俺が悪魔?それは前の戦いであいつらが勝ったからそう言われているだけだ

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第1章 アラスカ

02 修学旅行

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『ポーン ただいま、アンカレッジ国際空港近辺に低気圧が近づいてきている模様です。空港に近付くにつれて乱気流により機体がかなりガタガタと揺れる予定です。ご年配の方で持病をお持ちの方や、心臓などに支障のある方は、ただいま巡回中のCAにお申し出ください』
機内アナウンスが聞こえて少ししてシートベルト着用のサインが表示された。

俺達は4泊5日の修学旅行の行程の半分ぐらいを終えてほぼチャーター機みたいな状態で次の目的地に向かって移動している最中だった。
うちの高校は毎年アメリカ西海岸とアラスカに修学旅行に行くらしい。どうも理事の一人が現地に商業施設を持ってるらしく、毎年行先で揉めても最終的にはアラスカだけは行く事になるとかって聞いた。
俺達は4クラス+引率の教師を含めて全員で100人ほどの団体。
小型の150人乗りぐらいの飛行機にほぼ貸し切り状態で乗り込み移動しているのだが、どうも少しばかり目的地周辺の天気が荒れているみたいだった。

俺の席は翼の少し前の窓際。先生達はなぜかビジネスシートに座っているみたいで近くには居ない。
窓から見える範囲にははるか下に雲が少し見える程度で窓に顔を押し付けて先の方を見ても特に大きな曇は見えない。
「なぁ、今のアナウンスとか…大丈夫かなぁ」
隣に座る田中たなかがこっちが不安になりそうな声で話しかけてきた。
「大丈夫だろ。だって乗る時にCAさんと話をしてるパイロットみたいなおっさん見かけたけど映画のハドソン川〇奇跡に出てた機長みたいなヒゲ生やしてたし」
「…なぁ、ヒゲってパイロットの腕に何か関係あるのか?」
俺と田中が話していたら田中の反対側の席に座っていた佐々木ささきが会話に混ざってきた。

たぶんこいつ、目が笑っているので怖くて会話に混ざってきた訳ではなく、例のごとく田中をいじる目的で混ざってきたんだろう。

「なんだ、知らないのか?ヒゲを生やしてるやつって言うのは大体2種類の奴に分類できるって言われてるんだぞ。一つは見た目が若いから威厳を出す為に生やしてる奴だけど聞いた事ない?」
「あーそれは分かるな。うちの親父も課長になった頃から『もう少しだけ威厳が欲しいなぁ…』なんて言いながらひげを生やし始めたんだ」
田中が少しばかり自慢気に話しはじめた。

ちなみに俺ん家の親父と佐々木の親父さんは田中の親父さんと同じ会社に勤めていて、部署は全く違うがうちの親父は係長をしている。そして佐々木の親父さんは確か現場の主任だったと思う。

「おまえん家の親父さんって確かクリーンルームで働いてるとか言ってなかった?」
佐々木が若干うっとおしそうな感じを見せつつも会話を続けた。
「そうだけど何か?」
「クリーンルームって全身防護服みたいな感じのを着るんじゃないの?顔とか見えないじゃん」
「まぁそうみたいだけど、一応ほら、会議とかもあるみたいだから?」
田中は少しばかり痛い所を突かれたって感じの顔で弁解し始めた。

うん。俺と佐々木はたぶん同じ事を考えてる気がする。
田中の親父さんはたぶんだけど、2番目の理由でヒゲを生やしてるんじゃないの?
だって佐々木が田中の生え際をチラッっと見て俺を見て目だけで笑ってたし?

俺も佐々木も田中も親父が同じ会社に勤めている関係で夏場にバーベキュー大会とか海岸を貸し切っての祭りみたいな事をなんども経験してきた。
幼少の頃から同じ団地に住んで同じ保育所、小学校、中学、高校に通って育ってきた。
腐れ縁というか幼馴染というか、そんな訳で言わんとする事はなんとなく分かる。

だから田中の親父さんの頭が若干薄いことを知ってる。
なんなら何度もお互いの家に遊びに行ってるから田中の祖父さんの頭が薄い事もしってる♡
こいつにはどうやっても逃れられない宿業があるのだよ♡

「まぁほら、ヒゲを生やす人って言うのは他にも色々と理由があるから」
「そうだな。田中、がんばれよ!」
「頑張るって…はぁ??」
俺と佐々木は15年後の田中の頭皮を少しだけ心配しつつ優越感を持って田中の肩に手をポン♪と置いて励ましておいた。

「なぁ、俺は何を頑張ったらい、うおっ!ってぁあぁあああ~~~!!!!」
「ひぃあぁぁあああぁ~~!!」
「「きゃー!!!」」
田中が俺と佐々木の顔を交互に見ながら頷き返していたらいきなり機体が急降下してそこかしこで悲鳴が上がった。

「びっくりした…今俺、今年の夏に遊びに行ったランドで乗ったフリーフォール以上の浮いた感じを味わったぞ!なぁ飛行機本当に大丈夫なのか?!」
「なんか臭いぞ!お前漏らしてないよな!」 
「俺じゃねぇよ!お前じゃないのか?!こう言うのは言い出しっぺが一番怪しいんだ!尻を見せろ!」
「残念でした~今はシートベルトを外せまっせ~ん♪」
「こいつ殴りたい!」
「一発俺の代わりにいっといてくれ!ってまじでこれ大丈夫か?!」
軽口を聞きつつもシートのひじ掛けを田中と取り合っていたら段々と機体の揺れが大きくなってきた気がする。

「イテッ!って…えっ?これ…」
ひじ掛けを田中と取り合っていた俺は気づくのが少し遅れたのだが、田中の声のおかげで機内に酸素マスクがいっぱいぶら下がっているのに気づいた。
「…これってマジでヤバいんじゃね?」
「…なんとなくマズい気がする」
機内はエンジンの音と何か大きな軋むような嫌な音が鳴っていて会話がし辛い。
なんとなく…本当になんとなく頭の中に墜落の文字が過った。

「あっ…俺、ちょっと千佳ちかちゃんにコクってくるわぁ…」
佐々木がベルトを外そうとバックルの辺りに手を持っていき何かしてる。

「ちょっと待て!佐々木!ベルトは今外せないから!」
「って言うかお前千佳ちゃん好きだったの?!この間まで江島えじまさんがどうとかって言ってたじゃんか!あれ嘘だったのか?!」
「一番好きな人の事をお前らに言える訳ないだろ!小学校の時に何したかもう忘れたのか?!」
俺と田中は佐々木が大好きだって白状した田中の幼馴染の来島くるしまさんに佐々木からのラブレターを勝手に送ったことがあった。
「あれはでもお前がいつまで経っても告らなかったから心配した俺達が少しだけ手伝っただけだろ?!」
「そうだぞ!そのおかげで少しの間付き合えたじゃないか!よかったじゃんか!」
「少しの間はな!!でもなんで俺にジャニー〇に知り合いが居るとか書いた?!そのおかげで美莉愛みりあちゃん何回も『〇〇君のサイン欲しいなぁ~』とか『こんど合コンしたいって言ってみてくれないかなぁ~』とかあきらかに俺は踏み台みたいな言い方されたんだからな!」
「だってお前のアピールポイントとか何があるよ!なんも無いだろ?!だから俺達が頑張ってやったんじゃないか!」
「無いのはお前らも一緒だろ!って言うか…こんな事言いあってる場合じゃないんじゃね?」
「「確かに…」」

機内のライトが消えたり点いたりしだした。
そして窓の外はさっきまでの晴天が嘘みたいに暗くなり、大粒の雨が窓の表面をまっすぐ後ろに高速で流れだした。
俺達が3人そろって窓を覗き込んでいたら、俺達の真後ろの辺りから強い光が感じられた。
そして一瞬後に強い衝撃が体を貫き…そこで俺の意識が途絶えた。
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