ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜

はな

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蕁麻疹②

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*ひなのside





お昼になると、五条先生が検査結果を話しにやって来た。





五条「朝の検査結果だが、蕁麻疹の原因はわからなかった。ただ、恐らく疲れが原因になってると思う。学校行って初めての環境で疲れたか?」


ひな「うーん、少しは疲れましたけど、そんな身体に異常をきたすほどでは……」


五条「自分が思ってるより身体は疲れてるんだ。まぁ、悪いところがあるわけじゃないからそんなに心配しなくていい。しっかり休めば大丈夫だ」


ひな「はい」


五条「ところで、学校ではお昼何食べてたんだ?」


ひな「え?」





突然、何でそんなこと聞くんだろう。





ひな「パンですけど……」


五条「それは昨日だろ?月曜から木曜は?」


ひな「パ……」





と言いかけて気がついた。

たぶん、パンしか食べてないことを知られちゃいけないんだと……





ひな「パ、pastaとか……」


五条「はぁ?パスタなんか食堂にないだろ。うどんか蕎麦だろ。まぁいい。他には?」





えっと、他になにがあったっけ……





ひな「カレーと、えっと、うどんと蕎麦と、Uh……お寿司」





と、なんとか絞り出して答えてみた。

なのに、五条先生の反応がないからうつむいてた顔を上げてみる。





あれ?

なんか、見たことないくらいニコニコしてるけど、目だけは全然笑ってない……。





五条「ひなちゃ~ん?5日間学校があって、さっきパンとパスタ食べたって言ったよねぇ?じゃあ、どうしてあと4つも食べたものがあったのかなぁ~?」





あ……これはやばい……





ひな「えっと、パスタは間違えました!」





言うと、五条先生は『はぁ……』とため息をついて、





五条「あのなぁ……嘘つくならもっとマシな嘘をつきなさい!!」


ひな「ごめんなさい……」





って、そもそもなんで怒られるような状況になったの……。





五条「学校の食堂に寿司なんかないだろ!本当は何食ってたんだ?ちゃんと食べてないだろ?体重がこの5日間で1kg減ったんだ。病院ではちゃんと食べてるのになぜ減る!?」





あ、なるほど。

そういうことだったのか。それでバレたんだ……。

だったらなおさら、パンだけ食べてたなんて言ったらどうなるのか……





五条「まさか、毎日パンしか食わなかったか?」


ひな「え?あ、えっと……」





なんでバレた?





五条「怒らないから正直に言いなさい。」





……もう逃げられない。





ひな「ずっと、パンを食べてました……」


五条「やっぱりか」





と言いいながら、五条先生が椅子に腰掛ける。





五条「なんでパンしか食べなかったんだ?」





怒らないと言ったからか、五条先生から怒りは感じなくなった。





ひな「決められなくて……」


五条「は?」


ひな「メニューが沢山あって、どれも美味しいそうでご馳走に見えて、迷ってたら何食べたらいいのかわからなくなって、結局、家でも食べたことあるようなパンを……」





声に出してみて改めて思ったけど、ご馳走に手をつけられずに袋入りのパンを買うなんて、あの人との生活から全然抜け出せてないみたい。





五条「お昼は1人で食べてるのか?」


ひな「はい。友達ができてないので、ひとりです。でも、ひとりなのは気にしてないです。いつもそうだったので」





あ、また。

いつもそうだったけど、本当は友達ができて一緒にわいわいできたらいいのになって思ってる。





五条「途中から入ったから、すぐに友達ができないのは仕方ない。慣れなくてひとりで辛いかもしれないけど、ご飯はしっかり食べないとダメだ。メニューが選べないんなら、端から順番に毎日違うもの食べてみればいい」





なるほど、その手があったか。





五条「とりあえず、この土日はしっかり休め」


ひな「はい……」










***



そして、週が明けて月曜日。





・日替わりランチ
・カレーライス
・チャーハン
・親子丼
・カツ丼
・うどん
・焼きそば
・唐揚げ
・フライドポテト
・コロッケ
  ・
  ・
  ・





昼休みの食堂で、メニュー表を眺める。



順番……とりあえず日替わりランチか。



と、食券を買っておばちゃんに渡した。

前の人を真似してご飯は少なめと伝えて。





「はい、日替わりね~」





と出てきたのは、生姜焼き定食。





うぁ、おいしそう!!





気分ルンルンで席に座って、





ひな「いただきます!」





パクッ……モグモグ……





美味しい!!





生姜焼きなんて生まれて初めて食べた。

すごくご飯が進む味。

病院の食事よりも少し量は多いけど、美味しくて全部食べれちゃった。



美味しいご飯でお腹が満たされて、午後の授業も頑張ろう!とルンルンで教室に戻った。










***



*五条side





ひなから学校が終わったと連絡があったので、そろそろ戻って着替えも済んだかという頃に病室へ行った。





五条「おかえり」


ひな「ただいま!」





ん……?

なんか、見たことないくらいご機嫌……。





五条「ご機嫌だな。学校でいいことあったか?」





聞くと、聞いて!と言わんばかりに目をキラキラさせている。





ひな「お昼ごはんに日替わりランチを食べました。今日は生姜焼きで、それがすっごく美味しかったです!」





……生姜焼きでこんなに目を輝かせる子がいるのか。

こいつは本当に……





五条「そうか。ちゃんとご飯食べれたんだな。パンより良いだろ?」


ひな「パンもいいけど、もっと美味しかった!全部食べました!」


五条「本当か?それはえらい。明日からもしっかり食べるんだぞ」


ひな「はい!」










話を聞いた後、聴診をしてひなの体調を確認して病室を出た。



今日も友達はできてないだろうから、ひとりで美味しそうに生姜焼きを頬張ったんだろう。



その姿を想像すると……



……いや、まぁ、笑顔で楽しく学校に行ってくれて何よりだ。










***



*ひなのside





でも、その夜……。



消灯時間も近くなってきたころ、身体にはまた蕁麻疹が出た。

少しずつ身体がかゆくなってきて、腕を見ると蕁麻疹が浮き上がってきた。



土日はなんともなかったのに……

かゆい……!!



気づけば上半身のあちこちが地図になってて、痒すぎて我慢できなくてナースコールした。

そして、五条先生がまた30秒くらいで薬を持ってすっ飛んで来てくれた。





五条「服脱げるか?とりあえず薬塗ろう」





と言われたので、パジャマを脱いだ。

そして、すぐに背中の方から薬を塗ってくれる。

でも、とにかくかゆくてわたしは腕やお腹をずっと掻く。





五条「痒いけど掻くな。余計に痒くなるし、痕になる可能性もあるから我慢しろ。今まこちゃんが氷用意してくれてるから」





我慢できたら掻いてないよ!

我慢できないくらいかゆいから掻いてるのに!





ひな「我慢できない!かゆい!」


五条「痒くても我慢!」


ひな「無理!」





と言い合ってると、まこちゃんが氷のうをいくつか持ってきてくれて、すぐに身体に当ててくれた。

五条先生は背中の薬を塗り終わったみたいで、今度は腕やお腹や首、膨疹が出てるところ全部に薬を塗ってくれた。





五条「よし、薬は塗ったから、とりあえずパジャマ着ろ」





と、パジャマを着せてもらったけど、身体中まだまだかゆい。

薬の効果はあるのかと思うくらい、かゆい。





ひな「かゆいの治らない!!」





そう言ってあちこち掻き続けてると、五条先生に手を掴まれてしまった。

しかも、片手で氷のうをわたしの体に当てたまま、もう片方の手で私の両手を。 

そんな器用なことしてくれなくていいのに、おかげでわたしは身体を掻けない。





ひな「掻かせて!」


五条「ダメだ。落ち着け。暴れてたらもっと痒くなるぞ」





はぁ、なんでこんな蕁麻疹が出るの……?

痛いのも嫌だけどかゆいのも辛い。

そのうち、わたしはまたロボットのように





ひな「かゆい…………かゆい…………かゆい…………」 





と言い続けた。



そんなかゆみは、30分以上経ってようやく引き出す。





今日は美味しいごはんを食べて、気分良く1日が終わると思ってたのに……





ひな「今日はhappyだったのに……」 





と、思わず心の声を漏らす。





五条「身体は思ってる以上に疲れてるんだ。こうして出る蕁麻疹自体は害があるものじゃないが、辛かったら明日は一度学校休むか?それとも、午前中だけとかお昼だけとかでもいいが」





そんな……





学校には行きたい。

せっかく行けるようになったし、行ってもいいならわたしは、





ひな「学校は休みたくありません。行っても問題ないなら行きます」


五条「そうか。蕁麻疹が出る以外は問題ないから、自分が行きたいと思ってるなら行ってもいい。ただ、無理するなよ」


ひな「はい」





と言って、学校には休まず通ってるんだけど……


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