貞操逆転世界って天国だったんだなぁ・・・

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黒いスエットの上を脱いだらダブダブのランニングシャツだったので、スエットの上を朱美に渡してとりあえず着させた。
そして下を脱いだらいつも愛用していたトランクスだったので下も脱いで朱美に着させた。


俺は今、某アニメの勘太君によく似た姿になってる気がする。


「なんかこれは…私のびてきかんかくではNGな姿なんだけど…こんな姿で外に出ても大丈夫なの?」
俺以上に足元の丈が余ってるが、上の服の裾がひざ丈なので、腰の辺りをなぜか室内に置いてあったバックルの辺りが野獣っぽいベルトを使って縛るとそこそこニューデザインな感じになった朱美が誕生した。

「パステルカラーのパジャマ姿で外をうろつきまわるよりはまだマシだな」
「それに小吾君のその姿…」
なぜか俺のランニング&トランクス姿を見て恥ずかしそうにする朱美。

「何か変か?こんな姿は夏場いつも見てるだろ?」
「パパの姿でなら何度も見た事あるけど…でも小吾君は…その…だって…パパとは違うから…」

チラチラ何度も見られてなんとなく居心地悪い感じがするが…大人のトランクス姿は外部で披露したらさすがにまずいが、トランクスと言う名の下着がまだ浸透してない…というか、そもそも存在すらしてない頃の日本でならば、俺のトランクス姿はパンツを穿き忘れた短パン小僧みたいなものだ。

はしゃいでコンチワ状態にならなければ特に問題は無い。

その証拠に部屋にある窓から外を見てると、ここらに住んでるらしい男子が集団で走り回ってる姿が何度か見られたが、どいつもこいつもはみチンしそうな短パン姿でTシャツかランニング姿だった。
もしかしたら全員が帽子をかぶっていたので、そっちの方がTPO的には必要かもしれないが、今現在手元に無いものはしょうがない。
そして女の子の姿はほとんど見当たらなかったが、一人だけ、すごくレトロな車(俺的感覚でレトロなだけでここでは最新式)に乗った女の子が白い手袋を付けた爺やとか呼ばれてそうなお爺さんにドアを開けてもらって出てきて、目の前の大きな家にそのまま入って行った。服はビクスドールかロー〇ン〇イデンって感じだった。

「あの女の子の姿が一般的とはさすがに思わないけど、あまり露出する様な姿にはならない方がいいだろうと思うんだ」
「まぁパジャマよりはマシかもしれないけど…」
部屋のドアの近くに設置してあった姿見を使って少しでも見た目が良くなるようにブツブツ文句を言いながら頑張る朱美。


そしてしばらくして自分の美的感覚的になんとか合格点を出せる姿になった朱美が俺の方を見て声をかけて来た。
「それで?どこに行くの?」
「お~見違える様だな♡これならそこらのガキどもも2度見するだろうな♪」
「別にそこまででも無いし…」
うんうん♪まんざらでもないってかぁ♪こういう反応も可愛いよなぁ~♪

実は、こんな感じに地道にヨイショをしておけば、後で数倍になって戻って来るんだよ君達~♪勉強になるだろ~♪
俺は真琴達で学んだ。少しづつでもヨイショしておかなければ、後々自分が何かやらかした時に負債がとんでもない事になるって事もな。
良くも悪くも女性って言うのは感情的になりやすい。これは生物的に求められる役割の違いが原因なので、そこだけを捉えて『男は陽の気質女は陰の気質』なんて事を言ってる自称どこかの偉い人なんてのは勘違いも甚だしいって事。

ちなみに足元は二人とも裸足。
「とりあえず外に行こう」

そして部屋を出た所は爆撃でもされたような廃墟の様な場所で、階段とかギリギリ人が降りれる程度の強度しか無さそうな感じだった。上でジャンプとかしてたらそのまま崩れそう。
2人で開いていた穴に落ちない様に気を付けつつ下の階に行くと、階段ホールみたいな場所が半分以上崩れていてそんなに長く持ちそうにない感じだった。

「今居る場所がどこか分かる所に行って、ついでに今がいつなのか確認する必要があるんだけど…」
「ちょっと!お尻をつかまないでよ!!エッチ!」
「この体だとさすがにお姫様抱っことかお嬢様抱っこはムリなんだからしょうがないだろ?一応お米様抱っこにしなかっただけ配慮と思ってくれよ。ついでに言えば俺の手の平よりもお前の半ケツが大き…ごめんなさい首絞めないでぇ!!」
「まったく…でもお嬢様抱っこってのはパパがよく言ってたししてくれたから分かるけど、おこめさまだっこって何?」
俺の手のひらより朱美の尻の半分の方がデカいって本当の事が口からちょろっと洩れただけなのに首絞めるか?
「何?何か言いたい事があるの?」
「なんでもありません。って言うかおこめさまだっこしてみるか?なんならそっちの方が運びやすいかもしれないけど?」
「体を起こしたら重すぎ!腕が~とかデリカシーのないことを言い出すし…しょうがないからずっと抱き着いてるけど…さすがに恥ずかしいから、変な感じじゃなければそれでもいいわ」

おやおや~?ずいぶんと上からモノを言ってくるじゃないか?
「お前何なら歩いてもいいんだぞ?」

「嫌よ。なんで裸足で歩かないといけないのよ。そんな事はしゅくじょとしてゆるされないって朱里母さんが言ってたわ。真琴母さんも歩くぐらいなら運ばせなさいって言ってたから、小吾君がはこんでよ」
首に巻き付いてる朱美の腕にちょっと力が入った。
自分の首に巻き付いた腕から絶対に降りないって鉄の意志を感じる。

それにしても朱美は朱美で、朱里と真琴の英才教育がしっかりと根付いて開花してる感じだな。
ただ、どんな話をしてれば、『裸足で歩くぐらいなら運ばせろ』なんて指導が出てくるのか、そっちの方が気になる。あの二人も大概普通からはかけ離れた人生を送ってきてるはずだからなぁ…とりあえず一回まじめにユカちゃん辺りも交えて子供の育て方について話し合った方がいいかもしれないな。

色々考えながら朱美をおんぶして運ぶ俺だったが、まぁでも?子供の体力で自分と同じサイズの女の子を運ぶのはかなり大変な訳で、俺は何度も朱美を降ろして休憩する必要があった。

「次はあのちょっと高くなった所までよ」
「へいよぉ~…」
運ぶ俺と運ばれる朱美。

「次は…あ、あの階段の所ならキレイみたいだからそこまで行って♪」
「へ~い…」
ちなみに一回お米様だっこしてあげたら『もう絶対にイヤ!』って言われた。
たぶん抱っこして何気なくお尻をポンポンって叩いたのがまずかったんだろうなぁ…失敗。
そして運ぶ俺と運ばれる朱美。

どうも朱美は運ばれる行為がなんとなく楽しくなってきてる感じ?
昔の子供がよくやっていたらしい『地面は今から地獄~』みたいな『高オニ』遊びでもしてる感じに行き先を楽しそうに指示し始めた。

そしてやっとバスの停留所が近くにある駄菓子屋さんか、よろづ屋みたいな建物にたどり着いた。

「ここってコンビニ?」
お店の前に置いてある木のベンチに腰掛けて後ろを覗き込みながら聞いてくる朱美。
「ハァハァ…さすがにフランチャイズのシステムはまだ無い気がするが?」
俺達がたどり着いたお店は日用品などを売ってるお店だった。なべとかバケツとか雑貨類が何でもありそうな感じの品ぞろえ。

そして店の一番奥の辺りにシワシワのおばあちゃんがラジオか何かを聴きながら店番をしていた。
ちなみに耳がだいぶ遠いのか音がよく聞こえる。

「あっ、今テレビから昨日あった事言ってなかった?」
「あぁ、昨日が9月13日って言ってたな。ちなみにこの頃はまだテレビは無いはずだから、たぶんラジオな。問題は昭和何年かだが…」
「あっ、今ドイツれんぽうきょうわこくたんじょうから1週間って言ってた。…ラジオってWEBでしか聞けないんじゃないの?こんな昔の日本で聞けるわけないじゃない。私が子供だからってなにかテキトーなこと言ってない?」
ドイツが出来た…ドイツって確か東西に分かれたからけっこうもめたって習ったような…ってことは、たぶん終戦後数年って辺りじゃないかと思うが…
「適当な事とか言ってないし。って言うかそもそもラジオってのはWEBで聞けるようになる前に電波で流れてたの。車でも…そう言えば最近の車にはラジオって付いて無い?って言うか、なぁ朱美、第2次世界大戦の終戦って1945年だったか?」
「へーラジオってでんぱでも届くんだ~知らなかった。ネットで聞くのがふつうだと思ってた。って終戦の年?確かそうだと思うけど…?」

ラジオの話はそろそろ良いだろう。

「とりあえず終戦後2~3年ぐらいは経ってる頃なんじゃないかと思うけど、ドイツが出来た年って分かる?」
「…小学校3年生で世界史は習わないからわかんない。でもテレビが無いって…私ここではいきていけないわ」
「そっかぁ生きていけないかぁ…まぁ俺も今じゃぁネットが無い生活とか無理だろうなぁ…それにしてもよく終戦の年を知ってたな?すごいんじゃないか?朱美ってもしかして天才?」
「天才かどうかはしらないけど…でも学校の道徳の時間に戦争の事って毎年やってるから知ってる子…多いんじゃないかな?」

褒められてちょっと嬉しそうな朱美♡
イイネェ~♪もっと褒めて伸ばしていかなければ♡

「そう言えば広島県の学校って、原爆記念日に関してすごく詳しく勉強するって確か前に聞いた事があったな。なるほどなぁ」
「だからそんなにすごい事じゃないの!で?いつなのかは分かったけど、ここがどこかは分かったの?」
おっと、褒められて嬉しいけどちょっと恥ずかしいから話題を早く変えたいって思いが良く伝わって来るぞ~しょうがないなぁ~♪

「そうだなぁ…ここらで地域の特定が出来そうな何か…お店に道の駅みたいにどこに住んでるだれさんが作ったニンジンですみたいに書いてあればすぐに分かるが…」
「さすがに生ものは売ってないみたいね」
店の入り口に置いてあるベンチ椅子に座りながら店の壁に貼ってあるブリキ製のタバコの看板に視線を向けつつ何気なく答える朱美。

「それなら聞くしかないな。ばーちゃーん!ここなに県?」
「へっ?」
いきなり大声を出した俺をびっくり眼で見上げてる朱美と、うちわで何かをパタパタと追っ払いながら、じっとりとした視線をむけてくる店番おばあちゃん。
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