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定期健診①

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そして、6月になって定期健診にやって来た。





藤堂「ひなちゃん、こんにちは」





診察室に入ると、今日もキラキラの藤堂先生が素敵な笑顔で迎えてくれる。





ひな「こ、こんにちは」





定期健診はいつも緊張して来てるのに、こんなキラキラ笑顔で迎えられると、自分の中で緊張とほわほわな気持ちがぶつかって変な気持ちになる。





藤堂「どうぞ、座って」





と言われて、藤堂先生の目の前に腰を下ろす。





藤堂「今日すごくジメジメして蒸し暑いでしょ。学校で気分悪くなってない?」


ひな「はい。大丈夫です」


藤堂「うん。それならよかった。そしたら……」





と、自然な流れでまずは問診から始まる。





藤堂「前回の健診は健康診断のすぐ後だったね。その後は何か具合が悪くなったとかなかったかな?」


ひな「はい。ありません」


藤堂「梅雨で雨の日もかなり多いけど、喘息も出てない?」


ひな「はい」


藤堂「雷の日は泣かなかったかな?」





え!?

な、なんでそんな質問を……

もう、藤堂先生も時々こういうとこあるんだよね。





藤堂「な、泣いてないです。冗談はやめてください」


藤堂「ははっ。ごめんごめん。ひなちゃん、僕の健診3回目なのに緊張してるみたいだからさ。そしたら、特に変わったことはなかったでいいかな?他に伝えておきたいこととかも大丈夫?」


ひな「はい。大丈夫です」


藤堂「うん。そしたら聴診させてね」





と言われ、ブラウスのボタンを外し前を開く。





藤堂「はい、深呼吸してー……」


ひな「スー……ハー……スー……ハー……」





藤堂先生の聴診を受けてると、





コンコン——

ガラガラ——





!?





突然、藤堂先生の後ろにあるドアが開いて、五条先生が入ってきた。

そして、なぜか咄嗟にブラウスを閉じて胸を隠してしまった。





藤堂「ひなちゃん?」





勢いよく前を閉じたもんで、聴診中の藤堂先生の手にわたしの手が思いっきりぶつかってしまった。





五条「何やってんだ?」





それを見てた五条先生も、まさに何やってんだ?という顔と声。





ひな「す、すみません……」


五条「聴診中だろ?藤堂先生が聴いてくれてるんだから邪魔するな」


ひな「は、はい。ごめんなさい……」


藤堂「ふふっ。五条先生に見られると恥ずかしかった?」


ひな「いえ、そんなことはないですけど……」





けど、なんで隠しちゃったんだろう……

というのは自分でもよくわからず、もう一度ブラウスを開いて聴診してもらった。

すると、





五条「ん?」





五条先生の低い声が。

藤堂先生のすぐ後ろで、机の上にあるパソコンの画面を見てるけど、なんか五条先生の顔の雲行きが怪しい。





さっき藤堂先生が何か打ち込んでたし、たぶん、その画面にはわたしのカルテが表示されてるよね……?

何……?





藤堂「ひなちゃん、深呼吸しててー。息止めちゃってるよ」


ひな「す、すみません……」





五条先生に気を取られてた。

とりあえず、聴診に集中……



そして、聴診が終わってブラウスのボタンを止めてると、





五条「ひな、藤堂先生にちゃんと言ったか?」


ひな「え?」





何を?

何か言わないといけないことあったっけ……?





五条「その顔は忘れてるな……」


藤堂「うん?僕に何か伝えたいことあった?」


ひな「いや、えっと……」





何だっけ?





五条「メロンパン」





……あ、メロンパン。

そうだった、ダッシュしてたこと言わないといけないんだった。

って、メロンパンって言わなくても……





ひな「忘れてました……」


五条「そんなことだろうと思って来たんだ……ったくお前は何のために健診来てるんだ、早く言いなさい!」


ひな「はい……あの、えっと、月に2回、学校にメロンパンが来て」


五条「メロンパンのくだりはいいから言わないといけないことを端的に言いなさい!」





うぅ……

五条先生がメロンパンって言ったのに~。





藤堂「ふふっ。美味しいメロンパン売りに来るんだよね。知ってるよ。続き聞かせて?」





藤堂先生、優しい。

もう五条先生黙ってて欲しい。





ひな「いつも早く行かないと売り切れてしまうので、昼休みのチャイムが鳴ったら急いで買いに行ってました」


五条「ひ~な~?正確に伝えなさい」





ううっ。

五条先生怖い……





ひな「えっと、その、いつもダッシュしてました」


藤堂「えっ!?」





えっ……

藤堂先生、なんでそんな驚くの?





藤堂「ひなちゃん、高等部になってからいつも?月に2回欠かさずに?」


ひな「はい……」


藤堂「はぁ……それで……」





藤堂先生がため息をついてる……

明らかに顔色も変わった……

キラキラオーラが消えた気が……





藤堂「ねぇ、ひなちゃん」


ひな「は、はい」


藤堂「走っちゃいけないのは知ってるよね?」


ひな「わかってます……」


藤堂「わかってて走っちゃったの?しかもダッシュで?」





優しい王子様の藤堂先生が、

穏やかに包み込んでくれる声が、

消えた……





ひな「ごめんなさい……走っても何ともなかったので……」


藤堂「あのね、ひなちゃん。今まで具合が悪くならなかったのはたまたまだよ。そういうことはちゃんと伝えてくれないと……」





五条先生とは違って優しく言ってくれるけど、藤堂先生内心はすごく怒ってる……





藤堂「そしたら、今日は検査を追加するからね」


ひな「えっ!?そんな、なんで……」





藤堂先生から衝撃的なことを聞いて固まってると、





五条「当然だ」





と、五条先生に追い討ちをかけられる。


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