ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜

はな

文字の大きさ
上 下
155 / 238

王子か鬼か①

しおりを挟む


五条「ひな~」


ひな「……」


五条「はぁ……ひ~な~?」


ひな「はい!もうちょっと!」


五条「こら!もうちょっとじゃない!いつまで勉強してるんだ。もう23時過ぎてるんだぞ。早く風呂入らんか!!」





今はもう7月。

わたしは大学に入って初めてのテストを前に、毎日必死で勉強してる。

さっきから、キリのいいところまでと言い続けて3時間以上。

いい加減、五条先生に怒られてしまい、





ひな「す、すみません……!」





急いでお風呂に入った。










ポチャーン……





はぁ……、疲れた。





医大では、単位を1つでも落とせばその時点で留年が決定してしまう。

だから決して赤点なんて取れない。

再試も数回あるにはあるけど、それに頼るわけにはいかないので、一発勝負の気持ちで勉強してる。





あと2週間もないけど、覚えること多くて間に合うかな……

テストが終わったら長い夏休みが待ってるのに、それどころじゃないよ……

はぁ……





と、湯船に浸かりながら1人ため息をついてると、





ひな「ケホッ……」





ぇ……?





ひな「…………ケホッ……ケホッ」





なんだか喉がムズムズすると思ったら、





ひな「ケホケホケホ……」





やばい、喘息出てきちゃったのかも……。










***



——数日後





昼、





ひな「ケホケホッ……」


七海「ひなの、大丈夫?」


ひな「大丈夫」


夏樹「どんどん咳酷くなってない?」


ひな「ううん、なってない」





夜、





五条「ひな、大丈夫か?」


ひな「大丈夫です!」


五条「身体怠いんじゃないか?重力に逆らえませんって感じだぞ」


ひな「なにそれ(笑)!全然だるくないですよ!!」


五条「お前がそのびっくりマーク付けたような言い方する時は大抵無理してる時だ。酷くなる前に今日はもう寝ろ」



ギクッ……



ひな「ほ、本当に元気ですよ!薬もちゃんと飲んでるし、なんともないです!もう少し頑張ってから寝ます!」





そして、深夜。

あれから毎日咳が出るようになり、身体も重くて怠くて、日に日に体調が悪くなるのを騙し騙しやり過ごしてきたわたしは、





ひな「ケホケホッ……ケホケホケホッ……!」





ついに発作が起きてしまった。





ひな「ケホッ、ケホケホケホッ……ハァハァ……ケホケホケホッ!!」


五条「ひな口開けて。いくぞ?」





五条先生が吸入してくれるけど、やり方を忘れたのか上手く吸えない。





ひな「ハァハァ、ハァハァ……ケホケホケホッ!!」


五条「落ち着け。変にタイミング合わせて吸おうとしなくていいから、しっかり深呼吸しなさい」





と言われ、頑張って深呼吸すると、



プシュッ……



上手くタイミングを合わせて吸入してくれた。





ひな「ハァハァ……ハァハァ……ケホッ…………ッハァ……ハァ……」


五条「大丈夫だ。そのままゆっくり呼吸して」


ひな「ハァハァ……ハァハァ、……ケホッ……ハァハァ……ハァハァ」





背中をさすってくれる五条先生に完全にもたれかかって、わたしは荒い呼吸を繰り返す。





ひな「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」


五条「そろそろ横になるか?」


ひな「コクッ……」





発作が落ち着きベッドに横になると、五条先生は聴診しながら、





五条「ひな、朝になったら一緒に病院行くぞ」





って。





ひな「やだ、行かない……もうすぐテストだから。勉強しないと……」


五条「ダメだ。熱もあるのに勉強してる場合じゃない」





え、熱?





ひな「熱はないです……」


五条「いいや、ある。おでこも首も熱い。7度7分くらい出てるぞ、測ってみるか?」





と言われたけど、五条先生の手のひらセンサーで十分なので首を横に振った。





五条「どうせ明日は注射だし、とにかく一緒に行くからな。ほら、朝また起こすからもう1回寝なさい。身体休めるのが1番だぞ」





と、しばらく肩をトントンしてもらい、五条先生のベッドで朝を迎えた。

そして、五条先生の出勤と一緒に病院へ来ると、さっそく病室に入れられて診察を受ける。





藤堂「ひなちゃん、大きく深呼吸してー」





こんなにじっくり聴診されるの久しぶり。

真剣に耳を傾ける藤堂先生の顔を見てると、少しずつ少しずつ、眉間にシワが寄っていく……。





藤堂「うーん……ひなちゃん、今結構苦しいでしょ?点滴して今日はもう入院ね。1日安静にするよ。鉄剤も点滴から入れるからね」





ステートを首にかけて、わたしのボタンを留めながらそう言う藤堂先生。





ひな「大丈夫です、そこまでしんどくないです……早く勉強したいので、夜には帰らせてください」


藤堂「それはダメ。喘鳴が聞こえてるし熱もあるの。今日無理したらテスト受けさせないよ。1日じっとしてれば落ち着くはずだから、今日だけしっかり休もう」





と言われてしまい、鉄剤ともう1つ輸液に繋がれて、今日はベッドの上で過ごすことが確定。

とはいえ、このわたしがじっと大人しくしてるわけがなくて、藤堂先生が部屋を出た後、こっそり持って来ていたノートで勉強した。










***



——翌日





ひな「ケホケホッ……」





今日は起きた時からしんどい。

明らかに熱が上がってそうなしんどさ。

昨日は安静にと言われたけど、結局、先生たちが部屋に来ない間はずっと勉強してたし、なんなら消灯後も日付が変わるくらいまで勉強してたから、そのせいかもしれない。





やばい、これは今日絶対退院できない。

退院できないどころか、大人しく寝てなかったことがバレたら怒られる。

どうしよう……どうやってバレないようにしよう……





って、さっきからそればっかり考えてる。










コンコンコン——





祥子「ひなちゃんおはよう~」


ひな「祥子さん、おはようございます」





9時頃になって、祥子さんがラウンドに来た。





祥子「ひなちゃん食欲なかったのね。しんどい?」





あっ……

今朝はご飯を半分くらい残したんだった。

看護助手の人が下げてくれたから油断してたけど、食事量確認されてるに決まってる。

藤堂先生にバレないようにって考えてたけど、その前にまずは祥子さんだ……





ひな「あ、あの……もうすぐ大学入って初めてのテストなので、なんかすごく緊張しちゃって喉通らなくてっ……」


祥子「あら、そんなに緊張してるの?試験はいつからだっけ?」


ひな「3日後です」


祥子「本当にすぐね、それなら早く治さないと。お昼はしっかり食べてね」





と、ここは怪しまれることなくクリア。





祥子「そしたら、お熱測ってくれる?」





ギクッ!





そうだ、ここで検温があるんだった。

やばい……





まだ藤堂先生が来てないというのに、もはやこれが最大の難関かもしれないと、渡された体温計を祥子さんにバレないようゆる~く挟む。





ピピッ……





すぐに脇から取って確認すると、36.9℃の表示。



んー……ちょっと怪しいけど、まぁセーフかな?



と、祥子さんに渡すと、





祥子「36度9分ね。ありがとう。そしたら血圧測るわね」





と、第二関門もなんとかクリア。


だけど、





祥子「うん……?ひなちゃん腕すごい熱いわね」


ひな「え?」





あ、やばい。

バレる……?

えっと、えっと……





ひな「あ、祥子さん来るまでずっと布団にくるまってて、冷房で少し寒いな~なんて、腕を背中の下に挟んでたんです!そ、それでかな?」





と、とんでもなく意味不明な説明をするも、



シュッ……シュッ……シュッ……シュッ……



祥子さんは何も言わず真剣に血圧を測ってて、





祥子「うん。血圧は問題ないわよ。大丈夫みたいね」





って。





はぁ……よかった、危なかった……。





と、第三関門も無事突破したところで、





コンコンコン——





藤堂「ひなちゃん、おはよう」





ラスボス、藤堂先生のご登場。

さぁ、既に一山越えた感じではあるけれど、本当の勝負はここから。

藤堂先生の目をうまく掻い潜ることができるか……


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

好きだった幼馴染に出会ったらイケメンドクターだった!?

すず。
恋愛
体調を崩してしまった私 社会人 26歳 佐藤鈴音(すずね) 診察室にいた医師は2つ年上の 幼馴染だった!? 診察室に居た医師(鈴音と幼馴染) 内科医 28歳 桐生慶太(けいた) ※お話に出てくるものは全て空想です 現実世界とは何も関係ないです ※治療法、病気知識ほぼなく書かせて頂きます

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

お兄ちゃんはお医者さん!?

すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。 如月 陽菜(きさらぎ ひな) 病院が苦手。 如月 陽菜の主治医。25歳。 高橋 翔平(たかはし しょうへい) 内科医の医師。 ※このお話に出てくるものは 現実とは何の関係もございません。 ※治療法、病名など ほぼ知識なしで書かせて頂きました。 お楽しみください♪♪

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

だってお義姉様が

砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。 ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると…… 他サイトでも掲載中。

ma.chaaaa
恋愛
病弱な女の子美雪の日常のお話です。 ーーーーー 生まれつき病弱体質であり、病院が苦手な主人公 月城美雪(ツキシロ ミユキ) 中学2年生の13歳。喘息と心臓病を患ってい、病院にはかなりお世話になっているが病院はとても苦手。 美雪の双子の兄 月城葵 (ツキシロアオイ) 月城家の長男。クールでいつでも冷静沈着。とてもしっかりしてい、ダメなことはダメと厳しくよく美雪とバトっている。優秀な小児外科医兼小児救急医であるためとても多忙であり、家にいることが少ない。 双子の弟 月城宏(ツキシロヒロ) 月城家の次男。葵同様に医師免許は持っているが、医師は辞めて教員になった。美雪が通う中高一貫の数学の教師である。とても優しく、フレンドリーであり、美雪にとても甘いためお願いは体調に関すること以外はなんでも聞く。お母さんのような。 双子は2人とも勉強面でもとても優秀、スポーツ万能、イケメンのスタイル抜群なので狙っている人もとても多い。 父は医療機器メーカー月城グループの代表兼社長であり、海外を飛び回っている。母は、ドイツの元モデルでありとても美人で美雪の憧れの人である。 四宮 遥斗(シノミヤ ハルト) 美雪の担当医。とても優しく子ども達に限らず、保護者、看護師からとても人気。美雪の兄達と同級生であり、小児外科医をしている。美雪にはとても手をやかされている… 橘 咲(タチバナ サキ) 美雪と同級生の女の子。美雪の親友。とても可愛く、スタイルが良いためとてもモテるが、少し気の強い女の子。双子の姉。 橘 透(タチバナ トオル) 美雪と同級生の男の子。咲の弟。美雪とは幼なじみ。美雪に対して密かに恋心を抱いている。サッカーがとても好きな不器用男子。こちらもかなりモテる

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...