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メロンパン

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——1ヶ月後





五条「ひな、中間テストの成績良かったな」





今日は五条先生の帰りが早かったので、夜ごはんを一緒に食べて、お風呂に入った後も一緒にソファーでテレビを見てた。

そんな時、突然五条先生に言われた。





ひな「え!なんで五条先生がわたしの成績知ってるんですか!!」





2週間前、高等部に上がって初めての定期テストがあった。

そのテストの結果は、五条先生に見せないつもりもなかったけど、親ではないし見せるものなのかよくわかんなくて1つも見せてない。





五条「聞いた」


ひな「誰に!?」


五条「夏樹」


ひな「えぇ!?」





なんで夏樹くん教えるのよ!

ということは工藤先生も知ってる?

ってか、なんで夏樹くんもわたしの成績なんか知ってんの!?





ひな「なんでそんな情報が漏れ出てるんですか……個人情報の漏洩だと思うんです……」


五条「は?高等部の生徒の成績は開示されてる情報だぞ?ノワールの関係者は全員見れる」





……は?どういうこと?





ひな「どういうことですか?」


五条「高等部は成績上位5人までなら、推薦でノワール国際医科大学に入れるだろ?」





その話は高等部に上がってすぐに聞いたことがある。

学校はノワール国際医科大学の附属だけど、医大ということもあり誰でもエスカレーター式で上がれるということにはなってない。

とはいえ、ノワール医大へ進学したくてノワール学園に入る子も多いし、ノワール学園もそれなりに偏差値は高い。

なので、3年間のトータル成績で上位5人になれば、ノワール医大へ推薦してもらえる。



ただ、この上位5人は希望者のうちということではない。

あくまで、全生徒の上位5人だったらという話なので、上位5人がノワール医大への進学を希望しなければ、推薦者が0の年だってある。



なかなか厳しい世界。





ひな「はい。その話は高等部に上がってすぐ先生から説明がありました」


五条「その推薦なんだがな、学校側だけが被推薦者を選ぶんじゃなくて、受け入れる大学側や、さらにその先の卒業後に受け入れる病院側も、推薦された者が適切かどうか意見を言えるようになってるんだ。だから、医師や看護師、学園と大学の先生なんかには、高等部全生徒の成績が見られるようになってる」





嘘でしょ……

そんな仕組みが出来上がってるなんて、ノワール恐るべし。

って、ひいおじいちゃんが作った病院だけどね……



あれ?

でも、それだとやっぱり夏樹くんに聞いたっておかしくない?

なんで生徒の夏樹くんが見れるわけ?





ひな「五条先生、やっぱり変ですよ。それだと、夏樹くんに聞いてわたしの成績がわかったことの辻褄が合わないですけど……」


五条「さすがに生徒がそんな細かい情報見られないけど、上位30人の名前は学内に掲示されるだろ?その掲示を見て、夏樹はひなの名前があったって言ってきたんで、システム開いて詳しい成績を見に行ったんだよ」


ひな「そんな……学内に順位が掲示されてるなんて知りませんでした……。まぁ、言うほど上の順位でもないと思いますけど」


五条「いや、それなりに頑張ってるぞ。また見てみろ。って、ひなそもそも掲示板ちゃんと見てるか?重要なお知らせもあったりするんだからちゃんと見とけよ。正面玄関入ってすぐのとこにあるだろ」





そんなの一切見たことなかった。

ただの飾りくらいにしか思ってなくてスルーしてた。

ってことはもう黙っとこ……





ひな「わかりました。毎日見るようにします」


五条「あ、ちなみに言っとくと、俺も夏樹とLIME交換したからな。工藤先生経由せず直接聞いたぞ」





それもいつの間にそんなことを……





ひな「そうだったんですね……」


五条「まぁ、俺はひなは最初から賢いと思ってたけどな。途中からノワールに入学して、本当によく頑張ってるよ」





五条先生がすごく褒めてくれてる。

優しい笑顔で頑張ってるなんて言われると、なんだか恥ずかしい。

だけど、もっと頑張ろうって思える。





五条「学校生活の方は楽しめてるか?成績が良いに越したことはないが、高校の3年間は大事な青春だからな。勉強以外も楽しまないと」


ひな「もちろん、毎日楽しいですよ!毎日みんなとおしゃべりしたりして、憧れだったJKライフを満喫してます。でも、本当はもっと体育とかもしたいですけど。みんなみたいに走り回りたくて。ダメですか?」


五条「ダメだ」





うっ……それはやっぱりダメなのね……





ひな「でも、ちょっと走ったくらいじゃ大丈夫なんですよ?あ、知ってますか?高等部の生徒限定で、月に2回、食堂に美味しいメロンパンが並ぶ時があるんです。それはもう争奪戦なので、昼休みのチャイムが鳴ったらダッシュしないと間に合わなくて。だから、いつも友達とダッシュして行くんです」


五条「……ひな、お前それマジか?」





ギクッ……



やばい。

五条先生の顔が一気に変わった。

眉間にシワ寄せてる……



あと、今の声は怒りMAXに程近いよね。

久しぶりに聞いた、ここまで低い声……





ひな「あ、wait! ダッシュはしてなかった!ちょっと早歩きくらいで……!」


五条「……ひ、な、の?」





うわ……

五条悠仁じゃなくなるどころか、五条先生通り越して鬼五条になってる……





ひな「はい……なんですか……」





ぷにっ……





痛っ!





五条先生に思いっきりほっぺたをつままれた。





五条「どれだけ言ったらわかるんだ!そんなに俺に怒られたいのか!?今までダッシュなんかして具合悪くなってないのは奇跡だぞ!!それでだったのか……」





家の中でこんな怒号が……

めっちゃ怖い……

久しぶりにこんな怒鳴られて泣きそう。





ひな「ごめんなさい……もう、ダッシュなんかしません」


五条「ダッシュじゃなくて走るのもダメだ。自分で身体痛めつけてどうする」


ひな「はい。もう走りません……メロンパンは諦めます」





と言うと、五条先生の手が離れた。

つままれた頬を手のひらでスリスリする。





宇髄「メロンパンは俺がたまに買ってやるから。そんなしょぼんとするな。でも、あんな甘いパン月2回は食べすぎだ」





メロンパンはまた食べられるんだ。

でも月2回食べちゃいけなかったんだ。

ムチの後にアメと思えばまた控えめのムチ。





五条「それから」





まだなにかあるの……





五条「来週の定期健診では、そのダッシュしたことをちゃんと藤堂先生に言いなさい。必ずだぞ?」





あ、わかりました……





ひな「はい……」





はぁ……

こんなに怖くなったり優しくなったり厳しくなったり。

五条先生は本当に不思議な人……


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