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カテーテル検査①
しおりを挟む——翌日
今日は朝から藤堂先生の定期健診と工藤先生の検査を受けた。
それが午前中いっぱいかかって、入院手続きをして病室に入り、暫し休憩。
今回は手術があるから外科に入院するのかと思ったけど、そもそも藤堂先生が呼吸器だけじゃなくて循環器の専門でもあって、心臓も診れるから内科でいいんだって。
じゃあ、手術も藤堂先生ができるんじゃないの?って聞いたら、それは外科の工藤先生じゃないとダメって言われた。
明日するカテーテル検査なら、藤堂先生も普段からしてるみたいだけど、わたしは手術も必要だから全部工藤先生にやってもらうんだって。
先生たちの役割分担って一体どうなってるんだろう……。
なんて考えながら、パジャマに着替えて少しぼーっとしてると、
コンコンコン——
祥子「ひなちゃーん」
祥子さんが来てくれた。
ひな「祥子さん!」
祥子「久しぶりね。朝からたくさん検査あって疲れたでしょ。大丈夫?」
ひな「少し疲れたけど大丈夫です」
祥子「一昨日は達弥がお家にお邪魔したみたいで。黒柱が集まってたなんて一晩中うるさかったでしょ?あの人たちすぐ騒ぐのよね。仕事ではみんな完璧なのに、どうしてあんなガキみたいなのかしら」
しょ、祥子さん……(笑)
黒柱をそんな風に言えるなんて、絶対祥子さんしかいない気がする。
宇髄先生の奥さんだからそんなこと言えるのか。
というより、そんなこと言える祥子さんだから、宇髄先生の奥さんになれたのかもしれないな……。
ひな「いえ。わたしは夜すぐ寝ちゃったので、全然大丈夫でした」
祥子「そう?それならよかったわ。今回の入院の間もわたしがひなちゃんの担当だから、何かあったらすぐに言ってね」
ひな「はい。ありがとうございます」
祥子「それと……はい、これ。今日ご飯が出るのは夜からだから、五条先生がひなちゃんにって」
と、渡されたのは、五条先生が作ってくれたおにぎり。
ひな「あれ?五条先生、おにぎりなんていつの間に……」
今朝は五条先生と一緒に車で病院へ来た。
正面玄関で降ろしてもらった後、駐車場へ車を止めに行ったんだと思ってたけど、もしかして一度帰って作ってくれたのかな?
祥子「五条先生、本当にひなちゃんのこと大切なのね。愛が溢れてるわ」
ひな「えっ//」
祥子「こうして、おにぎり握って差し入れしてくれるのよ?彼女のためにここまでまめに動ける男性なんて、そうそういないじゃない」
ひな「そうなんですかね?五条先生の愛はもちろんすごく感じますけど、五条先生がお医者さんだからここまでしてくれるのかなって。というより、そもそもわたしは五条先生しか知らないから……他の男の人がどうかっていうのはあまりわかんないです」
祥子「確かにそうね。五条先生や黒柱はその辺の男とはレベルが違うから……って、五条先生しか知らないなんて、ひなちゃんかわいいこと言うわね。それ、五条先生に言ってあげたら喜ぶと思うわよ?」
ひな「え?どうして?」
祥子「男の人ってそういうの好きだから」
そうなんだ。
って、あんまりよくわからんないけど、まぁいいっか。
ひな「おにぎり、持って来てくれてありがとうございます」
祥子「いいえ。そしたらわたしは行くね。あとで工藤先生が来てくれるから、食べてゆっくりしててね」
ひな「はい」
***
——2時間後
おにぎりを食べたわたしは、お腹が膨れてうとうと……。
病室の中は涼しいけど、窓から入る真夏の太陽の熱はちょっぴり熱くて、それがちょうどよく気持ちいい。
コンコンコン——
工藤「……あれ?ひなちゃん寝てる」
藤堂「あら、本当だ」
いつの間にか目を閉じてたわたしは、先生たちが来たことに気がつかず、
藤堂「検査疲れちゃったかな」
と、藤堂先生におでこを触られて目が覚めた。
ひな「ん……?」
藤堂「おはよう。寝てた?」
ひな「ぁ、目閉じてました」
工藤「それを寝てたっていうんだよ(笑)」
ひな「あ、そっか」
藤堂「大丈夫?少し疲れちゃったね。もうちょっと寝る?」
ひな「いえ、お腹いっぱいでうとうとしてただけなので大丈夫です」
工藤「しんどくなった時は無理しないですぐ教えてな。そしたら、明日の検査の説明してもいいかな。別の部屋でするから一緒に来てくれる?」
ひな「はい」
と、先生たちについて行き面談室へ。
中に入ると五条先生がいたんだけど、わたしの顔を見るなり、
五条「ん、ひな来たか。……寝てたか?」
って。
なんでわかったの……?
と、今までなら聞いてたけど、もうなんでもバレることにもついに慣れ、
ひな「おにぎりありがとうございました。美味しかったです」
とだけ伝えた。
五条「ん。じゃあひなここ座って」
と、椅子を引いてもらって五条先生と隣同士で席についた。
工藤「それじゃあ、さっそく説明していくな。まず、今回ひなちゃんに受けてもらう検査は、カテーテル検査。細い管をひなちゃんの足の付け根から心臓まで入れて、心臓がどんな状態か詳しく診ていくぞ」
管を……足の付け根から……心臓に…………管を……心臓に……?
説明が始まったところでさっそく頭がパニック。
なんで心臓の検査なのに足なの?
足から心臓まで管が入るって意味がわからない。
というか心臓に管って何……?
ひな「足に……管……」
工藤「うん。足の付け根にある太い血管に管を入れて、その血管をずーっと進むと心臓までいくんだ。手首から入れる方法もあるけど、ひなちゃんは血管が細いから足から入れるな」
ひな「はぃ……」
工藤「そして、ひなちゃんが一番不安な痛いかどうかだけど、それは心配しなくて大丈夫。最初に局所麻酔をするから、その時だけ我慢すれば後は痛くないぞ。血管も心臓も痛みを感じないから安心してな」
もちろん、工藤先生の説明はもう聞けてない。
せっかく痛くないって言ってるのに、わたしは完全スルーしてる。
工藤「検査の前と後にもいろいろあるけど、検査自体は1時間くらい。ひなちゃんはベッドでゆっくりしてるだけでいいよ。ざっと説明したけどここまでいいかな?」
ひな「……」
藤堂「ひなちゃん?」
ひな「…………」
五条「ひな?」
ビクッ!
ひな「は、はい……!」
完全に自分の世界に入り込んでたわたしは、五条先生がそっと背中に手を添えただけでビクッと跳ねてしまった。
五条「大丈夫か?聞いてなかったか?」
ひな「え?いえ、聞いてました」
工藤「質問は大丈夫?今のところでわからないことや気になることはなかった?」
ひな「えっと……検査はどのくらい痛いですか……?」
工藤「え?」
ひな「その、管を足に入れて心臓に入れるって、なんかそれだけで身体中が裂けそうというか……とにかくすごく痛いのかなと思って。麻酔で眠るんですか……?というか、どうして直接心臓に入れないんですか?」
五条「ひなぁ……。聞いてないと思ったけど、そんな始めの方から聞いてなかったのか……」
ひな「え?」
五条「その話はちゃんとしてくれてたぞ?管は太い血管を通して心臓まで入れる。最初に麻酔する時だけ痛いけど、後は痛くないって」
ひな「す、すみません。聞いてたんですけど、頭に入ってなかったみたいです」
藤堂「うん、つまり聞いてなかったね(笑)」
ひな「……っ、ごめんなさい」
五条「ひな?今説明してもらってるのはひなのことなんだ。俺のでもなんでもなくて、ひなのここ」
と、五条先生がわたしの心臓を指差す。
指を差されただけなのに、その瞬間、なぜかこの子(心臓)を守らなきゃって気持ちが湧いてきて、わたしは心臓を包み込む気持ちで胸に手を当てた。
五条「そう、そこ。自分の身体のことだからしっかり聞こう。嫌でも怖くても、みんなひなの不安がなくなるまで寄り添うから。そのために、こうして説明もしてるんだ」
ひな「はい……ごめんなさい」
工藤「ごめんな。難しい話駆け足でしちゃったもんな。そしたら、ひなちゃん。もう1回説明するから、しっかり聞いてくれるか?」
と、今度はホワイトボードに絵を描きながら、わたしにもわかりやすいように検査のことを説明してくれた。
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