先生、僕って…なんか転生してるみたいなんですけど

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第一章 青葉

14 暗躍と脱出

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♡♥美香♥♡



「ねぇ…今の話ってどう思う?」
私は自分が見ている映像が信じられないのと聞こえる話の内容も全く理解できないんだけど…

今日愛奈と愛奈のお兄さんを拉致して2人がどんな反応するのかを見る為に色々裏で準備してここに来ていたんだけど、なぜか運ばれてきたのが愛奈のお兄さんと全く関係ない小さな女だった。

思わず失敗した連中をコンクリート詰めにして海に放り込ませてしまおうかと思って準備させていたんだけど、そんな事をしていたらお兄さんと女が起きてなんだかわけの分からない事をやり始めた。

ちなみに愛奈が来てない事を知った詩織はため息一つ吐いてさっさと帰って行った。


「愛奈のお兄さんって魔法使いって事?でもあの高さをジャンプで上がれる人って…本当に人間なの?」
美園も私と同じ感覚で驚いてるみたいね。
普通の人は垂直に2m以上跳ぶ事なんて絶対に出来ない。調べた事は無いけど世界記録でも1mをちょっと超えるぐらいじゃないかと思う。
もしそんな事が出来る人が居るなら、背面飛びの世界記録がもう1mぐらい高くなる。違う、助走の速度も変わるから2mぐらい高くなるかも。

しかもお兄さんってあの女を肩に担いだままあんな場所まで跳んだ…ライブで見ていた自分の目が信じられなかった。

「それよりもお兄さんが引き千切ったロープってあれ登山用って言ってたよね?中古品を使ってたとかってオチじゃないのよね?」
確かにそれは気になる。
「ねぇ美園の言ってる事ってどうなの?まさかそんなすぐに切れる様なモノを使ってたの?」
「それはあり得ません。一応あの部屋の中を詳しく探せばあのロープを切れるナイフが隠してありますが、ロープもナイフも新品です」
私に付いてる組の若い連中のまとめ役をしている男が答えてくれた。

「じゃぁ愛奈のお兄さんはそんな人を何人も吊れる様なロープで後ろ手に縛られていたのに引き千切ったって事になるのね。ドーピングなども一切せずに」

まとめ役の男が少し考えて答えた。
「かなり危険なブツですが、幾つかあの様な能力を発生させる薬があります。脳内麻薬を一時的に大量に発生させて狂人の様になる薬です。一時的に常人の倍以上の力を出せるようになりますが、あの様に受け答えできる精神状態ではいられません。あの男は明らかに異常です」
組が扱う薬でも劇薬レベルのものを使っても愛奈のお兄さんのやった事は再現できないって事…

「今日はあなた達の命日になると思ってたけど、もう少し働いてもらうわ。武術の心得のあるものは誰?」
部屋の隅に立って微動だにせず額に汗を垂らしていた10人ほどの中から3人が静かに前に出てきた。

「そうしたら…一応今日は解散しましょう。その3人には色々薬を使ってもらう事になるかもしれないけど…大丈夫かしら?」
「美香ちゃん。あまり無茶な事はしない方がいいよ。さすがにそんな事までしたらパパ達が怒るよ」
美園が心配してるけど、こんなとんでもない力を持つ愛奈のお兄さん…詳しく知っておかないと他所の組にでも取り込まれたら大変な事になる。
「そこらへんは後ろの人達がうまく動いてくれるはずだから…大丈夫よね?」
首を回して男達の方を見たら全員が揃って地面に跪いた。

「美香お嬢様のお世話をする為に集められた者たちです。命をささげられる者達しかここには居ません。ご安心ください」
まとめ役の男が地面に視線を向けたまま答えた。



「ねぇ美香、愛奈のお兄さんどうするの?そろそろ戻さないと愛奈が心配する頃じゃないかな?」
「そうね。確か愛奈が、お兄さんが夕方から病院に行くから少し帰るのが遅くなるみたいな事を言ってたから、そんなに時間はなさそうね」
詩織が言いそうな事を美園が言い出した。詩織って愛奈の事をすごく心配するのよね。まぁでもあの愛らしさは誰でもメロメロになっちゃうと思うけど…

本当なら今日は、愛奈とお兄さんをあの部屋で少しの間観察して、可愛らしい愛奈の姿を楽しんですぐにネタバラシをして、怒る愛奈を宥めながらみんなでご飯にでも行こうと思ってたのに…ハァ…とんでもない事になっちゃったなぁ。

「ンー…とりあえず、そうね。建築現場の管理人みたいな人に2人を見つけてもらって2人が乳繰り合ってたのかって誰何させる感じに聞かせたら…たぶんだけどこっちの思うような反応を2人が見せてくれる気がしない?」
「美香ってよくそんな事すぐに思い付くね…私には無理」
「そんな事無いわ。美園ももう少しだけ人が恥ずかしがるような事に気が付ける様になれば、似た様な感じの事が出来る様になるわよ」
「ねぇ美香、そんな事を言ってると愛奈に嫌われちゃうよ?あの子イイ子が純粋培養されたのかってぐらい心の綺麗な子なんだから」
「そんなの分かってるわ。そもそもこんな事、詩織が居る所でも言えないわ。だから他の人に言っちゃだめよ?」
「言えないよ、まったく。」

2人はそれぞれの家に戻る為に、建築現場の一階にある、そこだけ出来上がっている部屋から出て各々送迎の車に乗り込んで帰って行った。



◇◆新之助◆◇



僕は膝枕をしてもらいつつ頭を撫でてもらいながら色々話をしているとドアの辺りで何かが擦れるような音が聞こえてきた。
「小晴、俺の後ろに」
「うん」
特に何か体を隠せそうな物も無い室内を2人でドアから離れた辺りに移動して見ていたら、ドアが開いて強いライトで顔を照らされた。
「なんか人の入った形跡がある気がして来てみれば…お前らここで何してるんだ?ここは部外者立ち入り禁止の場所だぞ?」

僕と小晴はお互いの顔を見あって少しの間惚けていた。
「あいつらの仲間じゃないのかな?」
「なんとなくだけど、くたびれた中間管理職のおじさんみたいな匂いがする気がする」
「おい!聞こえてるぞ!ったく…お前らまさかこんな所まで来て乳繰り合ってんじゃないだろうな?…んっ?ロープ?」
あっ…僕が引き千切ったロープを拾って驚いた様な顔をしてる中間管理職風なおじさんが現れた。

「お前らよぉ、そんな若い頃から相手を縛って遊ぶ様な趣味を持ってるとか…大丈夫か?」
「なぁ、小晴、お前言われてるぞ」
「バッカじゃないの!?あれを弄ってたのはあんたじゃない!私は縛られてた方!」
「待てこら!?俺も縛られてただろ?お前だけ被害者面すんなよ!」

「お前らマジか…お互いを縛り合ってのプレイとか…しかも廃墟で…どんだけ欲張りさんなんだ…」

やばい…完全に僕と小晴はSMプレイ上級者だと思われてる。しかもお互い役割を入れ替えて2倍楽しめるマルチモードプレイヤーだと思われてる。

「とりあえずお前ら、保護者に連絡するからちょっと事務所まで来い」
中間管理職のおっさんがとんでもない事を言いだした。

「小晴、とりあえず運んでいいな?」
「まさか…ここから?」
小晴が窓を見て俺と自分を指さしてそのまま窓の外にポイっと投げる様なジェスチャーをした。

「俺は以心伝心って感じがしてとても嬉しいよ♡」
「私は以心伝心って感じがしてすごくイヤだわ…」
小晴はこんな事を言いながら僕の首に腕を回して抱き着いてきた。
しっかり分かってるみたい♡

「お前らまた乳繰り合う気か?いい加減に…なにしとるんじゃぁ!?おい!!」

僕は小晴をお姫様抱っこしてそのまま窓ガラスの嵌まってない空間に飛び出した。

「ばーいば~い♪」
「イヤァーーー!!バカ新之助~~!!!アー!!」
僕と小晴の捨てセリフはまったく違っていたけど暗くなり始めた空と建築現場に少しの間響いていた。



「解放完了しました。戻ります」
中間管理職風のおじさんだった男の目が鋭い光を放ち懐から出した小さなマイクの様なモノに話しかけて部屋を出て行った。
「俺ってそこまでおっさんに見えんのかなぁ…くたびれた中間管理職とか…ハァ、泣きそうなんだけど…」
ドアが閉まり誰も居なくなった室内に男の嘆きが小さく届いていた。



「ねぇ、新之助ってさぁ、誰か付き合ってる人っているの?」
僕と小晴は工事現場の閉じ込められていた部屋から飛び出した後、建物と道路をわけている白いパネル沿いに移動していた。

「付き合ってる人?今の所は特にいないなぁ」
「そうなんだ…」
工事車両が出入りできそうなゲートの近くに僕と小晴の荷物を発見した。荷物を小晴に持たせて小晴をそのまま抱っこして、パネルを飛び越えて少し離れた所まで走ってきた。
「小晴はあの医者と付き合ってるんだろ?卒業したら結婚するのか?」
「…あいつは下僕。結婚とかする訳ないでしょ。あっ、そろそろそこを曲がった辺りから人が増えるわ。降ろして」
「あぁ」
僕は小晴を降ろして小晴が持っていた荷物を返してもらった。

「さすがに今から病院に行くのは勘弁してほしい所なんだけどなぁ…」
空を見たらだいぶ茜色が濃くなってきていた。

「そっちは私がどうにかするわ。あっそうだ、連絡できるようにアドレスちょうだい」
小晴が可愛らしい感じのカバーが付いた少し年季の入ってるスマートフォンを出してきた。

「へーけっこう物持ちが良いんだな」
「こっちはあまり使ってないの。家族と連絡する用だから」
「そうなのか?」
僕は短距離通信システムを使ってスマートフォン同士をリンクさせて小晴とアドレスを交換した。

「ん、登録完了。じゃぁまた学校で」
「あぁ。学校で…?」

小晴が笑顔を見せてすぐに振り向いて歩き始めた。
あいつ学校でって言ったけど、学年違うのに会う事ってある?

僕は小晴のスキップでもしそうな歩みを見送ってから自分の家に向かって歩き出した。

僕と小晴が拉致られていたのは、半年ぐらい前から工事が止まっていた山に近い辺りの再開発エリアにある雑居ビルだった。たぶん店舗として使う為にフロアの高さを確保していた感じだったので、俺達は4階か5階ぐらいの階層から飛び降りたって感じだった。

なんか自分がアメコミの主人公にでもなった気分♪
僕って今ならドーピング検査とかパスして世界新記録を何十個も取れる体になっちゃってるよね~やっば~♡

いい気分でちょっと鼻歌まじりに歩いていると、スマートフォンにメッセージが届いた音が聞こえてきた。

ピロリロリン♪
ピロリロリン♪
ピロリロリン♪
ピロリロリン♪

続いてメッセージが届いたが何事?
最初のメッセージは…と言うか全部芽瑠からのメッセージだった。

もしかしたら電波が届いて無かった?…まぁいっか。



『なんてモノを渡すのよ!…でもその…ありがと😻』

『鼻血でそう…ヾ( ⑉¯ ii ¯⑉ )ティッシュティッシュ』

『一個聞いてもいいかな?あれって生良君が…その愛でてるのって…幸之助君だったりするのかな?』

『じらさないでよぉ!!教えてってばぁ!!!』



なんか乙女心に相当深く刺さった動画だったみたいだな。さて、相手の事を知りたいって芽瑠が言ってるが、幸之助ってバラす訳にはいかないので…んーさすがに知らない人に頼んだなんて言えないし、かと言って勝手に誰かの名前を使って芽瑠がそいつに突撃でもしたら大炎上だし…こんなに芽瑠が喜んだんだ。幸之助の尻拭いぐらいは僕がするしかないか。

でも大丈夫か?確か幸之助が『一部分だけ出てる』みたいな事を言ってた気がするから、たぶん体の一部、肩とか腕とかがちょこっと映ってる感じじゃないかと思うんだけど…
しまったなぁ、一回ぐらい見ておけばよかった。そしたらもう少しうまく言い訳できたかもしれないのに。

まぁでも体の一部を見て『あきらかにお前じゃない!』なんて見破られるなんて事はそう無いと思うんだよね。
とりあえず僕って言ってみて、もしバレたらバレたで、今度は幸之助に黙っててもらう感じに芽瑠にお願いしてなんとかって感じでやってみるか。

えっと…『さすがに恥ずかしかったので、会ってる時には言えなかったんだけど、そのチョットだけ写り込んでるのは僕です。あまり見ないでください。出来れば新海を見て楽しんでもらったら助かります』…これで大丈夫だよな?

そこはかとなく不安だけど…幸之助の恥ずかしがるような、出演者って知られたくないって思うほどに恥ずかしい姿を自分ですって言うのは…

まぁ今更か。あんだけ爆笑されて今更何が恥ずかしいんだって話だ。

送れ!
シュワン♪


ピロリロリン♪
お?何だ??芽瑠もしかしてずっと待機してたのか?
ナニナニ…

『ちょっと明日、あの場所で話があるのでお昼によろしく』


…あれっ…なんか最初に届いていたメッセージ達と今来たメッセージにとんでもない温度差を感じるというか…最後の『よろしく』が『夜露死苦』ってルビって見える気がするのは気のせいか?


ピロリロリン♪
今度は何?

『とりあえず明日はお昼まで話しかけないでください。南』

あれぇ???


僕は芽瑠の…イヤ、なんとなく南さんって呼ばないといけない空気を感じるぐらいの反応に、首筋に少しばかり嫌な汗を感じていた。

まぁ…とりあえず明日話をしてからって事で。


薄暗くなり始めた幹線道路の歩道を家に向かって歩いて帰る僕を車のヘッドライトが何度も照らして追い抜いて行った。
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