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ノワール学園中等部③
しおりを挟む次の日から授業が始まった。
朝はこれまでより早くごはんを食べて、五条先生の診察を受けてから行く。
学校までは、病院の前からノワール学園や大学なんかを回っているバスがあるのでそれに乗っていく。
夏樹「ひなの、おはよう!」
ひな「おはよう、夏樹くん」
まだ友達は1人もいない。
教室に着くと、そんなわたしに唯一挨拶してくれたのが夏樹くん。
でも、夏樹くんもすぐに友達と輪になってる。
昼休みは食堂に行く。
あらかじめお金がチャージされたカードで食券を買うスタイル。
沢山メニューがあってどれも美味しそう。
でも、だからこそ何を買えばいいのかわからない。
結局、悩みすぎてどうして良いかわからず、食券のいらない棚に並んでたパンを一つ買って食堂の端っこに座って食べた。
そして、授業はというとやはり全然ついていけず。
今まで教科書は読んでたけど、捨てられて読めなかったものもある。
ただただ板書を写すだけで今日は終わった。
放課後、教室を出る前に夏樹くんが声をかけてくれた。
夏樹「ひなの、今日は大丈夫だったか?疲れただろ」
ひな「うん。ちょっとだけ……。でも大丈夫。ありがとう」
夏樹「俺、今日は部活あるんだ。気をつけて帰れよ」
ひな「うん、またね」
学校を出て、バスを待ってる間に五条先生にLIMEする。
"学校終わりました"
(既読)
……!!
このアプリは相手がメッセージを読むと既読ってつくんだけど、メッセージを送った瞬間既読になった。
"今バスを待ってます"
(既読)
"気をつけてな"
早っ……!!
次は既読がつくのとほぼ同時に返事が来た。
病院に帰ってくると、ナースステーションのまこちゃんにただいまと言って病室に戻る。
手を洗ってうがいして着替えて、宿題をやろうと鞄から教科書やノートを出すと五条先生が来た。
五条「おかえり。今日は疲れただろ」
五条先生がステートを首から外すので、わたしはパジャマのボタンを開けた。
五条「……ん。いいぞ。で、今日はどうだった?」
ひな「授業にはやっぱりついていけませんでした」
五条「焦らなくていい。もう少し元気になってきたら補修も受けたらいいんだ。まだ中学生だし追いつける。これ、宿題か?」
と、五条先生がテーブルに出した教科書やノートに視線を落とす。
ひな「はい。ごはんまでにやろうかなって」
五条「わからないとこあったらチェックしとけ。後で時間できたとき教えてやるから」
ひな「え?あ、ありがとうございます」
***
そして、夜。
ごはんを食べて薬を飲んだあと五条先生が来てくれて、約束通り宿題をみてくれた。
国語や英語は教科書を写すだけがほとんどでそんなに困らなかったけど、数学は積み重ねがなくてわからない。
学校で習ったのは二次方程式。
五条先生は一次方程式から教えてくれた。
五条「……で、こうすると後は2x=8のxに入るのを求めるだけでいい。2と何をかけたら8になる?」
ひな「4?」
五条「正解。じゃあ、この問題ひとりで解いてみろ」
うーんと、まずは移項して……
ひな「できました」
五条「正解。これで一次方程式はわかったな。そしたら、宿題の二次方程式だけど、この問題のどこが難しくてできなかった?」
ひな「えっと……xとyについてる数字が全部バラバラで、どう計算していいのかわからなくて……」
五条「なんだ、それに気づいてるならよくわかってるぞ。バラバラだから解けなかったんだろ?そしたら、xとyどっちでもいいから係数を揃えれば良いんだよ。さっきやったように……」
ピコーン!
ひらめいたとはこういうことを言うんだ。
五条先生の言葉で、一気にどうすればいいのかわかって問題を解いた。
ひな「……できた!」
五条「うん、正解。お前飲み込み早いな。少しの助けですぐ理解できるんだ、これならすぐみんなに追いつける。また教えてやるから頑張れよ」
ひな「はい。五条先生、ありがとうございます」
それから、五条先生は毎日宿題をみてくれた。
五条先生が忙しい時は、まこちゃんや神崎先生が教えてくれる。
そのおかげで、授業についていくのは難しいけど、置いていかれるという不安はすぐになくなった。
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