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不安定な情緒②

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藤堂「ひなちゃん、吐き気はいつから?食欲はどうだった?吐いた回数は?いつ吐いた?他に症状は?」





次から次へと質問する藤堂先生。

わたしは処置室のベッドの上で、点滴に繋がれながら答える。





藤堂「もう、本当になんで早く言わないの……。ひなちゃんが言わなきゃ助けられないでしょ?お薬も忘れず飲んでねって言ったのに忘れるし」


ひな「ごめんなさい……グスン」


藤堂「泣かせたいわけじゃなくて、ひなちゃんを心配してるんだよ」





藤堂先生も五条先生と同じことを。

怒ってて怖いのに優しさを見せつけられて、また涙がブワッと溢れる。





ひな「ごめんなさい……グスン」


藤堂「もう怒ってないから泣かないよ。点滴終わったらまた来るから、ゆっくり休んでてね」





そう言いながら、ぽんぽんと頭を撫でて、藤堂先生は一旦出て行った。





ひな「グスン……グスン……」


五条「もう泣くな」


ひな「うぅ……ごめんなさぃ……」





五条先生は今日お休みだったらしい。

なのに、病院に連れて来てもらったから休みをつぶしちゃった。

それも申し訳なくて涙が止まらない。





五条「どうせ家にいるつもりだったんだ。休みの日にひなとこうして一緒にいれるんだからいいだろ?」


ひな「うぅ……わたしが悪いから優しくしないで……」


五条「なに言ってんだ。鬼の俺の方が好きなのか(笑)?ほら、もう大丈夫だからちょっと寝ろ」





そう言って頭を撫でてくれる五条先生の手が心地よくて心地よくて。

目を閉じて少しの間眠りについた。










***



*五条side





藤堂「あら、ひなちゃん寝ちゃったの」





数十分後、ひなの様子を確認しに藤堂先生が来てくれた。





五条「えぇ。少し前までぐずってましたけど。ひな生理になるといつも情緒不安定なんです」


藤堂「なるほど。それでずっと泣いてたのね。俺、今日はそんな叱ってるつもりないのにな~と思ってたんだ」


五条「前に生理来た時も、ちょっとしたことでずっと泣いてたので。なんでも大袈裟に感じるんだと」


藤堂「そっかそっか。まだ生理に慣れてないから、気持ちのコントロールも上手くいかないんだろうね。で、ひなちゃんの結果持ってきたんだけど……」





と、検査結果を見せてもらうと、





五条「薬が合わなくなってるんですか……」


藤堂「うん、そうみたい。薬飲み忘れた日は大丈夫だったって言ってたし、間違いないと思う。ただ、ひなちゃん他の鉄剤も合わないから、試してあげられる薬があと1種類しかない」


五条「それもダメだったらフェジン打つしかないですよね」


藤堂「そういうこと。注射に通わせるのはかわいそうなんだけどね。ひなちゃん注射嫌いだろうし」





と言う藤堂先生と、スヤスヤ眠るひなの顔を眺める。





藤堂「とりあえず、数日間入院させていいかな。新しい鉄剤飲ませてみて、副作用出ないか確認したいから」


五条「わかりました。そしたら、ちょっと俺ひなの着替え取ってきます。すぐ戻るのでひなお願いしていいですか?」


藤堂「うん。このまま寝かせとくから気にせず行ってきて」


五条「ありがとうございます」










***



*ひなのside



あ……また寝ちゃってた……。



気がついて目を開けると藤堂先生が。





藤堂「ひなちゃん、おはよう。起きた?」





あれ……?

五条先生がいない……





ひな「五条先生は……?」


藤堂「今、ひなちゃんの着替え取りに帰ってるよ。もうすぐ戻って来ると思う」


ひな「着替え……?それってまさか……」


藤堂「うん。たぶん当たりなんだけど、数日間入院になったからね」


ひな「また入院って……なんで?どうしてですか……?」


藤堂「吐き気を起こしてた原因がわかってね。今飲んでもらってる貧血の薬が、ひなちゃんの身体に合わなくなったんだ。だから、次の新しい薬がひなちゃんに合うかどうか試すために、少しだけ入院しよう」


ひな「気持ち悪かったの、生理が原因じゃなかったんですか……」


藤堂「うん。今回は薬が原因だった。だから、入院して新しいお薬試そう」


ひな「そんな……」





退院してから半年も経ってない。

なのになんでまた入院になるの?

なんでわたしの身体ってこんなんなの……





ひな「入院はしません……グスン」





泣きたいわけじゃないのに涙が出る。

悲しいんじゃなくて、なんかこんな身体の自分が腹立たしくて、感情がたかぶっちゃう。





藤堂「ひなちゃん……」


ひな「なんで楽しく過ごしてるのにこうなるの?いつもいつもなんでなの!?」





藤堂先生に言っても仕方のないことだってわかってるのに、イライラしちゃってどうしようもない。

するとそこへ、五条先生が家から戻ってきた。





五条「ひな、何泣いてんだ。どうした?」


藤堂「どうしたじゃないよ!なんで着替え取りに行くの!?なんで家に連れて帰ってくれないの!!」


五条「落ち着けって。入院するのにパジャマいるだろ。今回はそんなに長くならないから」


ひな「長いとか短いとか関係ないよ!家に帰してよ!!なんでこんな身体なの!?なんでわたしを置いて家に帰るの!?なんで起きたらいなかったの!?もうやだ!!うわぁ~ん……」





さっきから1人で怒って1人で泣いてる。

支離滅裂なことばっかり言って、自分でも何にイライラして怒ってるのかわからない。

そんなわたしを五条先生の大きな体がすっぽりと包み込んでくれた。





五条「ごめんごめん。寂しかったな、寝てる間にどっか行って悪かった。ごめんな」





わたしが勝手にイライラしてるだけなのに、五条先生が謝ってぎゅってしてくれて、五条先生の匂いがして、頭を撫でてくれる手が大好きで、イライラするのにうれしい。

もう、何がどうなってるのかわかんないよ……





ひな「ヒック……うぅ……五条せんせぇ……ヒック、ごめんなさぁい……グスン」


五条「今度はなんで謝るんだよ。ひな今なんで泣いてるか自分でもわかってないだろ?こういう心も頭もぐちゃぐちゃになった時は深呼吸するんだ。ほら、落ち着くぞ」





と、五条先生はわたしを抱きしめたまま、背中をさすって頭を撫でてくれて、わたしが落ち着きを取り戻すまでに30分くらいずっとこうしてくれてた。


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