ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜

はな

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夢と過去の記憶③

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目が覚めてから3日後、ICUから小児科の病室に戻ってきた。

目が覚めた後、わたしの今の状態を伝えられた。

肋骨の骨折と右腕の裂傷、左耳の鼓膜損傷、その他もろもろ傷やあざもできたはず。

それから、あの人は保釈中に病院に来たということも。

そして、警察にまた捕まって、もう2度と出てくることはないって。



でも、そんなのもうどうだっていい……





工藤「ひなちゃん、聴診するから一旦バンド外すよ」





ビクッ





そう言って、工藤先生が胸のあたりを固定してるバストバンドを外す。





藤堂「ひなちゃん、痛くない程度でいいから、ゆっくり呼吸だけしててね」





ビクッ





五条先生に病衣をめくられて、藤堂先生に聴診される。

終わると工藤先生にまたバンドで肋を固定された。





五条「次、宇髄先生に左耳診てもらうから、じっとしててな」





と言われると、左耳に何か入れられた。



ビクッ



左耳はずっと膜が張ったようであまり聞こえない。





神崎「ひなちゃん、お口の横消毒してお薬塗るね。ちょっとしみるよ~」





ビクッ





痛い……

顔にこんな痛む傷、わたしひどい顔してるんだろうな。



先生たちみんなでわたしのこと診て手当てしてくれて、





五条「最後、腕の傷確認するな」





どうせ傷なんて治らない、治したって意味ないのに、みんなわたしのためなんかに……





パシッ……





ひな「もう……やめて…………」





そう言って、五条先生に掴まれた右腕を払った。





五条「縫ったところ綺麗に治すんだ。ちゃんと消毒するぞ」





と、五条先生が再び掴んだ右腕を払おうと……





……っ。





五条「ちゃんと見せなさい」





わたしが振り払うのをわかってたのか、今度は手首ががっちり掴まれてた。





ひな「離、して……」


五条「離さない」





そう言って、五条先生がギュッと手首を掴んできて、





ひな「離してよ……嫌って言ってるんだから……もうやめてよ!もういいの!!治したってこんな傷消えない!!」





って、わたしはまたみんなの前で爆発して、右腕は振り払えず掴まれたまま、左手で頭を抱え込んだ。





ひな「もう、嫌なの……ッ……あの人につけられた傷だけ負って……ッハァ、あの人の痕跡が残るこの身体で……ハァハァ……もう、生きたくない!!」


五条「ひなっ!!」





今度は思いっきり力を出して五条先生の腕を振り払った。

そして、ベッドから降りようとして先生たちに止められた。





ひな「やめて!!ハァハァ……離して、もう助けないで……ハァハァ……」


五条「ひな、落ち着け」


ひな「なんで助けるの、なんで、なんで生きなきゃいけないの……ダディーとマミーのとこに行きたいの!!会いたいの!!行かせてよ!!殺してよ!!」


五条「ひなのっっっ!!!!!」





ビクッ!!!





部屋中に五条先生の怒鳴り声が響き渡った。

今まで聞いてきた中で1番、いや、今まで聞いたことないくらい怒りに満ちた低い声。

時が止まったようにすべてがフリーズして、一瞬にして身体が固まった。



そして、五条先生に抱きとめられてた。





五条「いい加減にしろ……。悲しくても辛くても生きててって言っただろうが……」





え……?



五条先生の声がすごく苦しそう……

怒りも悲しさも悔しさも入り混じってる……

そんな声で言ったその言葉って……



ハッ……と我に返って顔を上げたら、五条先生と瞳がぶつかって、その瞬間、ものすごい勢いで夢で見た光景と過去の記憶がフラッシュバックした。





ひな「ト……ム……?五条、先生……ト……ム……?」


五条「やっと気づいたか……。やっと、思い出したか……?」


ひな「五条先生……トム……五条先生……」





どういうこと……?

自分で言ったけど、自分で解いた謎だけど……

五条先生が、あの、トムって……





五条「ひな?ひなはな、処置室へ運ぶ途中に呼吸がおかしくなったんだ。蘇生して助かったけど、だから5日間も目が覚めなかった。3日間は高熱も出して危険な状態だった」





え……?わたし、そんなに酷かったの……?





五条「でも、逝かずに戻ってきてくれただろ?なんで戻ってきた?」





五条先生の瞳がずっと見つめてくる。





なんでって……





ひな「夢を見てて……ダディーとマミーが戻りなさいって……」


五条「ダディーとマミーが戻してくれたんだろ?ダディーとマミーからもらった大切な命なんだ。なのにそれを殺してなんて……何言ってんだこのバカもんがぁ!!!」





いつの間にか五条先生はまたわたしを抱きしめてる。



すっごく怒ってるのに、なぜか声が怒ってない……。

怒ってるけど、それ以上に悲しそうで、苦しそうで、抱きしめられる力もすごく強くて……





ひな「だって……ヒック……またあの人の傷……顔にもつけちゃったのに……こんな身体よりみんなに会いたくて……。トムとの約束も守れなかったから……ヒック……ヒック……」


五条「約束なら守っただろ。どんだけボロボロになっても、辛くて悲しくても生きててくれて、えらかった……。顔も傷つけないで、かわいい顔見せくれてうれしかった。また会えたんだから、これからはずっとそばにいるから、死ぬな。生きろ」





"トクン"





ひな「ハァハァ……ごめんなさぃ……ヒック……ごめんなさぃ、ごめんなさい……ケホケホッ……ッハァ……ッハァ……ゲホゲホゲホ……ッハァハァ……」





そうして、わたしは五条先生の胸の中でまた意識を手放していた。


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