上 下
28 / 232

夢と過去の記憶①

しおりを挟む


~ICU~





ピッ……ピッ……ピッ……ピッ…………





なぁ、ひな。

そろそろ起きろよ……。





あれからもう4日経った。

打たれた衝撃で左耳の鼓膜は破れ、頬は真っ赤に腫れ上がり、口元も切れた。

幸い内臓に深い傷はなかったが、肋骨が折れたし、床に飛ばされるように倒れた時、ラックで腕を切っていた。

もちろん、他にもいくつか擦り傷やあざができた。



昨日までは高熱が続いて、今日になってやっと落ち着いてきたところだ。





工藤「ひなちゃん、まだ起きないな」


宇髄「容体も落ち着いてきたし、今日は目覚ますと思ったんだが……」


神崎「五条先生、休憩室でいいからちょっと寝てきなよ。休んでないでしょ?」


五条「俺は大丈夫です」


藤堂「いや、さすがにダメダメ。悠仁は休みなさい」


宇髄「今夜は俺と工藤がICUに居るから。何かあればすぐ呼ぶし、安心しろ」


五条「ありがとうございます」










***



*ひなのside





あれ?ここはどこ?



大きなお家にプールのある広いお庭。

太陽は燦々と降り注ぎ、空は青々としてる。



なんでわたしこんなところにいるの?

でも、この広いお庭なんか初めてじゃない気がする……。





「ひな~!おいでー!」





家の中から誰かに呼ばれて振り返ると、そこには背の高いお兄さんがいる。


でも……顔がぼやけて見えない。





「ひなちゃん、ずっとお外にいたら暑いだろー?早く入っておいで」





今度は男の人。

わたしを呼んでるんだよね?

早く行かなきゃ。





「I’m coming!!」


「Good girl. って、あらあら、お洋服汚しちゃって」





って、次は女の人が出てきた。



この人たち、いったい誰……?

すごく温もりを感じる。

なんだか、わたしずっとここにいたい……。





「ひな、また朝からお庭で遊んでたの?」


「うん!だってねTom?the sunがfeels niceダッタヨ!」


「ははっ。お日様が気持ちよかったんだな」





トム……

わたし、この人の名前はわかってる……。

顔はぼやけてわからないのに、どうして……?



また変な夢見てるのかな……?

わたし、今夢の中……?















***



ピッ……ピッ……ピッ……ピッ…………





ひな「ん……」





白い天井……



淡いグリーンのカーテン……



一定のリズムを刻む機械音……





目が覚めると見覚えのある光景が。





ここ、前にも来たとこだ……。





「栗花落さん!?気がついた?先生呼んでくるね!!」





ん……?

今の誰?

看護師さん?



と思ったらカーテンが開いて、五条先生、宇髄先生に工藤先生、藤堂先生と神崎先生も来た。



なんで、みんなこんなにたくさん来るの……?





藤堂「……なちゃん?……こえる?」





あれ、この優しい声、藤堂先生、なんか話してるよね?

でも、先生の声がすごく遠くて聞こえにくい……

それにずっと耳鳴りもしてる。





五条「ひな、聞こえるか?」





ビクッ!!





今度はベッドの右にいた五条先生に声をかけられた。

でも、突然さっきより大きい声が聞こたので思わずびっくりしてしまった。





五条「今、痛いとことか気持ち悪いとかないか?」





ない……と思うけど、頷こうにも頷けない。

口に何か入ってる……

唇も乾いてカピカピな気がするし、

しゃべれない、苦しい、なにこれ……?





五条「右手、俺が握ってるのわかるか?握ってみて」





五条先生に手握られてるの、わかるよ。

優しくて大きい手。



力が入らないけど指を動かしてみると、先生たちがなにやら動き出した。

五条先生が口にある何かを持ってて、宇髄先生に頭を押さえられて、神崎先生と工藤先生には身体を押さえられて、藤堂先生はわたしの胸元をめくってステートを構えてる。

なにが始まるのかわからなくて怖くなって目を閉じた。





宇髄「ひなちゃーん、力抜いて楽にするよー」





と、宇髄先生の声が聞こえたので、パッと目を開けた瞬間、





ひな「……ッ、オェッ……コホコホコホッ、コホコホッ……コホコホコホッ……ッハァ、ッハァ、ッハァ……」





口の中からチューブが引き抜かれて酸素マスクをつけられた。

咳が止まらないし、咳すると肋骨のあたりに激痛が走る。

苦しくて痛くて涙が出てくると、五条先生が指で拭ってくれて右手をまたギュッて握ってくれた。





藤堂「ひなちゃーん、聞こえる?落ち着いてゆーっくり呼吸してみて」





さっきより大きな声でそう言いながら、藤堂先生はずっとわたしの胸の音を聴いてる。





ひな「コホコホッ……ッハァ、ッハァ、コホコホコホッ……ハァハァ……ッハァ……」





少しすると咳は治まってきたけど、肋が痛くて仕方ない。

それに咳しすぎて疲れた。



そういえば、わたし何がどうなったんだっけ?

なんでまたこの部屋にいるんだっけ?



落ち着いてくると、肋だけじゃなくて身体中痛い。

顔も痛いし、耳も変。





ひな「ハァハァ……ハァハァ…………」





本当にわたし、今どうなってるの……。





五条「痛いか?」


ひな「コクッ……」


宇髄「工藤、鎮痛剤入れて」


工藤「はい」





という、やりとりがなんとなく聞こえた。





五条「肋骨が折れたんだ。安静にしてれば大丈夫だから、心配はしなくていい。痛むかもしれないけど、呼吸はちゃんとするように意識して」





肋骨が折れた……?

……なんで?



突然そんなことを言われてもまだ状況が掴めない。





五条「覚えてないか?5日間も意識がなかった。どうしてこうなったか、覚えてないか……?」





え?今なんて言った?

5日間意識がなかったって、そんなこと本当にあるの……?



でも、もしそうだとして、わたしはなんで?

最後に覚えてるのは……










『さっさと死ね!!』










ハッ…………!





思い……出したく、なかった……。





あの人が目の前に現れて、





"バシッ!"





わたしのほっぺた……



やっぱりあれは現実だったんだ。

夢じゃなくて、なんで、なんでまた……!





ひな「ッハァ……ッハァ……な……ッハァ……んでっ……ハァハァ……ッハァ、ハァハァ……嫌!!」


五条「ひな落ち着こう。今発作が起きると身体が痛む……」





そう言われても、もう痛い……

息するだけで痛い……

あの人のせいでボロボロ……



せっかく家族のこと分かったのに、またあの人に傷つけられた……。



もうやだ。

もう、死にたいよ……

みんなのところに逝きたい……





そう思って目を閉じたら、もう意識は飛ばしていた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

好きだった幼馴染に出会ったらイケメンドクターだった!?

すず。
恋愛
体調を崩してしまった私 社会人 26歳 佐藤鈴音(すずね) 診察室にいた医師は2つ年上の 幼馴染だった!? 診察室に居た医師(鈴音と幼馴染) 内科医 28歳 桐生慶太(けいた) ※お話に出てくるものは全て空想です 現実世界とは何も関係ないです ※治療法、病気知識ほぼなく書かせて頂きます

イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?

すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。 病院で診てくれた医師は幼馴染みだった! 「こんなにかわいくなって・・・。」 10年ぶりに再会した私たち。 お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。 かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」 幼馴染『千秋』。 通称『ちーちゃん』。 きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。 千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」 自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。 ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」 かざねは悩む。 かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?) ※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。 想像の中だけでお楽しみください。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。 すずなり。

My Doctor

west forest
恋愛
#病気#医者#喘息#心臓病#高校生 病気系ですので、苦手な方は引き返してください。 初めて書くので読みにくい部分、誤字脱字等あると思いますが、ささやかな目で見ていただけると嬉しいです! 主人公:篠崎 奈々 (しのざき なな) 妹:篠崎 夏愛(しのざき なつめ) 医者:斎藤 拓海 (さいとう たくみ)

お兄ちゃんはお医者さん!?

すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。 如月 陽菜(きさらぎ ひな) 病院が苦手。 如月 陽菜の主治医。25歳。 高橋 翔平(たかはし しょうへい) 内科医の医師。 ※このお話に出てくるものは 現実とは何の関係もございません。 ※治療法、病名など ほぼ知識なしで書かせて頂きました。 お楽しみください♪♪

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

好きすぎて、壊れるまで抱きたい。

すずなり。
恋愛
ある日、俺の前に現れた女の子。 「はぁ・・はぁ・・・」 「ちょっと待ってろよ?」 息苦しそうにしてるから診ようと思い、聴診器を取りに行った。戻ってくるとその女の子は姿を消していた。 「どこいった?」 また別の日、その女の子を見かけたのに、声をかける前にその子は姿を消す。 「幽霊だったりして・・・。」 そんな不安が頭をよぎったけど、その女の子は同期の彼女だったことが判明。可愛くて眩しく笑う女の子に惹かれていく自分。無駄なことは諦めて他の女を抱くけれども、イくことができない。 だめだと思っていても・・・想いは加速していく。 俺は彼女を好きになってもいいんだろうか・・・。 ※お話の世界は全て想像の世界です。現実世界とは何の関係もありません。 ※いつもは1日1~3ページ公開なのですが、このお話は週一公開にしようと思います。 ※お気に入りに登録してもらえたら嬉しいです。すずなり。 いつも読んでくださってありがとうございます。体調がすぐれない為、一旦お休みさせていただきます。

幼馴染はとても病院嫌い!

ならくま。くん
キャラ文芸
三人は生まれた時からずっと一緒。 虹葉琉衣(にじは るい)はとても臆病で見た目が女の子っぽい整形外科医。口調も女の子っぽいので2人に女の子扱いされる。病院がマジで嫌い。ただ仕事モードに入るとてきぱき働く。病弱で持病を持っていてでもその薬がすごく苦手 氷川蓮(ひかわ れん)は琉衣の主治医。とてもイケメンで優しい小児科医。けっこうSなので幼馴染の反応を楽しみにしている。ただあまりにも琉衣がごねるととても怒る。 佐久間彩斗(さくま あやと)は小児科の看護師をしている優しい仕事ができるイケメン。琉衣のことを子供扱いする。二人と幼馴染。 病院の院長が蓮でこの病院には整形外科と小児科しかない 家は病院とつながっている。

処理中です...