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夢と過去の記憶①
しおりを挟む~ICU~
ピッ……ピッ……ピッ……ピッ…………
なぁ、ひな。
そろそろ起きろよ……。
あれからもう4日経った。
打たれた衝撃で左耳の鼓膜は破れ、頬は真っ赤に腫れ上がり、口元も切れた。
幸い内臓に深い傷はなかったが、肋骨が折れたし、床に飛ばされるように倒れた時、ラックで腕を切っていた。
もちろん、他にもいくつか擦り傷やあざができた。
昨日までは高熱が続いて、今日になってやっと落ち着いてきたところだ。
工藤「ひなちゃん、まだ起きないな」
宇髄「容体も落ち着いてきたし、今日は目覚ますと思ったんだが……」
神崎「五条先生、休憩室でいいからちょっと寝てきなよ。休んでないでしょ?」
五条「俺は大丈夫です」
藤堂「いや、さすがにダメダメ。悠仁は休みなさい」
宇髄「今夜は俺と工藤がICUに居るから。何かあればすぐ呼ぶし、安心しろ」
五条「ありがとうございます」
***
*ひなのside
あれ?ここはどこ?
大きなお家にプールのある広いお庭。
太陽は燦々と降り注ぎ、空は青々としてる。
なんでわたしこんなところにいるの?
でも、この広いお庭なんか初めてじゃない気がする……。
「ひな~!おいでー!」
家の中から誰かに呼ばれて振り返ると、そこには背の高いお兄さんがいる。
でも……顔がぼやけて見えない。
「ひなちゃん、ずっとお外にいたら暑いだろー?早く入っておいで」
今度は男の人。
わたしを呼んでるんだよね?
早く行かなきゃ。
「I’m coming!!」
「Good girl. って、あらあら、お洋服汚しちゃって」
って、次は女の人が出てきた。
この人たち、いったい誰……?
すごく温もりを感じる。
なんだか、わたしずっとここにいたい……。
「ひな、また朝からお庭で遊んでたの?」
「うん!だってねTom?the sunがfeels niceダッタヨ!」
「ははっ。お日様が気持ちよかったんだな」
トム……
わたし、この人の名前はわかってる……。
顔はぼやけてわからないのに、どうして……?
また変な夢見てるのかな……?
わたし、今夢の中……?
***
ピッ……ピッ……ピッ……ピッ…………
ひな「ん……」
白い天井……
淡いグリーンのカーテン……
一定のリズムを刻む機械音……
目が覚めると見覚えのある光景が。
ここ、前にも来たとこだ……。
「栗花落さん!?気がついた?先生呼んでくるね!!」
ん……?
今の誰?
看護師さん?
と思ったらカーテンが開いて、五条先生、宇髄先生に工藤先生、藤堂先生と神崎先生も来た。
なんで、みんなこんなにたくさん来るの……?
藤堂「……なちゃん?……こえる?」
あれ、この優しい声、藤堂先生、なんか話してるよね?
でも、先生の声がすごく遠くて聞こえにくい……
それにずっと耳鳴りもしてる。
五条「ひな、聞こえるか?」
ビクッ!!
今度はベッドの右にいた五条先生に声をかけられた。
でも、突然さっきより大きい声が聞こたので思わずびっくりしてしまった。
五条「今、痛いとことか気持ち悪いとかないか?」
ない……と思うけど、頷こうにも頷けない。
口に何か入ってる……
唇も乾いてカピカピな気がするし、
しゃべれない、苦しい、なにこれ……?
五条「右手、俺が握ってるのわかるか?握ってみて」
五条先生に手握られてるの、わかるよ。
優しくて大きい手。
力が入らないけど指を動かしてみると、先生たちがなにやら動き出した。
五条先生が口にある何かを持ってて、宇髄先生に頭を押さえられて、神崎先生と工藤先生には身体を押さえられて、藤堂先生はわたしの胸元をめくってステートを構えてる。
なにが始まるのかわからなくて怖くなって目を閉じた。
宇髄「ひなちゃーん、力抜いて楽にするよー」
と、宇髄先生の声が聞こえたので、パッと目を開けた瞬間、
ひな「……ッ、オェッ……コホコホコホッ、コホコホッ……コホコホコホッ……ッハァ、ッハァ、ッハァ……」
口の中からチューブが引き抜かれて酸素マスクをつけられた。
咳が止まらないし、咳すると肋骨のあたりに激痛が走る。
苦しくて痛くて涙が出てくると、五条先生が指で拭ってくれて右手をまたギュッて握ってくれた。
藤堂「ひなちゃーん、聞こえる?落ち着いてゆーっくり呼吸してみて」
さっきより大きな声でそう言いながら、藤堂先生はずっとわたしの胸の音を聴いてる。
ひな「コホコホッ……ッハァ、ッハァ、コホコホコホッ……ハァハァ……ッハァ……」
少しすると咳は治まってきたけど、肋が痛くて仕方ない。
それに咳しすぎて疲れた。
そういえば、わたし何がどうなったんだっけ?
なんでまたこの部屋にいるんだっけ?
落ち着いてくると、肋だけじゃなくて身体中痛い。
顔も痛いし、耳も変。
ひな「ハァハァ……ハァハァ…………」
本当にわたし、今どうなってるの……。
五条「痛いか?」
ひな「コクッ……」
宇髄「工藤、鎮痛剤入れて」
工藤「はい」
という、やりとりがなんとなく聞こえた。
五条「肋骨が折れたんだ。安静にしてれば大丈夫だから、心配はしなくていい。痛むかもしれないけど、呼吸はちゃんとするように意識して」
肋骨が折れた……?
……なんで?
突然そんなことを言われてもまだ状況が掴めない。
五条「覚えてないか?5日間も意識がなかった。どうしてこうなったか、覚えてないか……?」
え?今なんて言った?
5日間意識がなかったって、そんなこと本当にあるの……?
でも、もしそうだとして、わたしはなんで?
最後に覚えてるのは……
『さっさと死ね!!』
ハッ…………!
思い……出したく、なかった……。
あの人が目の前に現れて、
"バシッ!"
わたしのほっぺた……
やっぱりあれは現実だったんだ。
夢じゃなくて、なんで、なんでまた……!
ひな「ッハァ……ッハァ……な……ッハァ……んでっ……ハァハァ……ッハァ、ハァハァ……嫌!!」
五条「ひな落ち着こう。今発作が起きると身体が痛む……」
そう言われても、もう痛い……
息するだけで痛い……
あの人のせいでボロボロ……
せっかく家族のこと分かったのに、またあの人に傷つけられた……。
もうやだ。
もう、死にたいよ……
みんなのところに逝きたい……
そう思って目を閉じたら、もう意識は飛ばしていた。
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