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悪夢のような恐怖②
しおりを挟む*ひなのside
ふぅ、スッキリ。
トイレから出て部屋に戻ろうと思ったら、まこちゃんの声が聞こえたからか、なんとなくナースステーションの方が気になった。
……まぁ、いっか。部屋戻ろう。
と一度は思ったものの、なんかすごく嫌な予感がして、
……やっぱり少し見てみよう。
身体の向きをくるりと変え、ナースステーションの方へ。
すると……
な……んで……?
見覚えのある後ろ姿。
見たこともないスーツを着てるけど、どんなに着飾ったってわたしにはわかる。
あの人が、今、目の前にいるって。
夢……?
わたしまた悪い夢見てる……?
そう思って腕をつねってみるけど痛いに決まってる。
嘘でしょ….なんでいるの……
捕まったんじゃなかったの……
一眼見るだけでいろんな恐怖が蘇ってくる。
部屋に戻ろう。隠れよう。
そう思うのに、つま先から頭の先までガクガク震えてその場から動けない。
どうしよう……
と、瞬きも息すらもできずにいると、
男性「……なんだ、そこにいんじゃねぇかよ」
…………ハッ!!
バッシーン!!ガシャーン!!
一瞬、あの人と目が合ったと思ったら、次の瞬間には頬を平手でぶっ叩かれて床に倒されてた。
ガシャーンと音がしたので、きっと叩かれた衝撃で少し飛ばされたのか、近くにあったラックも倒れたみたい。
と、僅か1秒の間に状況整理をしたと思えば、
りさ「やめなさい!!」
男性「テメェなんで生きてんだ!!俺のこと警察にも言いやがって!!さっさと死ね!!」
ドカッ!ボコッ!!
ひな「ゔっ、ゴホッ……ゴホゴホゴホッ!! オェッ……オェッ、ッハ……ッハ……」
久しぶりに殴られるせいか、素早く反応できなくて咄嗟に身体を丸めるので精一杯。
それも受け身が下手だったのか、思いっきりお腹を殴られた。
そして、吐いた。
息もできない。
吸うことも吐くことも、何もできない。
止めに入ってくれた女医さんもぶっ飛ばされてる。
すると、
ドタドタドタドタドタドタドタ!!!
突然ものすごい足音が床から鳴り響いてきた。
五条「ひなっ!!!」
藤堂「ひなちゃん!!!」
工藤「はいっ!おっさんそこまで~!!」
男性「離せコラァァ!!」
宇髄「黙れこのクズ!!」
ドカッ!
神崎「医局長、大丈夫ですか!?」
りさ「わたしはいいから早くひなちゃん助けなさい!」
……たぶん、今目の前で起こったのは2、3秒のできごと。
それでも、全てがスローモーションみたいにはっきり見えた。
5人の先生が向こうから走ってきて、宇髄先生と工藤先生があの人の両脇に入り込んでわたしから引き離すと、暴れるあの人に一撃を入れた。
神崎先生はわたしのせいで飛ばされた女医さんに声をかけてた。でも、わたしを助けてってなぜか怒られてる。
そして、五条先生と藤堂先生はまっすぐわたしのところへ来た。
五条「ひなっ!!」
五条先生はわたしの横にひざまずくや否や、わたしの背中を思いっきり叩いた。
五条「出せ!!全部吐くんだ!!」
ひな「オェッ……ゴホッゴホッ!! オェッ、ェ……ゴホゴホゴホッ……ッハ、ッハ」
息ができないのに、本当に死ぬほど苦しい時になんてことするの……?
と、思っても続けられた。
ひな「ゴホゴホッ、オェッ……ッハァハァ、オェッ……ゴホゴホゴホッ……」
五条「それでいいから吐き続けろ!咳でもなんでも出し続けるんだ!!」
吐き続けろって……
苦しくて、身体だって激痛なのにそんな叩かないで……
ひな「ゴホゴホゴホッ、ッハァ……ゴホッ……ぅっ、ハッ……ゴホッ……」
痛いし苦しいし、耳がキーンとする。
小さい子の泣き声も微かに聞こえる。
ごめんね、きっと怖いもの見ちゃったよね。
わたしのせいで……本当にごめんね……
警察官も大勢来たみたい。
はぁ、もう何がなんだかわからなくなってきた。
と思ったら、いつの間にストレッチャーに乗せられてどこかに連れて行かれる。
***
……あれ?
あそこにいるの……誰?
男の人と女の人が手を振ってる。
気づけばわたしは走ってた。
「こらぁー!」
「ひな~!走らないの!」
……ピタッ
走ったら、怒られた。
あの2人どこかで……
そうだ、わたしのお父さんとお母さんだ。
ダディーとマミー、会いたかった……。
と、再び歩いて近づいてみる。
「ダメだ!ひなの、こっちに来るな!」
「ひな!早く戻りなさい!」
……なんで?
せっかく会えたのに、戻るって、どこに戻るの……?
「こっちだ!!」
え……?
どこ……?
後ろから声がして振り返るけど、誰もいない。
……今の声は誰?
と思いながら、もう1度振り返ると、
あれ……?
ダディーとマミーがいなくなった……
「ひな行くな!!戻ってこい!」
あれ、またさっきと同じ声……
五条先生……?
行くなって、五条先生はどこにいるの……?
どこに戻るの……?
「ドコ……?」
「ここだ!!」
***
*五条side
まこちゃんから連絡があって小児に戻ると、ひなが男に……アイツに叩き倒されてた。
五条「ひなっ!!」
そして、腹を蹴られて吐き出してもがいてる。
まずい、吐物が詰まれば窒息死する……。
俺はひなの背中を思いっきり叩いた。
五条「出せ!!全部吐くんだ!!」
ひな「ゴホゴホゴホッ、ッハァ……ゴホッ……ぅっ、ハッ……ゴホッ……」
身体の中のものも全部出さないと、咳でもなんでも出させ続けないと……。
真菰「ストレッチャー通ります!!」
程なくしてまこちゃんがストレッチャーを持ってきた。
藤堂「五条先生そっち持って!一緒に上げるよ」
ひなをストレッチャーに乗せ、大急ぎで処置室へ運んでると……
ひな「ヒッ……ヒッ……」
五条「……ひな?おい、ひな!?」
ひなの呼吸がおかしい。
藤堂「まずい、止まる……」
藤堂先生がそう言うと同時に、俺はストレッチャーに飛び乗っていた。
そして、蘇生を始めた。
五条「ひな!……ひな!!」
藤堂「悠仁……」
五条「ひな逝くな!こっちだ!」
処置室に着いてもまだ呼吸が戻らない。
宇髄先生も工藤先生も神崎先生も来た。
ひなさえ息を吹き返せば絶対に助けられる。
五条「ひなっ!ひな逝くな!生きろ!戻ってこい!ここだ!!」
ピクッ……
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