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発覚しました。

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 頑張って考えたけど何も浮かばなかったあの日から数日ほど経過したある日。
僕は翌日に控えたキャロライン嬢との面会のために身だしなみの確認をしていた。

 皇太子である僕は使用人を呼ばないと何も出来ない。というか、しちゃいけない。
本来なら専属の使用人もいるはずだから問題ないはずだが、クソ兄を持ち上げたい派閥の人達の色々でいなくなってしまった。
今は持ち回りで色んな使用人が入れ代わり立ち代わり僕の世話をしてくれていた。
婚約者披露パーティの一件から兄の影響力が下がってきているので今後は専属の使用人を持てるようになるかもしれない。

 だがそれは今後のことであって今ではないので、僕が出来るのは明日のためにどの服を着るか選んで、どう組み合わせるか考えることである。
ちなみに選んだ服は明日使用人に着せてもらう予定である。

「服装は……あまり派手だとちょっとな」

 できる限り、彼女の横にいても遜色ない僕でいたい。
銀髪でサファイアブルーの瞳の彼女は、白が良く似合うだろう。
彼女の瞳に合わせて青が主体でもいいけど、そうすると僕じゃなくて彼女が周りからなんて言われるのか分かったものじゃない。

 僕としては、僕がどれだけ彼女を愛しているのか国中に知らしめたいくらいなんだけど、この国では女よりも男が大事にされているから、どうしてもそれが出来ないのだ。
僕が皇帝になったら、もっと女性が大事にされて少しでも皆が平等になるように頑張りたい。

 それがとても難しいことだとは分かっているんだけど。
だって、僕は男だから女性の気持ちが分からないし、結局は男だから、女性と同じ視点に立って考えることが出来ない。

 努力をするつもりではあったが、だからこそ僕は聡明な婚約者が必要だった。
だけど、来たのが父さまいわく子ネズミちゃんで、すごくガッカリしたのを覚えている。

 女性の地位向上を考えたのは、キャロライン嬢を好きになったあの時だ。

 僕はまだ今よりも幼くて、足元も若干おぼつかないくらい体力がなかった。
長兄の婚約者として紹介された彼女に、僕が挨拶をしようとしたその時、僕は自重を支えきれなくてフラついてしまったのだ。

 バカにしたように嘲笑った長兄の横で、彼女はそんなバカ兄を嫌悪するように睨みつけたあと、僕に手を差し出した。
優しく穏やかな声音で、大丈夫ですか? と静かに僕の安否を確認した彼女の姿は、まるで絵画の天使さまのように優しく微笑んでいて。

 そんな彼女に僕は恋をしてしまったのだ。
たぶんあれが、ひとめぼれなのではないかと思う。
たしかそのあとバカ兄がすごく偉そうに、女はやはり子供が好きなんだな、とか、これだから女は、とか、なんかそんなんばかり言ってたから、彼女の為に女性の立場向上を頑張りたいと思ったんだ。

「よし、アクセントに青を使った服にしよう」

 過去を振り返りながらも衣装は決める。
決まった衣装はクローゼットの一番前の、手に取りやすい場所へ置いておくことにした。
本当はこれも皇太子だからやっちゃいけないんだけど、世話する専属の人がいないんだから仕方ないと暗黙の了解になっている感じがする。

 それはさておき、衣装が決まったら次は僕自身だ。
顔や髪は明日使用人に任せるとして、皇族である僕が唯一自分で出来る身だしなみがある。

 それが、爪だ。

ここ最近色々あったから時間が取れなくてぜんぜん出来てなかったし、いい加減そろそろやらないと。
そう思った僕はドレッサーの引き出しから爪ヤスリを取り出す。
僕はまだ子供だから、刃物を持たせてもらえない代わりに、ヤスリを代用品として受け取っていた。
本当ならこれも専属の使用人や従者にやってもらうようなことなんだろうけど、信用出来る人がいないから仕方ない。

 ふう、とひとつため息を吐いて、近くの椅子に腰掛けながら自分の爪を見たその時、気付いちゃいけない事実に気付いた気がして、ゾッとした。

気のせいにしたくてじっと爪を見る。それから最後に見た記憶と照らし合わせた。
どれだけ見ても、現実は変わらない。



一番最後に爪にヤスリをかけたのは、いつだっただろう。
思い出せないけど、それでもそれが半月は前だと記憶している。
なのに、その時と何一つ変わってない。

「な……なんで?」

 どうして何も変わってないんだ?
半月もすれば、ヤスリじゃ削りきれないくらいの面倒な長さになってるはずなのに。

考えられるのは、ここ半月の色々だ。

本当に色々あったから、ストレスで伸びなくなった?
だけど、体調なんてすこぶる健康で、そんなにストレスも感じていない。
むしろキャロライン嬢と堂々と会えるようになったからストレスなんて皆無に近い。

ご飯はちゃんと食べられているし、健康面での原因は一切ない。となると考えられるのは───────

「が、ガルじいに、報告しなきゃ」

あまりのショックに動揺して、普段出来ていることがおぼつかない。

目が、痛い。それでも僕は部屋の外へ出ようと足を動かした。

ドアノブに手をかけて、めぎっとドアノブが取れた。

「……あ」

 だめだ、一回落ち着こう。
このままじゃガルじいの研究室のドアもだけどその前に禁書庫のドアも壊してしまう。

限界まで息を吸い込んで、ゆっくりと全部吐き出した。よし、ちょっと落ち着いたっぽい。持ってたドアノブはテーブルの上に置いておく。
落ち着いたならまずは外へ出よう。

「うんしょ」

ドアに手を突っ込んで、壁からドアをもぎ取った。
壁もちょっともげたけど、まあいっか。今それどころじゃないし。

ドアノブがないから仕方ないよね。とも思ったけど、よく考えたらドアノブの所に手を突っ込んで引っ張ればよかったのではと気付いて、まだ動揺してるなぁなんて苦笑しながらドアを近くの壁に立てかけてから、急いでガルじいの所へ向かったのだった。



 
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