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帰るまでが遠足①
しおりを挟む——翌日
夏樹「渋滞長そうだな」
七海「この時間だから仕方ないね。これ抜けたらすぐなんだけど、なかなか時間かかりそうかなー……」
楽しかった旅行も終わろうとする帰り道。
金曜日の夜とあってか、高速で渋滞に巻き込まれた。
七海「ひなのごめん。休憩出来るのもうちょっと先になりそう。疲れてない?」
ひな「ううん、わたしは大丈夫」
だって、後ろの席でのんびり座ってるだけだから。
運転してくれてる傑や夏樹の方が疲れてないか心配。
七海「寝てても良いからね。着いたら起こすし」
夏樹「お、そうか。んじゃ、おやすみ」
七海「夏樹に言ってない」
夏樹「ははっ、冗談冗談」
七海「まぁ、寝たかったら寝てくれて良いんだけど」
夏樹「こんな渋滞の中ドライバー残して寝れるかよ。それにしても混んでるな~。お菓子でも食べるか。ひなのも食う?」
ひな「あ、うん食べる!」
と、行きに買ってあったお菓子を食べたりして、渋滞の帰り道でも楽しく過ごしてる。
けれど、しばらくすると……
うぅ……。
ずっと車にいるせいか、さっきから頭が痛くて少し気持ち悪い。
七海「……ひなの?もしかして気分悪い?」
異変に気づいた傑が、ルームミラー越しにわたしを見る。
ひな「少しだけ……」
夏樹「酔ったか?」
七海「とりあえず窓開けよう」
と、少し窓を開けてもらい、
ひな「ありがとう。ちょっとマシ……」
七海「ごめん、渋滞長いから疲れたよね。横になって寝ときな。次のサービスエリアで休憩しよう」
ひな「大丈夫、すぐ治まると思うし。運転してないくせにごめんね……」
と言ってたけど、頭痛も気持ち悪いのも全然治らなくて、そのうちお腹まで痛くなってきた。
夏樹「おい、ひなの大丈夫か?顔色めちゃくちゃ悪くなってるぞ……」
ひな「ちょっとお腹も痛くなってきて……」
七海「ひなのもう横になりな。俺らは気にしなくて良いから」
ひな「でも、帰るまでが遠足だし。2人に申し訳ないよ……」
夏樹「帰るまでが遠足なら、なおさら少しでも休めって。無事に元気で家まで帰らないと」
と言われ、
はぁ、もう帰るだけなのに……。
最後の最後に情けない。
と思いつつ、お言葉に甘えて横になろうと、座り直すようにお尻を浮かせた時、
えっ……血……?
何これ、なんで……?
もしかして……わたし、生理来た……?
違和感を感じてお尻の下を見たら、白いシートには明らかに血の色が。
ひな「す、傑……」
七海「うん?え!?ひなのどうした?なんで泣いてるの!」
どうしよう、傑の車汚しちゃった……。
頭が痛い、気持ちが悪い、お腹が痛いはぶっ飛んで、真っ赤な血を前に頭は真っ白。
ひな「ごめん……わたし、生理になったみたいで……血がついちゃって……傑の車、汚しちゃったの……どうしよう……グスン」
震える声で言うわたしは、申し訳程度にお尻を浮かせてる。
七海「そっかそっか、それで具合悪くなったんだね。突然びっくりしたね。車のことは大丈夫だから、気にせず横になって」
そう言う傑の声がすごく優しくて、まるで藤堂先生みたい。
しかも、お尻の下にってサッとタオルも渡してくれて、そんな気遣いが出来るのも藤堂先生譲りだなって。
ひな「本当にごめんね……グスン」
そう言って横になると、思い出したように痛みが襲ってきて、それを静かにじっと耐えた。
でも、車が少しずつ流れ出した頃、
ひな「い"っ……ゔぅ……っ、ハァハァ……」
そうして耐えるのも、そろそろ限界に。
夏樹「やばいな……傑、あとどのくらいで着く?」
七海「流れて来たから30分くらいだと思う。サービスエリアなら5分で着くけど、ひなのきついよね……夏樹、ちょっと悟か五条先生に電話して。このまますぐ病院行こう」
夏樹「わかった。とりあえず藤堂先生に伝える」
と、夏樹が藤堂先生に電話をかけた。
***
*藤堂side
藤堂「——で?そんなに愛するひなちゃんを、悠仁はいつ抱くの?」
五条「……っ、ゲホッ!ゲホゲホッ!!」
今日はひなちゃんが帰ってくる日。
夕方、仕事を終えて更衣室に行くと悠仁もちょうど帰るところで、
藤堂「お疲れ様。もう帰る?」
五条「えぇ。ひな帰ってくるので早めに帰ろうと」
藤堂「そっかそっか。下まで一緒に行かない?」
五条「もちろん。……あっ、藤堂先生、もしよかったうち来ます?ひな帰るの夜なんで、ご都合良ければ軽く食事でも」
藤堂「お、いいの?そしたらお邪魔しようかな」
と、悠仁の家に来た。
そしたら、お酒は無しで2人ともシラフだと言うのに、仕事の話もそこそこに悠仁はひなちゃんの話ばっかり。
『俺が何かしてると後ろからすぐ抱きついてくるんですよ。背中を向けてる時によく抱きついてくるから、最近はわざと背中向けて立っとくんです』
『夜はいつもひなが先に寝るんですけど、俺がベッドに入ると寝ながらくっついてくるんです。たまに寝る時間が一緒になる時は、恥ずかしがって手しか繋がないのに。あ、手は繋ぐんですけどね(笑)』
って、悠仁からこんなに喋るなんてもう笑っちゃうくらい、ひなちゃんが好きで可愛くて仕方ないみたい。
それでもまだ、貞操をしっかり守っている悠仁。
俺から見ると、そんな悠仁も可愛くて仕方ないから、少し揶揄ってみた。
五条「藤堂先生、いきなり何言うんですか……!」
藤堂「うんー?悠仁はいつまで我慢するのかなーと思ってね。可愛いなって見てるだけじゃ、そろそろ辛いでしょ?(笑)」
五条「でも……ひなはまだ19なんで……」
藤堂「ということは、20才になったらってことか」
五条「え、いやっ……そういうわけでは……//」
藤堂「ふーん、そうかそうか(笑)」
五条「藤堂先生っ……!20才になるまではって思ってるだけで、20才になったところでひなが、その、出来るかどうかはわからないし、今キスのタイミングも探ってて……あ、いや、今のは違います!!と、とにかく、ひなの気持ちが1番なので、20才になったらすぐとかそういうことでは一切無くて……!」
藤堂「わかったわかった、わかったから落ち着きなって(笑)ごめんごめん、ひなちゃんのこと大事にしたいんだよね。悠仁は本当、えらいなと思うよ」
なんて、久しぶりに悠仁と2人で楽しく話していると、
プルルルッ……
夏樹から電話が。
藤堂「あれ、夏樹からだ。ひなちゃん何かあったかな?」
五条「渋滞で遅くなりそうとは、ひなからLIME来てましたけど」
藤堂「なんだろう……もしもし?」
と出てみると、ひなちゃんが突然生理になってかなり辛そうとのこと。
夏樹から一通り状況を説明してもらい、
藤堂「ひなちゃん、心配しなくて大丈夫だから、ゆっくり落ち着いて深呼吸するんだよ。できる?」
ひな「ハァハァ……はぃ、グスン」
藤堂「うん、えらいよ。泣かなくて大丈夫だからね。先生病院で待ってるから、それまで頑張るんだよ」
と、ひなちゃんに直接声をかけてから電話を切り、悠仁と病院へ向かった。
そして、病院に着いたらすぐに着替えを済ませ、
藤堂「宇髄先生。夏樹から連絡があって、帰る途中にひなちゃんが生理で倒れたと。今病院に向かわせていて、10分ほどで来ると思います」
宇髄「ん?生理って……早くないか?」
五条「はい。前回からまだ20日ほどです。普段の周期は30日なんですが」
宇髄「だよな。旅行の興奮と疲れがそっちに出たか。よし、わかった。俺も行く」
と、宇髄先生にも伝え、みんなでひなちゃんが来るのを待っていると、
プルルルッ……
藤堂「はい、もしもs……」
夏樹「藤堂先生!ひなのが気失った……!!」
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