上 下
145 / 232

カテーテル検査③

しおりを挟む


祥子「ひなちゃん、お疲れ様」





検査室の看護師さんから祥子さんに引き継いでもらい、祥子さんの声を聞いてようやく、





終わった……





という気持ちになった。





祥子「ひなちゃん、今気持ち悪いとか痛いとかない?」


ひな「はい」


祥子「うん、よく頑張ったわね。そしたら、これから6、7時間安静になるから、少しつらいけどしばらくこのままね」





そうだった……



検査が終わっても6、7時間は絶対安静にしないといけないらしく、この仰向けの状態から動けない。

説明してもらってた時は、そんなの寝てるだけだし余裕じゃんって思ってたけど、足に巻かれてるベルトが地味に痛いし、今はまだ朝の10時過ぎ。

夕方までこのまま動けないって、そんなのできるかな……?と今になって思ったけど、





祥子「30分後に一度様子見に来るから、それまでゆっくりしててね。ここにナースコール置いておくから、何かあったらすぐ呼んで」





と、手元にナースコールのボタンを置いてもらって、祥子さんが出て行くと、





ひな「スー……スー……」





わたしは速攻で眠りについてた。










***



*五条side



~内科医局~



ひなの検査が終わったと連絡をもらって、藤堂先生のとこにみんなが集合した。





五条「お疲れ様です。工藤先生、藤堂先生、ありがとうございました」


宇髄「2人ともお疲れさん。ひなちゃんの血管難しかっただろ」


工藤「はい。最初、カテーテル入れる時かなり痛がってて、なんでかな?と思ったんですが、緊張で血管が収縮してしまいさらに細くなってたようです。それで痛かったのかなと」


藤堂「正直、血管の細さも心臓の小ささも、カテーテルできるギリギリのサイズでした」


工藤「血圧も一時急激に下がったので、身体への負担がひなちゃんにはかなり大きいようです」


宇髄「そうか。今後心カテする必要が出てきた時は考えないとな……。で、結果の方はどうだった?」





今回のカテーテル検査。

1番心配だったのは、肺高血圧症を合併してないかどうか。

手術の適応については、息切れや不整脈の症状が出ていることや欠損の大きさなどから、必要であることは判断できていた。

欠損箇所の位置やさっき話してたひなの心臓の大きさから、治療はカテーテルでなく開胸手術とすることが決まっている。

ただ、血液検査の結果から肺高血圧の可能性が拭いきれず、心カテ検査は行った。



もし、肺高血圧症になってた時は……



ひなの寿命が短いことを、覚悟しないといけなくなる。





工藤「心配だった肺高血圧は大丈夫でした。肺動脈圧は平均値で問題なかったです」


五条「はぁ、よかった……」





これまでひなにいろんな検査をしてきたが、結果を見聞きするのがこんなに怖いのは正直初めてだった。

どんなに悪い結果でも治せる自信があったけど、肺高血圧になれば移植しても長く生きられる望みは薄い。

だから、もしもそうだったら……と考えただけで、俺の心臓に穴があいてしまいそうだったので、工藤先生の言葉を聞いて心底ホッとした。





藤堂「悠仁、一安心だね」


五条「はい、ありがとうございました。まだ手術がありますが、ひとまずよかったです……」










それからしばらくして、時間ができたのでひなの様子を見に病室へ来た。

ちょうど祥子さんが血圧を測ってるところで、ひなはぐっすり眠ってる様子。

祥子さんに聞くと、帰室してから3時間ずっと眠ってるらしい。

ひなの手を軽く握りそっとおでこを撫でてみても、検査の疲れかピクリともせず、本当にぐっすり。

バイタルも安定していて、落ち着いてるとこのことだったので、安心して仕事に戻った。



でも、それから2時間後……










医局でカルテの整理中、パッと時計を見ると15時半。



お腹も空いてくるだろし、そろそろひな起きるかもな……



なんとなくそう思って、





五条「神崎先生。すみません、ちょっとひなのところ行ってきます」


神崎「うん、了解。何かあったら呼ぶからゆっくりしてきていいよ」


五条「ありがとうございます」





と、ひなの部屋へ来てみると、ベッドの上でひなが泣きじゃくってた。





五条「ひな!?」


ひな「うぅっ……五条っ、せんせっ……ヒック、ヒック……」





ナースコールは床の上。

祥子さんが手元に置いてくれてたから、恐らく押そうとして落としたんだろう。

すぐにそれを拾い上げてボタンを押し、藤堂先生を呼んでもらった。





藤堂「ひなちゃん、どこか痛い?」


ひな「足っ……ヒック、ヒック……痛い……っ、グスン」





どうやらひなは、止血してる足が痛むらしい。

しかも、足に巻いてる固定バンドを無理やり外そうとしたのか、点滴の方がズレてしまい腕まで腫れてる。

工藤先生にも来てもらって、とりあえずひなを落ち着かせようとするも、ひなは完全にパニック状態。





藤堂「ひなちゃーん、落ち着いて。大丈夫大丈夫」


ひな「うぅっ、ヒック……ヒック、痛い……っグスン、グスン……」


五条「ひなー?少しだけじっとしてごらん。工藤先生に痛み止め打ってもらおう、な。そしたら痛いのすぐ治るから」





藤堂先生が点滴の漏れた左腕をなんとかしてくれてる間に、俺は工藤先生が鎮痛剤を打てるよう、ひなの右腕を押さえる。

でも、なぜかひなが嫌がって仕方ない。





ひな「ヒック、ヒック……痛いのもぅやだ……っ」


五条「痛いの治すためにするんだぞ?工藤先生すぐ終わらせてくれるから、そんなに痛くないから。なにがそんなに嫌なんだ……」





一旦右手を持つ力を緩めてやって、ひなの肩の辺りをさすってやると、





ひな「みんな嘘つき……ヒック、工藤先生、注射上手じゃない。すっごく痛かった。今までで1番痛かった!!グスン、グスン」





なんて言い出した。





五条「は?」


藤堂「ひなちゃん、突然どうしたの……」


工藤「俺のせいか……」





いや、そんなこともそんなわけもない。

何かおかしい……





五条「ひな、なんで突然そんなこと言うんだ。工藤先生に注射される夢でも見たか?」


ひな「違うぅ……痛かったの、ヒック……麻酔痛かった……うぅ……グスン」


工藤「麻酔?ひなちゃん、麻酔って今日検査の時にした麻酔の注射?」


ひな「グスン……グスン……、コクン」


藤堂「あっ……そういうことか……」





俺は今日の検査に立ち会ってなくて、その時のことがわからない。

ただ、藤堂先生が何かに気づいたことは、俺がピンときたことと恐らく同じはず。

で、その解を答えたのは工藤先生本人。





工藤「ひなちゃん、麻酔の注射が痛かったから怖くなっちゃったんだな。でもな、あの麻酔の注射をしてくれたのは、麻酔科の先生だったんだ。俺は、麻酔してないんだ(笑)」





やっぱりそういうことだったか。

どんな注射でも、工藤先生の手にかかればそこまで痛いはずはない。

きっと、ひなは麻酔されるところが見えてなかったから、工藤先生が全部してると勘違いしたんだろう。

そんなひなは、涙を引っ込めて"えっ……?"という顔をしてる。





藤堂「ひなちゃん、工藤先生が麻酔してると思ってたんだね。工藤先生が今からするよーって声かけてくれてたから、勘違いしちゃったね」


ひな「工藤先生じゃなぃの……?グスン」


工藤「あぁ、俺じゃないよ。今日、検査の時いっぱい先生いただろ?あの中に麻酔科の先生もいたんだ。ごめんな、言ってなかったからわかんなかったな」





藤堂先生も工藤先生もさすが優しい。

俺ならひなのこと怒ってしまいそうだし、なんなら今も本当は怒りたいところだが……





ひな「ごめんなさぃ……グスン」





本気で反省してるから今日はよし。





工藤「気にしないでいいぞ~!その代わり、右腕に少しチクっとさせてくれる?」





と、工藤先生がひなの頭をわしゃわしゃ撫でると、ひなはコクッと頷いた。





五条「ん。ひな頑張るぞ」





また右腕を掴むと、大人しくじっとしてくれて、少しピクッとしただけ。





工藤「ひなちゃん痛かった?」


ひな「フリフリフリ……」


工藤「よかった!これで足が痛いのも治まるからな」





と言ってる間に、藤堂先生も右腕に回って点滴を入れ直してくれて、ひなもすっかり落ち着きを取り戻した。



そしてこの後は、

痛みが引いたと思ったら、今度はお腹が空いたと言ってきたので、まだ身体を起こせないひなの口に、ひと口ずつご飯を運んでやった。

その後、検査から7時間経過のタイミングでは、ひなが途中ああなったんで止血が十分でなく、絶対安静期間が延長。

翌朝、よくやくバンドと尿道カテーテルを取って、カテーテル検査一連の処置を終えた。










そして、その1週間後……










ひなは心臓の手術を受け、無事に成功した。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

好きだった幼馴染に出会ったらイケメンドクターだった!?

すず。
恋愛
体調を崩してしまった私 社会人 26歳 佐藤鈴音(すずね) 診察室にいた医師は2つ年上の 幼馴染だった!? 診察室に居た医師(鈴音と幼馴染) 内科医 28歳 桐生慶太(けいた) ※お話に出てくるものは全て空想です 現実世界とは何も関係ないです ※治療法、病気知識ほぼなく書かせて頂きます

イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?

すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。 病院で診てくれた医師は幼馴染みだった! 「こんなにかわいくなって・・・。」 10年ぶりに再会した私たち。 お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。 かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」 幼馴染『千秋』。 通称『ちーちゃん』。 きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。 千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」 自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。 ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」 かざねは悩む。 かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?) ※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。 想像の中だけでお楽しみください。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。 すずなり。

My Doctor

west forest
恋愛
#病気#医者#喘息#心臓病#高校生 病気系ですので、苦手な方は引き返してください。 初めて書くので読みにくい部分、誤字脱字等あると思いますが、ささやかな目で見ていただけると嬉しいです! 主人公:篠崎 奈々 (しのざき なな) 妹:篠崎 夏愛(しのざき なつめ) 医者:斎藤 拓海 (さいとう たくみ)

お兄ちゃんはお医者さん!?

すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。 如月 陽菜(きさらぎ ひな) 病院が苦手。 如月 陽菜の主治医。25歳。 高橋 翔平(たかはし しょうへい) 内科医の医師。 ※このお話に出てくるものは 現実とは何の関係もございません。 ※治療法、病名など ほぼ知識なしで書かせて頂きました。 お楽しみください♪♪

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

好きすぎて、壊れるまで抱きたい。

すずなり。
恋愛
ある日、俺の前に現れた女の子。 「はぁ・・はぁ・・・」 「ちょっと待ってろよ?」 息苦しそうにしてるから診ようと思い、聴診器を取りに行った。戻ってくるとその女の子は姿を消していた。 「どこいった?」 また別の日、その女の子を見かけたのに、声をかける前にその子は姿を消す。 「幽霊だったりして・・・。」 そんな不安が頭をよぎったけど、その女の子は同期の彼女だったことが判明。可愛くて眩しく笑う女の子に惹かれていく自分。無駄なことは諦めて他の女を抱くけれども、イくことができない。 だめだと思っていても・・・想いは加速していく。 俺は彼女を好きになってもいいんだろうか・・・。 ※お話の世界は全て想像の世界です。現実世界とは何の関係もありません。 ※いつもは1日1~3ページ公開なのですが、このお話は週一公開にしようと思います。 ※お気に入りに登録してもらえたら嬉しいです。すずなり。 いつも読んでくださってありがとうございます。体調がすぐれない為、一旦お休みさせていただきます。

幼馴染はとても病院嫌い!

ならくま。くん
キャラ文芸
三人は生まれた時からずっと一緒。 虹葉琉衣(にじは るい)はとても臆病で見た目が女の子っぽい整形外科医。口調も女の子っぽいので2人に女の子扱いされる。病院がマジで嫌い。ただ仕事モードに入るとてきぱき働く。病弱で持病を持っていてでもその薬がすごく苦手 氷川蓮(ひかわ れん)は琉衣の主治医。とてもイケメンで優しい小児科医。けっこうSなので幼馴染の反応を楽しみにしている。ただあまりにも琉衣がごねるととても怒る。 佐久間彩斗(さくま あやと)は小児科の看護師をしている優しい仕事ができるイケメン。琉衣のことを子供扱いする。二人と幼馴染。 病院の院長が蓮でこの病院には整形外科と小児科しかない 家は病院とつながっている。

処理中です...