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書庫へ行きます。
しおりを挟むさて、父様から許可も貰えましたので、彼女の理想の男性になる為に何か方法が無いか、調べようと思います。
とはいえ、そう簡単に見付かるとは思っていません。
人体をどうこうするような魔法は大体が禁術に指定されているだろうから、僕じゃ見付けられない自信しかない。
それでももしかしたら手掛かりのような何かくらいは見付けられるのでは、と一縷の望みをかけて書庫へやって来ました。
なんだろう、ちょっと敬語増やした方が大人っぽさが出るかと思ってやってみたけど、年齢が年齢だから背伸びしてる感すら出ない、悲しい。
僕が何をしたっていうんだろう。僕だってもう少し彼女に近い年齢で産まれたかったよ。
でも汚い言葉使いたくないから敬語しか使いたくないんだよなぁ。
そんな思案をしている所へ、書庫の管理人である司書さんがいらっしゃった。
「おや皇太子殿下、こちらへは何の御用です?」
「調べ物があるんですが、魔導書や魔法、魔術の歴史書はどの辺りにありますか?」
「それでしたら、突き当たりの一角にございますよ」
「ありがとうございます」
「いえいえ、どうぞごゆっくり」
司書の方に教えて貰った方向の棚を見上げると、見渡す限り魔術や魔法に関する本があり、天井まで埋め尽くされていた。
魔術と魔法の違いが記された本やその歴史などの本もあり、どれから手を付けるべきか迷ってしまう。
この国ではそれらを学ぶのは12歳からというのが世間一般の慣習なので、僕はまだそんなに学べていないのが現状である。
何故12歳からなのかというと、教会で洗礼を受けられるのがその年齢からと決まっているから、らしい。
ちなみに洗礼を受けるとどうなるかというと、祝福と呼ばれる何らかの技能が身に付けられる。
一人に一つだけの、人生で一回だけしか身に付けられない、特別なものらしい。
その際に、体術強化やら魔法や魔術系の技能を受け取るので、世間一般ではそうなっているそうだ。
だからこそこの洗礼を受けるにはある程度身体が成長していないとダメらしく、僕はまだ受ける事が出来ないでいた。
なお教会には神々の像が沢山並んでいて、どなたかの神様が授けてくれるが、基本的に授けられる技能はランダムらしい。選べないのは世知辛い。せめて選択肢は欲しいよなぁ。
「洗礼と魔法の違い? あ、こっちは魔法式と魔術式の差分か……興味深いな……、うーん……」
目の前の本棚を眺めていると、なかなかどれを読むか判断がつかない。
だけど僕は今日、勉強をしに来た訳ではないのでまずは目的をハッキリさせようと思う。
「ええと、……身体変化魔法か、魔術、かな……?」
両方が載ってるとしたら、お父様も言っていたけど魔導書を読むべきだろう。
問題はそれが何系の魔導書なのかという事だけど。
身体を変化させるんだから、身体強化系の派生だろうか。
ぽそぽそと一人で喋って情報の整理をしていたら、手の届く位置にそれらしき魔導書を発見したので、手に取った。
そのまま近くの読書スペースへ腰掛け、本を開く。
ペラペラとページを捲り、ある程度読んで判明したのは、魔法と魔術が原動力は同じ魔力を使っているものの、それぞれが全く違う形式だという事だろうか。
結論として、僕が望むものはこの魔導書の内容には無かったけど突き詰めればなんとかなりそうな気がした。
「魔法は血筋に宿り自分の魔力だけを使う特殊なもの、魔術は自分の魔力が少なくても誰でも簡単に使えるもの……」
つまり、魔法式は自分の持っている属性をどう変化させるか、を研究した結果生まれたもの。
魔術式は、自分が持っていない属性をどうやって作るか、という擬似魔法を作る為に生まれたもの。
その式を使って魔力を使うと、魔術だったり魔法だったりが効果として生まれる。なるほどなぁー。
……という事は僕の持っている属性で出来ることを探した方が良いものが出来るのではないだろうか。
魔術の方は魔道具や生活で使われるものが多いから基本的に誰でも使える。でももしも悪用されてしまったら、きっと大惨事が起きるだろう。
姿を変えるなんて、悪人達が考えてない訳ないだろうけどここら辺も知識が足りないな。
細かい所は専門家の意見が聞きたい所だけど、魔導師に知り合いなんていただろうか……。
継承権一位とはいえ、自分の足で立ってあちこちに歩けるようになってからそんなに経ってないから、人脈は広がってない。
父様にどなたか紹介して貰えないかな。もしくは魔導師の塔に出入りする許可とか貰えないかな。
それとも勝手に行って迷い込んだ風に装ったらいい感じに事が運んでくれないかな。
いや、他力本願はダメだ。
自分の足で見付けて、その上で許可を取らなきゃ皇太子としての力量に問題ありという事になってしまう気がする。父様がそれを許すとは思えない。
ということは、計画を立てた上でちゃんと思案して、魔導師の確保をしなくてはならない。
僕の目的と合致する思想を持った魔導師を探すには何が必要だろうか。
情報収集するにも、僕には従者などの手駒が居ないから本当に大変だ。
なんでこの国の王族は十歳にならないと従者付けてくれないんだろう。
もしかすると歴史書に秘密があるのかもしれないけど、それよりも僕は壮年になる魔法の開発をしたいので保留だ。色々と不便だけど仕方ない。
無いものは無いのだから、今をどう乗り越えるかが大事だ。
ぐっと拳を握り、前を向く。
そして僕は今後の計画の為にも情報収集としても、そこらじゅうにある魔導書を片っ端から読み漁ったのだった。
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