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言葉の刃①
しおりを挟む~小児科医局~
藤堂「おかしい……いろんなことがおかしい。悠仁もそう思うよね?」
藤堂先生がかなりピリついてる。
医局に戻ってきて黒柱会議。
今日のひなのことをみんなに報告したんだが、穏やかな藤堂先生がここまで語気を強めるなんてそうそうない。
でも、ひなを思うと俺も同じ気持ちだ。
五条「はい……。ここ数日のことは、俺も何か変だと……」
宇髄「具体的に聞かせてくれるか?」
五条「例えば、さっき話したひなが"汚れてる"と言ったこと。そんな言葉をひなが知ってたとはどうしても思えなくて。誰かに言われたんじゃないかと思うんです……」
神崎「確かにそうだけど、でも、誰がひなちゃんにそんなことを?」
藤堂「……姫島さんじゃないかな」
藤堂先生が冷たく言い放つ。
工藤「姫島?どうして?」
宇髄「心当たりがあるんだな?」
藤堂「はい。いろいろありますが、順に話すとまず一つ。姫島さん、ひなちゃんに薬飲ませてなさそうです」
「「え?」」
五条「藤堂先生、どういうことですか?」
藤堂「悠仁に連絡する前、ひなちゃんの部屋には手付かずのご飯と食後の薬が置いてあった。でも、悠仁と屋上から部屋に戻った時は、その薬が無くなってたんだ。あの時、部屋にいたのは姫島さんだったよね?彼女が取ったんじゃないかな」
神崎「え、なんで?わざわざそんなことします……?」
藤堂「いろいろ話が繋がるんだ。さっき言った通り、俺がひなちゃんの部屋に行った時には、手付かずのご飯と薬があった。ご飯は看護助手が運んだのかな。その時ひなちゃがいなくても、トイレかなと思うくらいだろう」
五条「でも、薬は姫島が持って来たとしか考えられない。となると、姫島は藤堂先生よりも早く、ひながいないことに気づいてた……?」
藤堂「そう思ってる。ひなちゃんがいないとわかってたけど、気にも留めずに薬を置いたんだろう。でも、周囲が騒ぎ出して気づいたんだろうね。薬を置いてるとまずいって。で、戻ってみたらタイミング悪く俺たちと鉢合わせたから、あたかも今いないことに気づいたように振舞ってたんだろう」
工藤「ん?ちょっと待って、ストップ。ごめん、今の話もう1回。藤堂先生、ひなちゃんの部屋には"薬"が置かれてたの?」
藤堂「うん、そうだよ」
工藤「ゼリーは?ひなちゃん、ゼリーなしで薬飲めなくないか?」
藤堂「ご明察。俺はそれで、姫島さんが薬を飲ませてないって判断したんだ。ひなちゃんに薬を出す時は必ずゼリーとセット。ひなちゃんが水だけで飲めるなんて思えない。もしそうなら、あの子は飲めるようになったことを誰かに話すはずでしょ?」
工藤「まさか……」
藤堂「そのまさかだよ。きっとこの数日間、姫島さんはひなちゃんに薬しか渡してなかった。その薬をひなちゃんか姫島さん、どちらがどうしたのか知らないけど、飲んではないと思う」
神崎「それで今朝の血液検査の結果だったんだ……」
宇髄「やるな、工藤。今の話でよく気がついた。もちろん、藤堂も」
藤堂「他にもまだあるんです。そもそも、彼女にはひなちゃんを注意深く見ておくように、起きたら連絡するようにって伝えてありました。なのに、俺と悠仁がひなちゃん連れて帰るまで、連絡一つよこしてない時点でおかしい。点滴だって抜けてたのに、あの様子じゃ気づいてないです」
工藤「確かに。なんか、昔から脱走した夏樹に気づくのも、いつもまこちゃんだったし。姫島は担当の子ちゃんと見てないのか?」
五条「あっ……」
そういえばひな……
宇髄「なんだ、五条。気になることは間違っててもいいから話してくれ」
五条「そういえば、屋上からひなを抱いて部屋に戻った時、ひなが一瞬ピクっと身体震わせて、俺の白衣をギュッと握ってきたんです。もしかするとあれは、姫島に怯えての反応だったのかも……って」
神崎「思い返すと、ひなちゃんの調子が悪くなり出したのも、まこちゃんいなくなってからですね」
藤堂「動機は検討もつきませんが、俺は彼女がひなちゃんにしたことは全て故意だと思ってます。きっと、ひなちゃんに何か暴言も吐いたんだと」
宇髄「そうだな。五条への気持ちに気づいたせいかと思ってたが、それだけじゃ腑に落ちないことが確かに多い。ただ、姫島に指導するにしても、全てミスでしたと片付けられたら……俺は納得いく話でないんだがな」
それは、ここにいる全員そう思ってる。
こんなの、不注意によるミスだけじゃない。
これだけ話が繋がるんだ、故意でやったに決まってんだろ……。
藤堂「まぁ、本人に聞いたところで本当のことなんて話さないでしょう。薬の件も、記録上は飲んだことになってるので、飲ませてない証拠はありませんし」
宇髄「そうだよな。とりあえず、師長には俺から話しだけしとく。姫島にも話を聞きたいが、それはまた考えよう」
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