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50 巫女装束
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明日香の怒りが完全に冷めない内に目的地に到着した。
今日から3日ほど泊まる事になる明日香のおばあちゃんの家。
おばあちゃんの家と言いつつも、おじいちゃんも健在で、仕事はさすがにしてないのだが、家の周囲に家庭菜園とはとても呼べないレベルの畑を持っていて、その手入れで毎日良い汗をかいてるらしい。
そして案内された居間におじいちゃんとおばあちゃんが自分達専用の椅子に座って笑顔で話をしてた。
部屋には眞子達が思い思いに座っていて、談笑してたらしい。
秋穂は毎年会ってるらしく気軽に帰郷の挨拶をしていた。
私は二人を紹介されて自己紹介を返し、3日間の滞在の事をお願いしてるとおばあちゃんがなぜか目に涙を溜めていた。
二人にとって孫になる明日香の事をずっと可愛がってくれていた二人は、最初の結婚の話が出た時に、とても心配してたらしい。
私と付き合っていた事は帰省時によく話に出ていたらしく、
「そろそろ連れて来て話をさせろ。わしが直々に明日香を幸せに出来る男か確認してやる!」
と鼻息荒くおじいちゃんがてぐすね引いて待ってたらしいのだが、いきなり結婚すると言う話になり、さらには相手が今まで話に出てた男とは違うし、更にはもうすぐ子供が生まれるなどという話になれば、『明日香の望む話では無さそうだし…これでは幸せになれていないのでは?』という心配がずっと解消される事無く、月日が流れて行ったそうだ。
その後たまに戻って来ても京香を紹介する時などは笑顔が見れたが旦那さんを連れてくる事も無かったらしく、(実際には来る事をめんどくさがった元旦那さんが拒否していただけらしいが…)そんなことが積み重なりずっと気に病んでいたが、相手の家との兼ねあいもあり面と向かって何かが出来るわけでもなく我慢を強いられていたそうだ。
そして10年近く経った頃にいきなり離婚してそのまますぐに結婚すると言う話が届けられ、しかもその相手は元々話の中で何度も出ていた私だった事から『もしかしたら今度こそ明日香は幸せになれるのかも?』みたいな考えがやっと持てたって言っていた。
そして今回久しぶりに帰省してきて幸せそうに私の事を説明してる明日香を見て、私の人となりを感じ、他にも一緒に戻った子達の私に接する姿からやっと重たかった荷を降ろせたと気持ちが軽くなり気付いたら涙していたと言っていた。
とりあえず、
「15年前からお主には会いたかったんだ。」
と、おじいちゃんに言われるとさすがに身が引き締まる気がしたのだが、京香と眞子と秋穂が一斉に、
「おじいちゃん何威嚇するような事言いだしてるの?!やめてっ!!」
「ちょっと!!明さんに何かするって言う気ならまず私が相手になるわよ?!」
「おじいちゃん気をつけないと私と眞子が夜中に襲うからね?」
などと私の援護に回ってくれてとりあえず二人だけでどこかに連れ去られるということは無かった。
後で明日香が教えてくれたのだが、
「おじいちゃんってね。元々軍人だったかな?何かそんな事をしてたらしくてね、その…色々持ってるのよ。武器っぽいのを。一応無茶な事しない様に私からも言っておくけど眞子ちゃんか秋穂ちゃんか私から離れない様にしておいてね。」
などと言われるとさすがにちょっと怖かった。
私のルーツは父と母が逝った事で完全に他の親戚縁者とは切れてしまったので、親戚付き合いと言うものがまったく分からなかったのだが、これから手探りでやっていく事になりそうだ。
ちなみに私がおじいちゃんに詰問されてる間クララ君は優雅にソファーに座りお茶をご馳走になっててまったく役に立たなかった。
どうも、Xジェンダーなどと言う説明がおじいちゃんおばあちゃんには理解の範疇を超えていたらしく、「とりあえず笑顔で接しておけばそのうち居なくなる珍獣」という扱いに徹している感じに見えた。
主に相手をしてるのはクララ君のお気に入りになった夏輝ちゃんなんだが…
夏輝ちゃん少々うんざりって顔が平常時の顔になりつつあるので、少しだけクララ君から引き離した方が良さそうだ。
居間から離れ、今日から泊まる部屋に移動すると、元々言っていた部屋割りを変更したらしく、眞子と秋穂、京香と夏輝ちゃんと明日香、私とクララ君が3部屋に別れるようにしたらしい。
そういえば滝の所で、「したいなら夜にいっぱい…その…二人の部屋で…」みたいな話をしてたんだが…
「実はね~♪ここには私の部屋があるの♪おじいちゃんとおばあちゃんがいつでも遊びに来いって用意してくれた部屋なのよ~♡」と言って案内してくれたのは、1階のおじいちゃんおばあちゃんが休む部屋のすぐ隣にある部屋で、
「襖が3面に有るな…」
「まぁ…そうね♡」
「そして、こっちの襖は開けたらおじいちゃんおばあちゃんの休む部屋に繋がってて、こっちの襖はダイニングへ直接繋がってて…こっちの襖は縁側廊下に全面繋がってるな…」
「すごいでしょ~♪この襖を全部開けたら風が通ってすごく涼しいのよ~♡」
明日香はもしかして…ここでイチャイチャする気だったのだろうか?
襖の無い壁には庭に出る事が出来るガラス引き戸が4面並んで設置してあり、一応ベッドとクローゼット代わりの桐箪笥が襖に仕切られた角の辺りに有るだけでとっても開放的なんだが…
とりあえず明日香を後ろからそっと抱きしめ胸を少しだけ押し上げる様にすると、顔を私の方に向けて軽くキスしてくれた。
「本当なら明さんをここに最初に連れてきたかったんだけど…ずいぶん時間がかかっちゃった。」
部屋から見える庭は広い空間があって、両脇の壁に近い場所に花が植えてあるぐらいでその奥に竹林が見える。明日香が言うには、冬場はとても綺麗な景色になるらしい。
「それで?明日香は今日二人の部屋でイチャイチャって感じに言ってたけど?まさかここでするって話なのか?」
言われて初めて気付いた様に、少しだけ挙動不審な姿を晒してた明日香だが、
「ここ以外にも二人っきりになれる所はあるのよ♡任せてっ♪」
と胸を持ち上げてる私の腕を少し押し退け、体の向きを変えて強く抱き付きキスをしてきた。
その後ご飯の準備をすると明日香を呼びに来た眞子と秋穂と一緒にダイニングへ移動すると、部屋の中にはナスが大量に置いてあった。
他にもカボチャやジャガイモピーマンなども有り、おじいちゃんの畑で取れたものを使って今日の夕食の準備をすると言う話になった。
ここの所隷子が選んだ野菜とかを調理した後の形でしか見てなかった私にはとてもいびつな形の野菜が多く有るように見えたのだが、これでも最近は形が揃った物が出来やすいとおじいちゃんが教えてくれた。
昔は半分ぐらいがヤギの角のようにグルグル巻きになった物だとか、ナスとかも二股三股に奇形になった様な物が普通に出来ていたのだが、最近の買ってきた種だとまったくそんな物が出来なくなったらしい。
ただ、その作った野菜から取った種を使うと変な形のものなどがほとんどで他にはまったく実が付かないような事も多いと言うことだったが…最近ってそんななのだろうか?
おじいちゃん、私、京香、夏輝ちゃん、クララ君で調理をしてる明日香や眞子、秋穂とおばあちゃんの後姿を見つつ話をしてると、すぐに夕食が出来上がった。
旬の野菜を食べつつ会話も弾みなんとかファミリーの一員として受け入れてもらえたような感じがした。
食後に、少しだけドライブに行かないか?という話になり、2グループに別れる事になった。
私、明日香、眞子、夏輝ちゃんと、クララ君、秋穂、京香。
クララ君が夏輝ちゃんとはなれるのを渋っていたが、私の独断で決めさせてもらった。
そしてクララ君のグループは近くにあるダム湖の近くにまだホタルが見られる場所が有るという話でそっちに行く事にしたらしい。
そして私達は明日香の舞の練習をしてると言う場所を見に行く事になった。
明日香が運転して助手席に眞子が座り、私と夏輝ちゃんが後ろに座って移動。
「明パパありがと。」
私の膝に頭を乗せて服の裾を掴みながら腹の辺りに顔を押し付けつつ夏輝ちゃんがそんな事を言ってきた。
「少しうっとおしかったんだろ?我慢しなくて良いからな。」
「うん。」
「そういえばクララ君本気で夏輝ちゃんとお付き合いしたいって言ってたみたいだけど…夏輝ちゃん的にはそこらはどうなの?」
助手席の眞子が聞いてきた。
「えっ?二人はそういう事になってるの?!私聞いてないよ?!」
「夏輝はあまり乗り気じゃないんだろ?あれなら私からあまり付き纏わない様に言っておくぞ?」
夏輝ちゃんは少し迷ってるみたいだった。
「あんなにストレートに人が居るところで好意を向けられるのってやっぱり少し恥ずかしい。でも嫌じゃ無いんだけど…」
そこまで言って私の方を向いて言葉が止まった。
「私の方がまだ気になるか?夏輝が本当に付き合っていけるのなら気にしなくても良いぞ?私はどこにも逃げないから夏輝が戻りたいって思う時に来たらまた相手してやるから。」
そう言ってやると少しだけ安心したような顔になった。
私との関係を清算してクララ君と付き合わないといけないと言う感じで考えていたのかもしれないが、娘の親友で私の事を求めてくれる女の子を、そのまま放り出す様な事は出来ればしたくない。
自分で好きな人を見つけてその人だけをみてくれるようになるのが一番とは思うが…
夏輝の肩の辺りに手を置いてたんだが、右手を持たれてしまい、夏輝のチューブトップだけのブラをして無い胸の柔らかさを今強く感じてる。これをクララ君に全て手渡すって言うのはちょっともったいない気がする。
私も人には良い事を言ってるが、心の内では自分だけの女の子を手放したくないって感情があるみたいだな。
その後目的地に着くまで夏輝は胸に触れてる手を上から両手で持つようにしてそのままの姿で横になっていた。
着いた場所には神社の大きな赤い鳥居が有り、その奥に板張りの少し高台になった舞台が有った。
そしてその舞台の上で一人の女性が奉納舞の練習をしていた。
「明日香は練習はしなくて良いのか?」
「今日は午前中に練習してるから夜の予定は無いの。全員が集まって練習って事もなかなか出来なくてね。時間の有る時に自分で来て練習することが出来るようになってるのよ。」
場所の説明を受けつつ舞台の横を通り過ぎると舞台の裏に併設されるように小さめの小屋があり、その中に巫女の衣装や小道具などが展示される様に納められていた。
その巫女装束を本番では着て踊るらしい。
中を見てると側を通った人に声をかけられた。
その人はここの関係者の人だったらしく、明日香と私達を談話室のような場所に案内してくれた。
そこには今までの奉納舞をした人の写真などが展示されていて、眞子と夏輝ちゃんは知ってる人が居るらしくじっくりと見て回る気になった様だ。
私は特にここに知り合いも居ないので二人のテンションにまったく付いていけずに椅子に座り静かにはしゃぐ二人を見てると、
「明さん、暇なら練習用なんだけど巫女の姿になってあげようか?」
と明日香が提案してくれたので、行ってみる事にした。
確か10代で今年の奉納舞の演者に選ばれたのが今日電車で会った百恵ちゃんだと言う話だったから、さっき練習してたのが20代の奉納舞の演者のはず。
顔はチラッとしか見てなかったのだが、かなり綺麗な女性だった様な気がする。
明日香と一緒にあの二人が並んでる姿はとても絵になる気がした。
少しの間舞台の袖の辺りで待ってると明日香が舞台に出てきた。
神事としての奉納舞をする練習用の姿だけあって色はそこまで派手では無いが、飾って有った衣装に近い装飾がされてあり、とても大きな提灯の照明で左右から照らされた舞台の上で20代の演者さんと一緒に合わせて踊る姿は、とても強く静謐な空間を感じさせた。
動き自体はとても緩やかな感じだが、細部に意識が通ってるようでとても緊張感がある。
5分程度の舞だったが完全に引きこまれてしまった。
「すごいな。こんな舞を踊れるとか考えた事も無かったよ。」
「ふふっ♡これぐらいならだれでもできちゃうんだよ?だってこの子も練習初めてまだ1週間ぐらいだもん。ねっ。」
二人並んで私の方を見ながら笑顔で話をしてくれてる姿なんだけど…少しだけ記憶に引っかかるものがあった。
「なぁ、この…舞ってる人に見覚えがあるんだけど…もしかしたら昼間滝に向かう小道にあったお土産屋さんに居た人?」
「はい。今日はお買い上げ頂きありがとうございます。あの時間になるとほとんど人は来ませんが…一応気をつけてくださいねっ♪少しだけ気持ち良さそうな明日香さんの声が聞こえてましたから♡」
そう言って明日香が赤い顔で呆然としてる姿を見ながらクスッと小さく笑い、そのままその女性は奥に入って行った。
その後車に戻るまでの間、明日香に小言を言われ続けた。
「もう恥ずかしくってあの場所に行けないよぉ…」
だろうな。私もそう思うよ。
今度一緒に秋穂を躾けような。
今日から3日ほど泊まる事になる明日香のおばあちゃんの家。
おばあちゃんの家と言いつつも、おじいちゃんも健在で、仕事はさすがにしてないのだが、家の周囲に家庭菜園とはとても呼べないレベルの畑を持っていて、その手入れで毎日良い汗をかいてるらしい。
そして案内された居間におじいちゃんとおばあちゃんが自分達専用の椅子に座って笑顔で話をしてた。
部屋には眞子達が思い思いに座っていて、談笑してたらしい。
秋穂は毎年会ってるらしく気軽に帰郷の挨拶をしていた。
私は二人を紹介されて自己紹介を返し、3日間の滞在の事をお願いしてるとおばあちゃんがなぜか目に涙を溜めていた。
二人にとって孫になる明日香の事をずっと可愛がってくれていた二人は、最初の結婚の話が出た時に、とても心配してたらしい。
私と付き合っていた事は帰省時によく話に出ていたらしく、
「そろそろ連れて来て話をさせろ。わしが直々に明日香を幸せに出来る男か確認してやる!」
と鼻息荒くおじいちゃんがてぐすね引いて待ってたらしいのだが、いきなり結婚すると言う話になり、さらには相手が今まで話に出てた男とは違うし、更にはもうすぐ子供が生まれるなどという話になれば、『明日香の望む話では無さそうだし…これでは幸せになれていないのでは?』という心配がずっと解消される事無く、月日が流れて行ったそうだ。
その後たまに戻って来ても京香を紹介する時などは笑顔が見れたが旦那さんを連れてくる事も無かったらしく、(実際には来る事をめんどくさがった元旦那さんが拒否していただけらしいが…)そんなことが積み重なりずっと気に病んでいたが、相手の家との兼ねあいもあり面と向かって何かが出来るわけでもなく我慢を強いられていたそうだ。
そして10年近く経った頃にいきなり離婚してそのまますぐに結婚すると言う話が届けられ、しかもその相手は元々話の中で何度も出ていた私だった事から『もしかしたら今度こそ明日香は幸せになれるのかも?』みたいな考えがやっと持てたって言っていた。
そして今回久しぶりに帰省してきて幸せそうに私の事を説明してる明日香を見て、私の人となりを感じ、他にも一緒に戻った子達の私に接する姿からやっと重たかった荷を降ろせたと気持ちが軽くなり気付いたら涙していたと言っていた。
とりあえず、
「15年前からお主には会いたかったんだ。」
と、おじいちゃんに言われるとさすがに身が引き締まる気がしたのだが、京香と眞子と秋穂が一斉に、
「おじいちゃん何威嚇するような事言いだしてるの?!やめてっ!!」
「ちょっと!!明さんに何かするって言う気ならまず私が相手になるわよ?!」
「おじいちゃん気をつけないと私と眞子が夜中に襲うからね?」
などと私の援護に回ってくれてとりあえず二人だけでどこかに連れ去られるということは無かった。
後で明日香が教えてくれたのだが、
「おじいちゃんってね。元々軍人だったかな?何かそんな事をしてたらしくてね、その…色々持ってるのよ。武器っぽいのを。一応無茶な事しない様に私からも言っておくけど眞子ちゃんか秋穂ちゃんか私から離れない様にしておいてね。」
などと言われるとさすがにちょっと怖かった。
私のルーツは父と母が逝った事で完全に他の親戚縁者とは切れてしまったので、親戚付き合いと言うものがまったく分からなかったのだが、これから手探りでやっていく事になりそうだ。
ちなみに私がおじいちゃんに詰問されてる間クララ君は優雅にソファーに座りお茶をご馳走になっててまったく役に立たなかった。
どうも、Xジェンダーなどと言う説明がおじいちゃんおばあちゃんには理解の範疇を超えていたらしく、「とりあえず笑顔で接しておけばそのうち居なくなる珍獣」という扱いに徹している感じに見えた。
主に相手をしてるのはクララ君のお気に入りになった夏輝ちゃんなんだが…
夏輝ちゃん少々うんざりって顔が平常時の顔になりつつあるので、少しだけクララ君から引き離した方が良さそうだ。
居間から離れ、今日から泊まる部屋に移動すると、元々言っていた部屋割りを変更したらしく、眞子と秋穂、京香と夏輝ちゃんと明日香、私とクララ君が3部屋に別れるようにしたらしい。
そういえば滝の所で、「したいなら夜にいっぱい…その…二人の部屋で…」みたいな話をしてたんだが…
「実はね~♪ここには私の部屋があるの♪おじいちゃんとおばあちゃんがいつでも遊びに来いって用意してくれた部屋なのよ~♡」と言って案内してくれたのは、1階のおじいちゃんおばあちゃんが休む部屋のすぐ隣にある部屋で、
「襖が3面に有るな…」
「まぁ…そうね♡」
「そして、こっちの襖は開けたらおじいちゃんおばあちゃんの休む部屋に繋がってて、こっちの襖はダイニングへ直接繋がってて…こっちの襖は縁側廊下に全面繋がってるな…」
「すごいでしょ~♪この襖を全部開けたら風が通ってすごく涼しいのよ~♡」
明日香はもしかして…ここでイチャイチャする気だったのだろうか?
襖の無い壁には庭に出る事が出来るガラス引き戸が4面並んで設置してあり、一応ベッドとクローゼット代わりの桐箪笥が襖に仕切られた角の辺りに有るだけでとっても開放的なんだが…
とりあえず明日香を後ろからそっと抱きしめ胸を少しだけ押し上げる様にすると、顔を私の方に向けて軽くキスしてくれた。
「本当なら明さんをここに最初に連れてきたかったんだけど…ずいぶん時間がかかっちゃった。」
部屋から見える庭は広い空間があって、両脇の壁に近い場所に花が植えてあるぐらいでその奥に竹林が見える。明日香が言うには、冬場はとても綺麗な景色になるらしい。
「それで?明日香は今日二人の部屋でイチャイチャって感じに言ってたけど?まさかここでするって話なのか?」
言われて初めて気付いた様に、少しだけ挙動不審な姿を晒してた明日香だが、
「ここ以外にも二人っきりになれる所はあるのよ♡任せてっ♪」
と胸を持ち上げてる私の腕を少し押し退け、体の向きを変えて強く抱き付きキスをしてきた。
その後ご飯の準備をすると明日香を呼びに来た眞子と秋穂と一緒にダイニングへ移動すると、部屋の中にはナスが大量に置いてあった。
他にもカボチャやジャガイモピーマンなども有り、おじいちゃんの畑で取れたものを使って今日の夕食の準備をすると言う話になった。
ここの所隷子が選んだ野菜とかを調理した後の形でしか見てなかった私にはとてもいびつな形の野菜が多く有るように見えたのだが、これでも最近は形が揃った物が出来やすいとおじいちゃんが教えてくれた。
昔は半分ぐらいがヤギの角のようにグルグル巻きになった物だとか、ナスとかも二股三股に奇形になった様な物が普通に出来ていたのだが、最近の買ってきた種だとまったくそんな物が出来なくなったらしい。
ただ、その作った野菜から取った種を使うと変な形のものなどがほとんどで他にはまったく実が付かないような事も多いと言うことだったが…最近ってそんななのだろうか?
おじいちゃん、私、京香、夏輝ちゃん、クララ君で調理をしてる明日香や眞子、秋穂とおばあちゃんの後姿を見つつ話をしてると、すぐに夕食が出来上がった。
旬の野菜を食べつつ会話も弾みなんとかファミリーの一員として受け入れてもらえたような感じがした。
食後に、少しだけドライブに行かないか?という話になり、2グループに別れる事になった。
私、明日香、眞子、夏輝ちゃんと、クララ君、秋穂、京香。
クララ君が夏輝ちゃんとはなれるのを渋っていたが、私の独断で決めさせてもらった。
そしてクララ君のグループは近くにあるダム湖の近くにまだホタルが見られる場所が有るという話でそっちに行く事にしたらしい。
そして私達は明日香の舞の練習をしてると言う場所を見に行く事になった。
明日香が運転して助手席に眞子が座り、私と夏輝ちゃんが後ろに座って移動。
「明パパありがと。」
私の膝に頭を乗せて服の裾を掴みながら腹の辺りに顔を押し付けつつ夏輝ちゃんがそんな事を言ってきた。
「少しうっとおしかったんだろ?我慢しなくて良いからな。」
「うん。」
「そういえばクララ君本気で夏輝ちゃんとお付き合いしたいって言ってたみたいだけど…夏輝ちゃん的にはそこらはどうなの?」
助手席の眞子が聞いてきた。
「えっ?二人はそういう事になってるの?!私聞いてないよ?!」
「夏輝はあまり乗り気じゃないんだろ?あれなら私からあまり付き纏わない様に言っておくぞ?」
夏輝ちゃんは少し迷ってるみたいだった。
「あんなにストレートに人が居るところで好意を向けられるのってやっぱり少し恥ずかしい。でも嫌じゃ無いんだけど…」
そこまで言って私の方を向いて言葉が止まった。
「私の方がまだ気になるか?夏輝が本当に付き合っていけるのなら気にしなくても良いぞ?私はどこにも逃げないから夏輝が戻りたいって思う時に来たらまた相手してやるから。」
そう言ってやると少しだけ安心したような顔になった。
私との関係を清算してクララ君と付き合わないといけないと言う感じで考えていたのかもしれないが、娘の親友で私の事を求めてくれる女の子を、そのまま放り出す様な事は出来ればしたくない。
自分で好きな人を見つけてその人だけをみてくれるようになるのが一番とは思うが…
夏輝の肩の辺りに手を置いてたんだが、右手を持たれてしまい、夏輝のチューブトップだけのブラをして無い胸の柔らかさを今強く感じてる。これをクララ君に全て手渡すって言うのはちょっともったいない気がする。
私も人には良い事を言ってるが、心の内では自分だけの女の子を手放したくないって感情があるみたいだな。
その後目的地に着くまで夏輝は胸に触れてる手を上から両手で持つようにしてそのままの姿で横になっていた。
着いた場所には神社の大きな赤い鳥居が有り、その奥に板張りの少し高台になった舞台が有った。
そしてその舞台の上で一人の女性が奉納舞の練習をしていた。
「明日香は練習はしなくて良いのか?」
「今日は午前中に練習してるから夜の予定は無いの。全員が集まって練習って事もなかなか出来なくてね。時間の有る時に自分で来て練習することが出来るようになってるのよ。」
場所の説明を受けつつ舞台の横を通り過ぎると舞台の裏に併設されるように小さめの小屋があり、その中に巫女の衣装や小道具などが展示される様に納められていた。
その巫女装束を本番では着て踊るらしい。
中を見てると側を通った人に声をかけられた。
その人はここの関係者の人だったらしく、明日香と私達を談話室のような場所に案内してくれた。
そこには今までの奉納舞をした人の写真などが展示されていて、眞子と夏輝ちゃんは知ってる人が居るらしくじっくりと見て回る気になった様だ。
私は特にここに知り合いも居ないので二人のテンションにまったく付いていけずに椅子に座り静かにはしゃぐ二人を見てると、
「明さん、暇なら練習用なんだけど巫女の姿になってあげようか?」
と明日香が提案してくれたので、行ってみる事にした。
確か10代で今年の奉納舞の演者に選ばれたのが今日電車で会った百恵ちゃんだと言う話だったから、さっき練習してたのが20代の奉納舞の演者のはず。
顔はチラッとしか見てなかったのだが、かなり綺麗な女性だった様な気がする。
明日香と一緒にあの二人が並んでる姿はとても絵になる気がした。
少しの間舞台の袖の辺りで待ってると明日香が舞台に出てきた。
神事としての奉納舞をする練習用の姿だけあって色はそこまで派手では無いが、飾って有った衣装に近い装飾がされてあり、とても大きな提灯の照明で左右から照らされた舞台の上で20代の演者さんと一緒に合わせて踊る姿は、とても強く静謐な空間を感じさせた。
動き自体はとても緩やかな感じだが、細部に意識が通ってるようでとても緊張感がある。
5分程度の舞だったが完全に引きこまれてしまった。
「すごいな。こんな舞を踊れるとか考えた事も無かったよ。」
「ふふっ♡これぐらいならだれでもできちゃうんだよ?だってこの子も練習初めてまだ1週間ぐらいだもん。ねっ。」
二人並んで私の方を見ながら笑顔で話をしてくれてる姿なんだけど…少しだけ記憶に引っかかるものがあった。
「なぁ、この…舞ってる人に見覚えがあるんだけど…もしかしたら昼間滝に向かう小道にあったお土産屋さんに居た人?」
「はい。今日はお買い上げ頂きありがとうございます。あの時間になるとほとんど人は来ませんが…一応気をつけてくださいねっ♪少しだけ気持ち良さそうな明日香さんの声が聞こえてましたから♡」
そう言って明日香が赤い顔で呆然としてる姿を見ながらクスッと小さく笑い、そのままその女性は奥に入って行った。
その後車に戻るまでの間、明日香に小言を言われ続けた。
「もう恥ずかしくってあの場所に行けないよぉ…」
だろうな。私もそう思うよ。
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