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第一章 召喚前?

11 村に行こう

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なんとな~く生暖かい視線を感じて我に返ったきよしはニナとレテーナに答える。
「まぁ…ニナの家族ならばもう俺の家族みたいなものだ。さっそく迎えに行くとしよう。」
とりあえずレテーナを介してニナに俺の言葉が伝わり少しほっとした顔になるニナ。

その後洞窟内を移動して壁とか触って確認していた事でそこそこ服が汚れていた事に気付いた清だが、今着ているYシャツと中に着ているランニングとスラックスを除いて着れそうなものは昨日探索に行く前に脱いで車の運転席に置いたスーツの上着ぐらい。
ここでランニングとYシャツを洗うと体を覆う衣類がスーツだけと言う事になる。

今の所まだこの辺りにいつの間にか着て2日目の清には下着も何も着ずにスーツを着るというどこかのホストや芸能人みたいな芸風を受け入れられるまでには追い込まれていなかったので、とりあえず汗臭いのを許容してそのまま迎えに行く事にした。
「そう言えばレテーナ?ニナの村って服とか下着とかって売ってたりするかな?」
ニナの持ち物から無い可能性が高いとは思いつつも一応確認してみた。
『…服はあるけど売るって何?』
たぶんレテーナの答えはこんな意味だったと思う。

ニナの行動を見る限りでは、もし交易などが行われていたとしたらニナにはそれがどんな意味なのかぐらいは理解できるはずで、その事を俺に伝える程度の能力を持っている様に感じた。
その認識を元に想像するとニナの村って言うのはよその村と交易をすると言う事は無いはずで、その村だけで完結できてしまう程度には自立している事が想像できる。
そのおかげでお金を使う概念が発達する必要が無かったのではないかと想像できるのだが…

ますますこの場所が地球じゃない可能性が高くなったのを感じた清だった。

だとしたら…何かと交換を基本方針として考えて何か持って行った方が良いかもしれないか…
こんな未開の地で生活する様な人達が欲するものってどんなものだろう?

とりあえずニナとレテーナを連れて廃車に近い車の所まで移動してどれが価値があるかを確認してもらった。
「とりあえずニナ、レテーナ、この車の中から服とか下着類なんかと交換できそうな物がどれかを確認してくれるか?」
ニナとレテーナが再度俺の理解出来ない言葉を使い話をした結果1人と1頭は車の周囲をおっかなびっくり回りながらニナは指を出してツンツン、レテーナは爪を出してカンカン確認して回っていた。

そしてニナが俺を引っぱって連れて行った場所で指差したのが運転席側のドアミラーだった。
なるほど、確かに金属製の物がほとんど無い様な場所ならガラスとかも作れないはずので、鏡などはとても重宝されるだろうな。
とりあえず運転席側は配線だけでかろうじて繋がっていた状態だったのでそれを工具で切り取りドアミラーを一つ確保し、ついでに鏡になっている物を車の中で確認したらルームミラーに取り付けていた防幻効果のある後付けミラーと助手席のサンバイザーに収納されていた10cm×8cm程度の鏡を見つけた。
とりあえず見つけた鏡に関しては俺には必要ではなかったので交換物資として船まで運ぶ様にニナにお願いしたらなんとな~くだが、『これ欲しいなぁ~だめ?』と言ったニナの心の声が届いた気がした。

…これが初おねだりか♡ういのぉ~♡

俺はその場でニナにどれでも好きな物を一つ選んで自分の物にする様に身振り手振りで伝えたらニナが抱きついてチュッ♡ってしてくれた♡
世の中の男が貢いでしまうのもしょうがないと言う現代日本の平均的なモテナイ男の思考を理解出来てしまった清だった。

ニナとイチャイチャしていたらいきなり両肩に鋭い爪が食い込み首筋を舐められた。
「うほっ♡…おいレテーナ。呼ぶなら吼えるとかでも良いんだぞ?」
『そう?』
肩に刺さる爪の痛みで現実に戻って来れた清はとりあえず一言物申しておいてからレテーナに向き直った。
「それで?レテーナはどれが交換に使えそうって思ったんだ?」
清が確認するとレテーナが車の凹んでスポット溶接部分が取れ触ると怪我でもしそうな状態になってる鉄板の辺りを爪でカリカリして教えてくれた。
もしかしたらだが…鉄板が交換材料になるって言ってるのだろうか?
「なぁレテーナ、村ってさぁ…鉄製品はあまり無かったりするのか?」
ニナの持ち物からたぶんそうなんじゃないかとの予想はあったがとりあえず確認してみた所、『Yes』の答えが返ってきた。
だとすれば鉄じゃない物を切ったりするのに使っている様な技術レベルの場所だと言う事になるのだが…

なるほど、そろそろ確定しても良さそうだな。
地球には鉄製品が入り込んでいない様な場所はまず無い。
そもそもアマゾンの奥地とかでも腰ミノ着けた現地人とかでも携帯電話を持ってたりする様なご時勢なのだからここはそれ以外の場所と言う事になる訳だ。

まぁねぇ…こんな廃車同然の車と俺がこんな南国の砂浜にいきなりたどり着いているってのもそもそもおかしい感じではあったんだよな。

それまでできるだけその事に触れずに居ようとしていた清だったが、テクノロジーに溢れた現代日本での生活と昨日と今日ニナと一緒に生活してきた事を天秤にかけて圧倒的多数で現在の状況を選べる程度に心が決まっていたことも手伝い、案外スッとそんな状況を飲み込めてしまった。
実際の所は未練が無いとは言えないのだが、それも含めてニナと一緒に居る事でその寂しさ辛さを払拭できると心のどこかで判断したからこそその事を理解したというのが正解かもしれないのだが。

とりあえず今必要なのはここが地球じゃないという現実を考える事では無く、パンツを再入手して現代日本人らしさを取り戻す事だと思い鉄板を取り外せそうな場所を確認してみた。
パンツを穿いたぐらいで現代日本人として返り咲けるかどうかはこの際置いておくとして、この廃車同然の車でもそこそこ生きていく為には使えそうだと言う事を理解してちょっとだけ不安だった気持ちが楽になった清だった。

色々車を見て回った結果、一番簡単に取り外せそうな場所が壊れかけのスライドドアだと言う事が分かり、スライドせずに開いた状態のドアの先端部分のガイドローラーをボルトを緩める事で取り外しなんとか船まで運んだらけっこう時間が経っていた。

腕時計の表示はAM10:15
船で移動するのを前提に考えても村に着いた辺りで昼ぐらいか。

レテーナにその事を確認すると村の近くにもパラミーの実は生っているとの回答があったのでそれを信じて船の移動を開始…しようと思った所で1個忘れていたのを思い出した。

たぶんだが、ニナはこの船を昨日係留されていた場所まで動かせない。
そしてこれもたぶんだが、俺は体力的には動かせそうだが、落ちたら死んじゃう。

とりあえず移動前に船にアウトリガーを用意してみる事にした。

ニナの船はカヌーみたいな形状で全長が大体5mほどあり幅が1m前後の木製。
これの上に立って外海から珊瑚礁に向かって入ってきた波をうまく乗りこなして櫂を漕ぐのがどれだけ難しいかは想像したら分かるだろう。
と言う訳でせめて自分が立つ場所が海面の揺れはしょうがないとしても船の回転による傾きを止められるだけの浮力を持たせたアウトリガーを取り付けなければならない。
ここで問題になるのが浮きそうな物なのだが…

車の中にある気密性を維持できそうな物と言うと…すぐに目に付くのは金属製ガソリンタンク(5ℓ)ぐらいか。
でも…中身のガソリンはもう少し持っておきたいよな。
まぁでも俺の貧乏性が祟って気づいたら腐食したタンクからガソリン漏れてなくなっていたって事も考えられるのだが…
ちょっとだけ思案した後にこのタンクはそのまま置いておく事にした。

そして次に浮きそうなものと言うとエンジンルーム内にあるリザーブタンクだとかウォッシャータンク辺りになるのだが、そんな物を取り付けたとしても反力を考えたら繋ぐ材料がそこらに生えている木になるのでまったく意味が無い。
だとすれば車から浮力のあるものを探すより、浮きそうな木材を広く幅を取って取り付けた方がまだ安定するだろう事が分かった。

「なぁレテーナ、この辺りに浮き易い木とかある?」
聞いてみたら昨日俺の顔を嘗め回した場所の近くにそんな木が生えているらしい事を教えてくれた。
と言う事は、とりあえず今回ここからアウトリガー素材の手に入る場所までは不安定な船を操り移動するしかないって訳だな。

ちょっとだけニナに操船をお願いしたくなった清だったが、ニナは船に乗るとすぐに船の先の方に移動して座り可愛い笑顔を向けてきた。

さっきよりもう少しやる気になった清は、なんとなくだが…ニナの尻に自分から敷かれていくのも悪い人生じゃないかもと考えながら船を漕ぎ始めた。
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