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2度目の治療①
しおりを挟むそして数日後、2度目の治療の日。
はぁ……やりたくない。
どうしてもやりたくない……。
朝ご飯を食べて、回診も終わって、治療までじっとベッドの上で窓の外を眺める。
12月下旬の外はシンシンと雪が降り始めて、そんな雪を見てるとわたしの心もシンシンとしてくる。
ひな「ほんとに、やりたくない……今日はどうしても無理……」
ひとり病室のベッドの上で呟いてみる。
でも、例えひとりでも、こうして口に出してしまったが最後。
わたしはパジャマの上にカーディガンを羽織り病室を出て、そのまま屋上へと向かった。
ひな「うっ、寒っ!!」
久しぶりに来た屋上。
夏樹くんと来たのは中学2年生の頃で、初夏だった。
でも今は冬。
しかも雪がちらついてて、パジャマにカーディガンじゃバカにみたいに寒い。
でも、せっかく来たし、病室に戻ったら治療に連行されるし……
と、夏樹くんと座ったコンクリートの段差にひとり腰掛けた。
なんかここ懐かしいな。
ノワールに来てからもう2年経つのか……
年が明けて2年生になれば、もう丸3年なんだ。
前ここに座った時は喘息と貧血だったのに、なんか病気増えちゃってるな。
背は伸びて体重も増えたのに、夏樹くんだってもう元気しかなくてなんともないのに、わたしはなんでかな……。
ひな「はぁ……」
と、ため息をついた息が真っ白。
もう1ヶ月くらい外に出てなかったから、息も真っ白になる季節に。
ひな「ハァ~」
と、もう一度息を吐いて、白い息で遊んでみる。
小さい頃は不思議だったな。
寒くなるとなんで息が白くなるんだろうって、ずっとこうやってハァ~ってしてた気がする。
ひな「ハァ~……」
そんなこと考えながら息を吐いて遊んでるうちに、いつの間にか白い息は見えなくなって、真っ暗な世界に入ってた。
***
*宇髄side
コンコンコン——
宇髄「ひなちゃ……」
……いない。トイレか?
いいや、待て。
胸がざわついて、嫌な予感しかしない。
まさか逃げられたか……?
俺は病室を飛び出し、医局に向かった。
宇髄「まこちゃん!ひなちゃんトイレいないか見て来て。いなくなった」
真菰「えっ……?わ、わかりました!」
まずは手前のナースステーションでまこちゃんに声をかけ、そして藤堂に電話をかけながら、小児の医局に入る。
"プルルップルルッ……"
コンコンコンッ——
ガチャッ——
藤堂「はい、藤堂です」
五条「宇髄先生?」
神崎「宇髄先生?」
宇髄「ひなちゃんがいなくなった」
「「え?」」
目の前では五条と神崎が、電話越しに藤堂が、全員声を揃える。
そして、スマホの通話をスピーカーにした。
宇髄「今まこちゃんがトイレ見に行ってくれてるがいないと思う。勘だが逃げたんだろ。久しぶりに」
するとそこへ、
真菰「宇髄先生!ひなちゃんトイレにはいませんでした……」
宇髄「やっぱりな。屋上か。五条、一緒に来てくれ」
五条「はいっ!」
宇髄「藤堂、まこちゃんとすぐ処置できるように準備しとけるか?忙しかったら神崎に」
藤堂「大丈夫です。すぐそっち行きます」
宇髄「神崎は工藤にも情報共有しといてくれ」
神崎「わかりました」
宇髄「行くぞ、五条」
と、五条と一緒に屋上へ急いだ。
***
*五条side
ひな、お前何してんだよ……
宇髄先生は迷わず屋上にいると判断した。
治療が嫌で逃げたなら、確かにひなが行くのは屋上しかない。
でも、今日は外雪だぞ……
ざわつく胸に何事もないことを祈りながら、宇髄先生と階段を駆け上がり、屋上の扉を開ける。
五条「ひな!!」
でもやっぱり、この世界で祈りなんてもんは、そう簡単に届かない。
屋上の冷え切った空気に、冷え切ったコンクリートの上で、ひなは横たわってた。
宇髄「ひなちゃん!ひなちゃん!!」
ひな「ハァハァ……ハァハァ……」
宇髄先生がペチペチと頬を叩くが反応がない。
10分くらいここにいたのか、身体がかなり冷えてる。
宇髄先生がひなを抱き上げ、急いで処置室に運び込んだ。
五条「ひな!おい、ひな!!何寝てんだ起きろ!!」
ひなの手足は氷みたいに冷たい。
それをまこちゃんと湯たんぽを当てて必死に温める。
宇髄「熱は?」
藤堂「37度7分です」
五条「手足がこんな冷えてるのにもうそこまで……」
宇髄「まだまだ上がるぞ、これは」
藤堂「心音は大丈夫そうですが、喘鳴が酷いです。まこちゃん、酸素と点滴用意して」
真菰「はい!」
喘息も貧血も良くないし、お腹に分泌液も溜まってるのに、今こうなるとかなり危ない……。
五条「ひな!!いつまで寝てんだ起きんか!!おい、ひな!!」
再び頬を叩いてみると、
ひな「ん……ヒューヒュー、コホッ……ヒューヒュー……ハァハァ……」
五条「ひな!?ひな、わかるか?」
なんとか気づきはしたようで、うっすら目を開けてくれた。
ひな「ハァハァ……ゴッ……ヒューヒューッ……ゴジョ、セン……ゴホゴホッ……ハァハァ、ハァハァ、ヒューヒュー……ハァハァ……」
藤堂「ひなちゃんマスクつけるよー」
藤堂先生に酸素マスクをつけられて話せなくなったひなは、うっすら開けた目の隙間から必死に俺を見つめてくる。
五条「お前はバカか!しんどくなるに決まっとるだろが!こうなることがわからんかったか!?」
と言うと、ひなの目から涙が溢れた。
ひな「ハァハァ、ヒューヒュー……ゴホッ……、ハァハァ……ヒューヒュー……」
宇髄「五条、叱るのは一旦後にしてやれ。元気になったらいくらでも叱ってやったらいい」
五条「……すみません」
もう咳もあまり出ないほどに喘鳴が酷く、ひなはただ苦しそうに胸をヒューヒュー言わせてる。
そして、処置を終える頃ひなはまた眠りについて、病室のベッドに連れてきた。
~小児科医局~
医局に戻ると、工藤先生も来て黒柱が集合。
工藤「お疲れ様です。ひなちゃん、大丈夫でしたか?」
宇髄「ダメだ。高熱と喘息の悪化で1週間は寝込むだろ」
神崎「なんでまた……」
藤堂「どうして逃げちゃったかなー……治療しばらくできなくなりましたね」
宇髄「まさか逃げるとはな。治療が嫌なのはわかってたが、ちょっと油断したか」
五条「すみません。先生方にご迷惑かけっぱなしで」
宇髄「いや、ひなちゃん頑張ってたんだ。突然気持ちがしんどくなったのかもしれん。まぁ、治療が伸びたし、身体も自分で痛めつけたんだ。そこは叱らんといかんが、ひなちゃんの話もちゃんと聞こう」
五条「はい……」
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