ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜

不穏な予感①

コンコンコン——


真菰「ひなちゃん、おはよう」


ひな「おはよう、まこちゃん」


真菰「今日は調子良さそうだね。はい、体温よろしくね」





と、体温計を受け取って脇に挟む。





真菰「あ、忘れないうちにひなちゃんに言っておこう」


ひな「なに？」


真菰「ごめんね。明日からわたし5日間いないの」


ひな「えっ……？まこちゃんいないの……？」


真菰「うん、研修に行かなくちゃいけなくてね」


ひな「5日間も！？」


真菰「そうなの、大変でしょ？わたし看護師になって今5年目なんだけどね、5年目の看護師は全員受けないといけない研修があるんだ」





そんな……

5日間もまこちゃんがいないなんてどうしたらいいの？





真菰「わたしが研修の間は、代わりに姫島さんって覚えてるかな？夏樹くん担当してた看護師さんが来てくれるからね」


ひな「うん……わかった……」





けど、まこちゃんがいない5日間、このイレギュラーな日常はなんだか嫌な予感がする……。











＊＊＊



——翌日





コンコンコン——


姫島「おはよう」


ひな「おはようございます」





朝、ご飯を食べ終わると姫島さんが来た。

初めて話すから緊張する。





姫島「今日からよろしく。はい、これ今朝の薬ね」





と薬を渡されたけど、いつものゼリーがない。





ひな「あの、すみません。ゼリーは？」


姫島「え？ゼリー？」





あ、まこちゃんから聞いてなかったのかな？





ひな「お薬飲むゼリーです。ゼリーでいつも飲んでたんですけど……」


姫島「は？もう高校生なのにゼリーなしで飲めないの？」





え……？

こ、怖い……。なんでそんな威圧感すごいの……？

どうしよう、5日間もまこちゃんいないのに、もうこの人ちょっと苦手……。





ひな「ご、ごめんなさい……飲むの下手で」


姫島「そんなんじゃみんなからバカにされるわよ？ゼリーなしで飲みなさいよ」





……そう、だよね。

普通はみんなお水だけで飲むんだもんね。





ひな「はぃ……」





と言って、水でトライしてみるけど、飲めない……。





どうしよう、飲み込めずに口に残っちゃう。

苦くなる前に早く飲み込まないと！





ｺﾞｸｯ……





ひな「ｯｹﾎ！ｹﾞﾎｹﾞﾎｯ！」





頑張って飲もうとしてたけどどうしてもダメで、結局薬を吐き出してしまった。





姫島「ねぇ、本当に飲めないの？それともわざと……？」





え……？

姫島さん、どうしてそんなこと言うの……。





ひな「わ、わざとじゃないです……」


姫島「あらそう。それは悪かったわね。でもまぁ、もうすぐ藤堂先生来るし飲めないなら飲まなくていいわ。はい、熱測って」





って、薬を1つも飲むことなく体温計を渡された。





ひな「え……？でもお薬飲まなきゃ……」


姫島「どうせ飲めないでしょ？この薬が必要な人は他にもいっぱいいるんだから、無駄にしないで」


ひな「ご、ごめんなさい……」





結局、それ以上怖くて何も言えなくて、大人しく体温を測った。

そして血圧も測られるけど、なんというか、腕をグッと引っ張られたりすごく雑。

まこちゃんみたいに声をかけてくれることもないし、ずっと怒ってて機嫌悪いみたい。








コンコンコン——


藤堂「ひなちゃん、おはよう」


ひな「おはようございます……」





血圧が測り終わると同時に、藤堂先生がやって来た。





藤堂「あれ？ひなちゃんどうしたの？元気ない？」


ひな「い、いえ。大丈夫です……」


藤堂「本当？嘘ついてない？」





ｷﾞｸｯ……





藤堂先生すぐ気づくんだから……

でも、お願い、今は見逃してよ……



あ、そうだ。

今日治療あるんだったよね、それ言い訳にしよ！





ひな「ち、治療が緊張して……」


藤堂「そっか。緊張しなくて大丈夫だよ。姫島さん、体温と血圧は？」


姫島「血圧が107/68、体温は36度です！(ｷﾗｷﾗ)」





嘘でしょ……

さっきまであんな怖かったのに、なんで突然めっちゃ笑顔で声も高くなってるの？





藤堂「うん、ありがとう。問題ないね。ひなちゃん、聴診するね」


ひな「は、はい……」





あぁ、なんかすごく嫌。

姫島さんに身体見られたくない。





そう思ってチラッと姫島さんを見ると、藤堂先生の後ろでめっちゃ怖い顔してる。





この人には、逆らっちゃいけないんだ……。





そう思いながら、渋々ボタンを外して前を開けた。

姫島さんが怖くて緊張しちゃうけど、バレないように頑張って深呼吸した。





藤堂「ひなちゃん、今日の治療は15時からね。宇髄先生が迎えに来てくれるからね」


ひな「はい……」





と、朝の回診が終わり、ようやく姫島さんから解放された。










＊＊＊



お昼ご飯の後、姫島さんが薬を持ってやってきた。





姫島「はい、昼の分」





って、またゼリー持ってきてくれてない……。





ひな「あ、あの……」


姫島「何？」





うっ……めっちゃ睨まれる……。





ひな「す、すみません。なんでもありません……」


姫島「そ、なら早く飲みなさいね。あ、それと15時から治療よね。楽しんでね」





と、不敵な笑みを浮かべて、姫島さんは部屋を出て行った。





楽しんでねって……何？

普通頑張ってねとかだよね？

なんで楽しめると思ったの……？