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06 とあるゲーマスの苦悩

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「まさかなぁ…こんな事になるとは…」

古代ローマのトーガ風衣装を着込み髪を高く結い上げ南国のリゾート地でちょっと年配のおば様たちが年甲斐も無く思わずハイビスカスを飾りに使っちゃって痛いイメージを振りまいてそうなオブジェを盛り沢山状態で装着している女…

まぁ、そこそこ可愛い女が溜息吐きつつ左のモニターを見ている。

右手には5ボタンワイヤレス光学マウスを持ち左手の下にはキータッチがとても良いと評判のREALFORCEシリーズのキーボード、それとモニターの下の辺りに液晶ペンタブレットやスマホ用ゲームコントローラーとPC用のコントローラー…
どっぷり頭までゲーム浸かった完全依存している廃課金ゲーマーのような装備品が山盛りになっていた。

左に顔を向けると3個並んだ一番左のモニターに男が1人無菌室の様な場所に寝させられ…体中に器具が取り付けられている。

「ログイン状態のまま意識が無くなると戻れないのかぁ…これってあいつら理解してるのかなぁ…」

今度は右のモニターに目を向けると、そこに映っているのはどこかの家の中の部屋らしい。
テーブルとソファーのセットが設置してあり、アイランドキッチンが見え…テーブルを挟んで反対側には50インチ位のテレビが置いてあった。
室内は空調が効いているらしくそこそこ涼しい環境の様でプリントTシャツを着た腕に包帯を巻いた青年と少しやつれた雰囲気の40代位の女性がテーブルに着いて各々の手元にあるアイスコーヒーが注がれたグラスに視線を向けている。

「なんかごめんね宮元みやもと君。時間取らせちゃったみたいで…」
「えっ?…あぁ…それはまぁ…」
宮元と呼ばれた男の顔にはガーゼが貼られていて左のまゆ毛が無くなっている。

「それで…あの子がゲームしながらお湯をこぼしたのが原因だったって話だから今のところ保険がどんな感じになるかがまだ分からなくってね。」
「あ、いや…俺も一緒にあの部屋に居たのにあいつが食べながらゲームしてたの止めなかったんで…俺の事は気にしなくてもいいですから。」
「本当にごめんね宮本君。」
女の方が涙ぐみながら頭を下げているのを苦いものでも飲み込んだ様な顔で見ている宮元。


モニターの前で溜息を吐く古代ローマ風な女。

「この宮元って奴、地獄行き決定ね。」
女がキーボードとマウスを動かし真ん中のモニターに表示してあったなにやら幾何学模様の映像の中に座標系が回転している。
座標系から伸びたラインの先にはタブが表示されていて『MIYAMOTO』と表記があり、座標系のそばに『心理モニター』と書いてあるラベルがあり✔ボタンが表示されている。
女がマウスカーソルを映像の下のシークバーに合わせてゆっくり戻して行くと、モニターの中で謝っていた女と宮元と呼ばれていた男の画像が止まり急速巻き戻しがしばらく表示され…別の映像が映る。

場所は左のモニターの中の男が寝ている部屋の中とガラスで仕切られた控え室の様な場所で、宮元と女とその女の旦那さんと医者が椅子に座って話をしていた。
そして皆を見下ろす様に立って話を聞いているスーツ姿の男が二人。
1人は年配のかなりくたびれた中年で、もう1人はそこそこ若い男。


はぁー…やっべぇよ…なんでカップ麺こぼしたら火が出ちゃうの?
これって俺のせいじゃないよな?
あいつが掃除してなかったせいだから…

医者が手元のタブレット画面を見ながら説明をしている。
「…今のところ生体反応はあるので意識が戻る可能性はありますが…強い火の中にいたのが原因だと思いますが…肺の機能が著しく落ちている状態です。一応人工呼吸器で補っていますが…まだまだ予断を許さない状態です。」
医者が容態の説明をしてくれて分かったのだが…あいつ…死ぬかもしれないって…


じゃぁさぁ…火を出した責任って俺が背負わなくても良いよな?
宮元の顔が小さく笑みを浮かべた。


部屋の中に重たい沈黙の空気が漂う中、立っていた男が声を出した。
「君は同じ部屋に居たんだったよね?なんで彼は奥の部屋に逃げて行ったんだと思う?」
「えっ?!」
あっ…やべっ…声が変な感じになった…
このおっさんずっと俺の事見てるけど…嘘ついたのがばれてるって事…無いよな?
「彼が…春樹はるき君が自分の部屋のリビングでゲーム機を使って遊んでいる時君はトイレに行っていたってって言っていたと思うが…なぜ君が驚いてトイレから出るほどに火の勢いが強い状態で春樹君は奥の部屋に逃げたんだと思う?」

…あぁ…そうか、間取りから考えたら逃げるならそっちに行かないはずって思ってるって訳だな。
「実は…これ春樹がナイショにしてくれって言ってたから…言えなかったんだけど…あいつちょっとその…アレなフィギュアを集める趣味持ってたんだ。それをどうしても助けたかったんだと思うんだけど…奥の部屋から一回荷物を持って出てきて…もう一回戻って行ったんだ…」
春樹のお母さんとその旦那さんがすごく残念な息子を見る目でガラスでの先で寝ている春樹を見ている。

「そうか…君が持って逃げたバッグに入っていたのが春樹君が持ってきた物だった訳か。」
なんかこのおっさんの顔…すごく腹が立つなぁ…
ちなみに俺が持って出た物は俺が家に置いておいて家族にでも見られたら…非常~~に危険な物で…春樹の部屋に預けておいた物だったんだけど…
一応回収したのは良いけどどう言って誤魔化したらいいのか分からなかったんだよな。

だけど…春樹がこのまま死ぬなら…

「あぁ、あいつがどうしても…死んでも守りたいって言ってたお宝だから…グズッ…」
なんか俺…役者の素質とかあるんじゃね?

頭の中でこんなストーリーって想像しながら話をしてたら春樹が火に包まれた奥の部屋からバッグを投げて『俺の宝をたのむぅ~~!』みたいに言ってきたシーンで思わず涙が出てきたし♡
「…辛い事を思い出させたようだな、悪かったね。」
「グズッ…いいえ。」
なんかおっさんと若い男が耳打ちして話をしてるけど…これで大丈夫かな?



「この宮元って奴…クズね。」
さて…さすがにこのまま春樹君を死なせるのは目覚めが悪いんだけど…一応説明ぐらいしないといけないわよね…
「まったく…」
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