、誤字脱字等あると思いますが、ささやかな目で見ていただけると嬉しいです!
主人公:篠崎 奈々 (しのざき なな)
妹:篠崎 夏愛(しのざき なつめ)
医者:斎藤 拓海 (さいとう たくみ)
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる