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大事なお話ep.2
しおりを挟む*ひなのside
——翌日
昨日はいつ寝たのか覚えてない。
起きたらベッドにいて、リビングに行くと先生たちがソファーや床に寝てた。
ローテーブルやダイニングテーブルは散らかったままで、わたしは先生たちを起こさないよう、それを静かに片付けた。
一通り片付けを終えると、今度は朝ごはん作り。
二日酔いなんて言葉を聞いたことがあるから、先生たちには雑炊、夏樹くんには残ったごはんでおにぎりとお味噌汁。
すると、五条先生が起きたみたいでさっそくキッチンにやって来た。
ひな「五条先生、おはようございます!」
五条「おはようって、1人で全部片付けて朝ご飯まで作ってたのか?」
ひな「はい」
五条「はいじゃなくて、いつから起きてたんだ、ゆっくりしてなきゃダメだろ……。起きて気分悪くなかったか?ちょっと手首貸して」
と、寝起きでさっそく簡易診察。
ひな「わたし、昨日は知らない間に寝ちゃったみたいですみません。でも、なんともなくてよかったです」
五条「はぁ?何言ってんだ、喘息出ただろ」
ひな「え?喘息??」
あれ……わたしワイン飲んで寝ちゃっただけじゃないの……?
五条「まさか覚えてないのか……?」
ひな「ワイン飲んじゃって、五条先生に怒られて、強制膝枕されましたけど……」
五条「その後は?」
ひな「……寝ました」
五条「そこから記憶ないのか……」
と、朝から五条先生のため息。
ひな「ご、ごめんなさい」
五条「ひなは覚えてなくても、昨日は具合悪くなったんだ。だから、何でもかんでも1人でしない。掃除もご飯も嬉しいけど、嬉しいけど全部俺がやるから」
……うれしいって、五条先生2回も言った。
ひな「へへっ//」
五条「なにニヤニヤしてんだ……」
ひな「いえ。いつも五条先生にしてもらってばかりなので、わたしができる時はさせてくださいっ!」
五条「わかったからそれは元気なときにしろ。ほら、ひなもう座れ。しんどくなるといけないから。な?」
ぽんぽん……
と話してたら、
神崎「ふふ~ん。朝から仲良いねっ」
藤堂「おはよう、ひなちゃん」
いつの間にかみんな起きてきてた。
ひな「お、おはようございます……!あ、朝ごはん作ったので皆さん座ってください。今用意します!」
と、ダイニングに行きかけた体をくるりと戻したら、
五条「ひな!だからお前は座っとけって言っただろ」
と、手首を掴まれて、
ひな「ハイ」
大人しくテーブルで待機。
「「いただきまーす!」」
なんでもない日常の非日常。
黒柱と夏樹くん、みんな揃ってうちで朝ごはんを食べてるなんて、不思議で不思議で仕方ない。
そして、先生たちに二日酔いなんて言葉は存在しないのか、朝からすごい食欲。
座っとけって言った後に、五条先生がパンを焼き始めて、ヨーグルトやシリアルも出してきたと思ったら……
ひな「すみません。先生たちすごく飲んでたから二日酔いかな~なんて思って雑炊にしちゃって。物足りないですよね」
藤堂「ありがとうひなちゃん。二日酔いではないけどうれしいよ。ちゃんと考えてくれたんだね」
神崎「二日酔い気にして雑炊作ってくれるなんて、ひなちゃんいいお嫁さんだよ」
いや、まだお嫁さんではないけど……。
工藤「そうそう。夏樹にはおにぎり作ってくれてるし」
夏樹「ひなののおにぎりうまいわ。ひなのっておにぎり好きだよな。学校でもよく食べてるし。定食のご飯残すくせにおにぎりはパクパク食べるよな」
な、夏樹くん……。
そういうことは言わないで欲しかったな……。
五条先生に何か言われそうだから……。
向かいに座る五条先生をチラッと見てみると、ジロリと目を細められてしまった。
朝食の後は、ワンピースに着替えて、髪を綺麗に結んで、五条先生にもらったリップをつけて、お出かけの準備。
バッチリ決まったところでリビングに戻ろうとすると、
工藤「オーキャン??」
夏樹「うん。ノワール医大のオープンキャンパス。今日一緒に行くって、前からひなのと約束してたけど?」
五条「はぁ?そんなこと聞いてないぞ?」
夏樹「いやいや、俺に言われても。夏休み入る直前に約束したんだって」
工藤「それ昨日言えよ!」
夏樹「俺、いつもどこ行くなんて兄貴にわざわざ言わねーじゃん!」
工藤「お前はどうでもいいけどひなちゃんいるだろ!具合悪くなってるの見てたんだから、明日行けるかなとか思うだろ普通、このバカ!」
夏樹「いや、五条先生知ってると思ってたし!」
リビングのドアを開けようとしたところで、先生たちがなんか言い合ってるのが聞こえてきた。
話の内容までは聞こえなかったけど、声の感じでなんとなく嫌な予感がして、ドアノブに掛けた手を一旦離して中の声を聴いてたら、
五条「ひなどこ行った?」
神崎「ご飯の後、ひなちゃん自分の部屋に行ってたと思うよ?」
五条「あいつ……」
ドスドスドスッ……
と、こっちに近づいてくる音が。
や、やばい!どうしよっ!
と、ドアから一歩下がると、
ガチャッ——
ビクッ!
ドアが開いて鬼五条が。
ひな「ぁ……あの……」
五条「……聞いてたのか?」
ひな「いや、聞いてはないですけど、わたしのことでなんとなく言い合いしてるような……してないような声は聞こえてまして……」
五条「お前のこと話してたのは合ってる。で、なんでそんな出かける格好してる……?」
ひな「え?な、なんでって、今日はこれから夏樹くんとオープンキャンパスに……」
五条「ちょっと来い」
ひな「え?ちょ、ちょっと……!」
わたしは二の腕を掴まれて、またソファーで先生たちに囲まれた。
そして、五条先生の取り調べスタート。
五条「どういうことだ、今日オープンキャンパス行くって」
なぜか突然すごく怒られてるけど、なんで怒られてるのか全然わからない。
ひな「どういうことって、そのままの意味なんですけど……。行っちゃダメなんですか?」
五条「行って良いかどうかの前に、なんで俺に言わなかった?」
ひな「えっ!い、言いませんでしたっけ……?」
五条「いつ?」
ひな「えっと……」
記憶を辿っていくと、
夏樹くんと約束してすぐにLIMEで言おうと思ったけど、夜に五条先生帰ってくるからその時話せばいいかと思って送るのやめて……
あっ……、それで言うの忘れてた……。
ってことを思い出してしまった。
五条「……ひ~な~?俺に今日オープンキャンパス行くって話したか……?」
ひな「言ったつもりだったんですけど……」
五条「言ったつもり……は、言ってないってことだな?」
ひな「ご、ごめんなさい……」
夏樹「もう、だからちゃんと五条先生に言っとけって言ったのに」
ひな「ご、ごめん」
って、いや、ちょっと待って。
確かに言うの忘れてたけど、それって怒られること?
言うの忘れてました、ごめんなさい。
で済む話だよね?
ということで、
ひな「あの、五条先生。話すの忘れててごめんなさい。でも、そういうことなので行ってきます!15時までには帰ってきますので!」
ソファーを立ち上がると、
五条「待て。まだ行っていいって言ってないだろ!話終わってない!」
と言われた。
いつもならまたすぐごめんなさいってなるのに、なぜか今日のわたしはイラッとして、
ひな「どうしてオーキャン行くのにいちいち許可が必要なんですか……?言うの忘れてたのは謝ったんだからいいでしょ?それで行かせてくれないなんておかしい!!」
って、反論してしまった。
すると、当然五条先生の鬼レベルは上がり、
五条「馬鹿か!!そんな理由で言ってるんじゃない!昨日の今日だから言ってるんだ!!」
ひな「昨日の今日ってなによ!!喘息出たくらいで、今朝は元気じゃん!!」
五条「喘息出たくらいじゃないだろ!喘息なめるな!!それに、心臓もバクバクするってひなが言ったんだろ!!」
ひな「心臓……?なに言ってんの、そんなこと言ったことない!!喘息って言ったかと思えば心臓って言ったり、わたしが覚えてないのをいいことにそんな嘘つかないで!!」
五条「ひなぁ!!!」
ビクッ!!
周りが口を挟む隙もなく2人で畳み掛けるように言い合ってたら、最恐の一喝をくらってしまった。
いろんな言葉を投げつけられるより、ただ名前を呼ばれるのが1番痛い。
これにはさすがにビクッとなったけど、込み上げてくる涙を溢すもんかと、グッと飲み込んだ。
宇髄「五条、ひなちゃん、2人とも一旦落ち着け」
藤堂「ひなちゃん、とりあえず座ろうか」
こういう時、上手くリセットしてくれるのは、やはり頼れる年長者2人。
興奮して言い合って、どうしようもないこの空気を、2人は自然と立て直してくれる。
宇髄先生と藤堂先生に促されてソファーに座り、わたしも五条先生も一つ大きなため息をついた。
宇髄「とにかく順番に話そう。ひなちゃんが昨日のこと覚えてないならなおさらだ。オープンキャンパスどうのこうのの前に、まずは身体のことを話してやらんと」
ひな「身体のこと……?」
宇髄「五条、お前からひなちゃんに話すか?」
五条「いえ……藤堂先生お願いします。ひなにちゃんと聞いてもらわないといけないので、ここは主治医の藤堂先生から」
藤堂「うん、わかった。そしたらひなちゃん、今から少し大事なお話しさせてくれる?」
大事なお話……。
その言葉を前に聞いたのは手術の時だった。
膣の入り口に炎症が起きてるからって、あそこの手術をした。
大事なお話という言葉にはどうも胸がざわつく。
ひな「大事なお話って……よくない話ですよね」
藤堂「うん……残念ながら良い話ではない。でもだからこそ、ひなちゃんにはきちんと伝えるよ。嫌かもしれないけど、しっかり聞いて欲しい」
仮に聞きたくないって言ったとして、一生聞かずにいるのは無理だろうし、五条先生だってまた怒る。
わたしは静かにコクッと頷いて、藤堂先生に向き合った。
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