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健康診断
しおりを挟む——5月下旬
今日は学校の健康診断がある。
午後からは体操服に着替え、健診へ向かった。
1年生は検査内容が多い。
身長体重、尿検査、聴力検査、視力検査、血圧測定、胸部X線、心電図、内科検診、歯科検診、そして、血液検査まで……
ノワール国際医科大学附属、つまり、ノワール国際病院の下にある学校だからか、健康診断が充実し過ぎてる……
わたしにとってはありがたくなくて迷惑。
検査項目が多いので、いろんな教室を回って順番に検査を受けていく。
クラスや女子と男子でも検査を受ける順番がバラバラだったけど、わたしは前半に楽なものが終わって、残るは血液検査と内科検診。
X線撮影を終えてバスみたいな車から降りて、いざ、血液検査の会場へ。
うわっ……
血液検査の部屋に入った瞬間、机に並んで次から次へと採血されてる光景が目に飛び込んできた。
しかも、何か入った小さなビンを3本も渡される。
病院と全然違う……
来月入ったらどうせすぐ定期健診で採血されるから免除にならないかな……
あぁ、本当やだ。
なんて思っても免除になるわけなくて、自分の番が回って来た。
「栗花落ひなのさんですね。採血で気分が悪くなったり、アルコール消毒でかぶれたりしたことありますか?」
アルコールでかぶれる?
そんなこと五条先生や藤堂先生は言ってたっけな……
初めての質問に、頭の引き出しを開けまくって記憶を辿る。
アルコール、かぶれる、消毒、アルコール……
「栗花落さん……?大丈夫ですか?」
先生に言われたことがあったらちゃんと答えなきゃって思って考えてたら声をかけられた。
健康診断だから時間もないし、思い当たることないし、
ひな「大丈夫です」
と答えた。
初めて聞かれたことに気を取られてて、気分が悪くなったことがあるかという質問は完全にスルーをして……
「はい、では採血しますね~」
と、手際よく準備されて、
「少しチクッとしますね~」
と言われて、
痛い……
で、
気持ち悪い……
グラッ……
「あわわわわ!大丈夫ですか!?」
先月の定期健診で採血した時と同じ。
グラッとして椅子から倒れ落ちた。
その場の医療スタッフは皆大慌て。
後ろの順番待ちにいる何人かのクラスメイトも、
「「栗花落さん大丈夫!?」」
って言ってる。
大丈夫ではない。
吐きそう……
この場には男性もおらず、わたしは数人掛りで部屋の中に用意されてた簡易ベッドに運ばれた。
「栗花落さん!わかりますか?気分悪いですか?」
わたしは頷くので精一杯。
とりあえず、吐きそうで喋れない。
「どうしましょう!とりあえず、血圧測ります!」
「そうね!あ!隣の部屋で内科検診してるんじゃないっけ!?先生捕まえられるかも!」
という会話がぼんやり聞こえながら、こんなところで吐かないように必死に堪える。
そんなことしてる間に、意識の方が先に飛びそうだった。
「ひなちゃん!ひなちゃん!」
突然、聞き覚えのある声で呼ばれてうっすら目を開けた。
あれ、宇髄先生が何でこんなところに……
宇髄「ひなちゃん吐きそうか?」
は、はい。
もう吐きそうなんですずっと……
ひな「コクッ……」
宇髄「君、袋でもバケツでもなんでもいいから持って来て!」
女性「はい!」
と、女の人が袋を持って来てくれて、
ひな「オェッ……ゲホゲホッ……オェッ……ゲホッ、ハァハァ……」
身体を起こす間もなく吐き出した。
学校でこんなことになるなんて最悪。
出るものを出し切って息を切らしてると、
宇髄「ひなちゃん、ちょっと胸ごめんな」
と、背中をさすってくれてた宇髄先生が、体操服の隙間から手を入れて聴診し始めた。
ひな「宇髄先生、ハァハァ……なんでここに……」
宇髄「隣で内科検診担当してたんだ。工藤先生もいるぞ」
そうだったんだ……
って、まさか先生たちが健康診断に来てるなんて。
まぁでも、ノワールの学校なんだから、ノワールの先生が来るに決まってるか……
ということは、今日いろんな検査でいた先生は、みんなノワールのお医者さんってこと?
知らない先生ばっかりで気づかなかったな。
だけど、内科検診になんで外科医……
まぁ黒柱だからなんでもできるんでしょう。
それよりなにより……
ひな「よかった……」
宇髄「ん?よかった?」
ひな「五条先生がいたら怒られそう……また座ったまま採血して倒れちゃって……ハァハァ……」
宇髄「ははっ、そういうこと。……って悪い。さっき言わなかったが五条先生も来てる。てっきり聞いてたのかと」
ひな「えぇ!?」
宇髄先生、さっきの感じはもう五条先生来てる感じじゃなかったじゃん……
工藤先生と2人なんじゃないの?
五条先生もなんで言っといてくれなかったの……
宇髄「ひなちゃん、それよりまずは呼吸を整えようか」
いや、無理です。
内科検診の状況がわからないけど、五条先生絶対こっち来るよね?
ひな「ハァハァ……五条先生は……ハァハァ……今、隣の部屋ですか?」
五条「ここだぞ」
ビクッ!
あぁ、来た。
やっぱり、来た。
思ったより早かった。
ひな「ごめんなさい……ハァハァ、アルコールが、聞かれて……ッハァ、かぶれるって、わかんなくて……ハァハァ……ベッドでしてって、忘れて、倒れました……ハァハァ」
もう100%怒られるので、大人しく白状する。
五条「そんなことはもう聞いとる。とりあえず落ち着け。呼吸が出来とらん。無理に喋らなくていいから」
とかなんとか言いながら、五条先生はわたしのおでこに手を当てながら手首を掴んで脈を測る。
いつも思うけど、なんで採血で倒れたらおでこ触るの?
五条「発熱するんだよ。採血でいつも緊張し過ぎだ。だから倒れやすくもなる。それに、採血でなくてもお前はなんでもすぐ熱出る」
あ……出た。
何も言ってないのに答えてくれるやつだ。
ひな「教えてくれてありがとうございます……」
そのまま、宇髄先生と五条先生に見守られながら、しばらくじーっと深呼吸。
10分くらい経ってやっと落ち着いてきた。
宇髄「ひなちゃん、そろそろ落ち着いたかな?」
ひな「はい。もう大丈夫です」
宇髄「よし。そしたら、採血だけ終わらそうな。内科検診はここでしたことにしとくからな」
ひな「ありがとうございます……すみません……」
ということで、なぜか宇髄先生が採血してくれて、内科検診は実質免除。
そして、帰りは五条先生と一緒に帰ることになって、着替えて五条先生の車に乗って家に帰った。
家について、そういえば五条先生があんまり怒ってないなと不思議に思って、
ひな「あの、五条先生、ごめんなさい……また採血で倒れて……」
自分から謝ると、
五条「ひな、何か隠してることあるだろ」
え?隠してるって……?
ひな「何もないですけど……」
五条「生理になってるだろ?なんで言わなかった」
あ……
ひな「そういえば、体操服に着替える前にトイレ行ったらなってました」
五条「生理が来たらちゃんと言うように言っただろ?それでさっき吐くほど気分悪くなったんだ。痛いとこはないのか?」
あれ……
生理来たらすぐに五条先生に伝えるって約束忘れてたのにそんな怒ってない。
それより、心配してくれてるみたい。
ひな「はい、今はそんなに痛くないです」
五条「そうか。これから痛くなるかもしれないから、着替えて鎮痛剤も飲んどいて、今日はゆっくりしときなさい」
五条先生に言われた通り、着替えて鎮痛剤を飲んで、部屋のソファーで本を読みながらのんびり過ごした。
そして、早めに鎮痛剤を飲んだおかげか、少し身体がだるいなくらいで、今回の生理は特にお腹が痛くなったりすることもなく過ごせた。
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