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汚れた身体②
しおりを挟む*ひなのside
お昼ごはんの時間。
この後のことを考えるとすごく憂鬱。
とにかく姫島さんに会いたくない……
そして、ご飯が終わって薬の時間。
姫島「あれ?あんた朝より残してない?」
姫島さんのせいで食欲出ないだけなのに……
ひな「ごめんなさい……」
姫島「はぁ、薬はどうする?飲む?飲まない?」
飲めないってわかってるのにそんな聞き方……
ひな「ゼリーがないなら飲まなくていいです……」
姫島「あらそ。てかあんたってさ、黒柱にちやほやしてほしくてそうするの?」
え……?
姫島「ゼリーがないと薬飲めないとか、ご飯全部食べれないとか、ちやほやしてもらいたいから、わざとか弱い女の子演じてるんでしょ?」
は……?どういうこと……?
ひな「あの、姫島さんの言ってることが意味わかんないんですけど?」
姫島「は?」
しまった……面倒くさいのに口答えしちゃった。
姫島「先生たちに可愛がられたいんでしょって言ってんの。だから、宇髄先生の治療も途中で喘息出して、何回もやり直しにしてるのよね」
え、なに言ってるの……?
この人、本気でそんなこと思ってる……?
ひな「そんなわけないじゃないですか……」
姫島「そんなわけあるでしょうが。だって、あんたに何かあれば黒柱はみんな構ってくれるんだから。いつも見ててムカつくのよね」
ひな「あの、さっきからなんでそんなこと言うんですか。意地悪もしてくるし、わたし、あなたに何かしましたか?」
姫島「だから今言ったでしょ?あんたがムカつくからよ。なんの努力もせずに偶然この病院に来ただけなのに、黒柱に可愛がられて、特別扱いされてるから。あんたみたいな汚れた女が黒柱に近づかないで欲しいわけ」
ひな「けがれた……?」
姫島「汚いって意味よ。あなたの身体は汚れてるの」
ちょっと待って……
なんで、そんなこと言われなきゃいけないの?
五条先生が綺麗にしてくれた身体なのに、なんでそんな酷いこと……
ひな「いい加減にしてよ……なんてこと言うの……」
姫島「だって、事実じゃない。先生たちもみんな知ってる事実でしょ?」
ひな「何が事実なの?嘘ばっかり言わないで……。五条先生が綺麗にしてくれたの。残った傷もあるけど、全部綺麗にしてくれたの。わたしの身体は、もう汚くなんかないから」
姫島「嘘?嘘なんかついてないし、てかそういうことじゃないし。日本語わかんないなら黙っててくんない?先生たちから聞かされてないのね」
ひな「何のこと?」
姫島「はぁ、仕方ないから教えてあげるわ。あんた、昔親に襲われたでしょ。小さい頃のことは覚えてない?」
……覚えてないわけないじゃん。
なんで、なんで今その話するの……?
そのこと忘れて過ごしてるのに、なんでまた思い出させるのよ…………
ひな「もちろん覚えてますよ。たくさん殴られたしたくさん蹴られたし……。あんなことそう簡単に忘れるわけない。でも、思い出さないようにして生きてるんです。忘れようとしてるんです。なのに、なんで思い出させるんですか……」
姫島「あのさぁ……あんたって純情ぶってんのかと思ってたけど、もしかして本当にただの馬鹿?襲われるの意味違うんだけど?」
ひな「え?」
姫島「あぁ、馬鹿と喋るの本当にめんどくさいわ。襲われるってセックスって意味よ」
……セッ……クス………?
セックスって、エッチのこと……だよ、ね……?
赤ちゃんを作るときにする行為で、好きな人と愛を深める行為のこと言ってる、よね……?
ひな「なに言ってんの……なんで、わたしがあの人とそんなことするの……?そんなこと、わたしがするわけないでしょ……!?するわけないじゃん!!なんなのよ!!!」
姫島「うるさいなぁ。ちょっと落ち着いたら?またお得意の発作出したいわけ?って、あんたまさか、セックスがどういうのかもわかってない?」
どういうのって……そんなこと言われても……
姫島「セックスはあそこにチンコ挿れるでしょ。あそこって膣のこと、宇髄先生に指入れられる場所。さすがにチンコはわかるよね。そこにチンコ入れられて、痛くて血がいっぱい出たことなかった?」
……嘘
って、言って……?
お願いだから、誰か嘘って言ってよ……。
小学生の時、一度だけあった。
酔ったあの人に馬乗りにされて、ズボンとパンツ脱がされて、怖くて怖くてわけがわからなくて、死ぬかと思うくらい痛かった……。
血も出たよ……しばらくずっと。
直感的に、殴られたりするより酷いことが起こってるって思った。
だからだったんだ……
あれは、そういうことだったから……。
姫島「思い出した?あったでしょ、そんなこと。手術することになったのもそのせいよ。あんたの処女膜は元々塞がってたのに、無理矢理チンコ入れられて破られたから後遺症が残ったの。だから、生理で痛くなって手術しなくちゃいけなくなったの。先生たちは襲われたせいだってわかってたと思うけど、手術の時に聞かされてなかったのね」
もちろん知らなかった……。
そんなこと知らなかった、一生知りたくもなかった。
先生たちが言わなかったのは、きっとわたしのこと考えてくれたから。
なのに、どうして……
姫島「だからあんたは汚れてるのよ。かわいそうにね。知らない間に親に汚されて傷つけらるなんて。あんたの好きな五条先生も、その身体のこと本当はどう思ってるのかしらね」
もう全部、全部終わってたのに。
あの人のことは、もう全部終わったことなのに……。
久しぶりに聞いたあの人のこと。
忘れてたのに、よりによって1番思い出してはいけなかった記憶が、思い出された気がする。
身体の芯から震え上がるあの恐怖。
あの時の痛みや感覚が思い出される。
だけどもう、悲しいとかショックとか怖いとか全部通り越した。
そんな言葉で言い表せないくらいの衝撃。
姫島さんからどんな言葉を浴びせられても、ただただ生理的に、目から涙が溢れかえるだけ。
***
コンコンコン——
藤堂「ひなちゃん、吸入行こうか」
夕方より少し早いくらいに藤堂先生が来た。
わたしはドアに背を向けて、布団をすっぽり被ってる。
藤堂「ひなちゃんどうしたの?しんどくなっちゃった?」
藤堂先生にそっと布団をめくられる。
藤堂「ひなちゃん……?その目どうしたの……」
泣きすぎて開かないほど腫れあがったわたしの目を見て、藤堂先生は少しびっくりしたみたい。
そして、頭にそっと手を乗せてくれたけど、
ビクッ……
ひな「触……らない、で……」
か細く震え上がった声でそう言うのが精一杯だった。
藤堂「ひなちゃん……」
藤堂先生が嫌なんじゃない。
でも、わたしの身体は汚れてるから。
こんな身体、藤堂先生の綺麗な手で触らないでほしい。
もう誰にも……触らないでほしい、見ないでほしい……。
藤堂「また、ご飯の後に来ても大丈夫かな?とりあえず来るから、嫌ならその時にまた教えて」
よっぽど何かあると思ってくれたのか、藤堂先生は珍しく何も聞くことなく、静かに部屋を出てわたしをひとりにしてくれた。
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