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こんちくしょう。※

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 前回のあらすじ。

 考え過ぎて頭パーンしそうなったので、ヤケ起こして一人でアホみたいに歌ったら、実はヒトが居て全て聞かれてました。

 はい。

 夜、一人でキャラクターが歌ってたりすると釣られて誰かが来る、または誰かが居て聞いてる的な典型的なテンプレですね。

 なんで歌っちゃったんだ自分。
 ヤバい死にたくなってきた。

 勢いに身を任せた結果がコレだよ死にたい。
 テンプレ的行動取ったからあぁなったんですね分かります。

 だからそんなん普通分からんからマジで。
 なんかもう自分の軽率さに頭痛がしてきた。
 やだもう。


 呑気に私を眺めるゆるふわ系イケメンである、このサクヤという青年は、錬金術師志望の生徒で以前カズハちゃんと値切り合戦していた生徒だ。
 結局勢いに押し負けていたが中々頑張っていたのを覚えている。

 で、疑問がひとつ。

 「何故此処に居る」
 「昼寝してたら夜になってたー」

 あははーなんて笑いながら返って来た青年のそんな返答に脱力しそうになった。

 どうしようこの青年アホの子の気配が凄くする。
 もしかしなくても残念系イケメン再来だろうか。

 いや、まだ癒し系っていうジャンルも捨て切れないぞ、希望捨てるな私。

 「アイレって良い声だねー、他になんか歌ってよー」
 「無理だ」

 呑気に笑って歌をねだる彼に対して真顔でキッパリ即拒否させて頂いた。

 恥ずかしくて出来る訳ねーだろ。
 誰も居ないと思ったから色々歌いまくったんだぞチクショウ。

 あと私そんな上手くないからね。
 わざわざカラオケでも無いのに人前でアカペラで歌うとかそんな図太さ持ってないから。

 「えー、良いじゃんケチー。減るもんじゃないしさー」
 「嫌だ」

 軽く口を尖らせながら文句を言う青年の言葉を、またもや真顔&即行で拒否する。

 もれなく私の精神力がゴリゴリ削れて行ってしまうので無理です。はい。

 しかし彼は全く気にせず、軽い調子で口を開いた。

 「最初の方のー、なんか変な歌もっかい聞きたーい」

 .........変な歌?、って、もしかしてアレか。
 あの、なんかしょうもない曲か。

 ふざけんな人がいる前で歌えるかあんな曲。

 「なんだっけー?、親父さんがカツアゲされたりー、イケメンの服に放火して逃走したりするやつー」
 「無理だと言ってるだろ貴様」

 大体アレ曲っていうか挿入曲に勝手にふざけた歌詞付けて歌った人が居たからそれを歌っただけで、ネタ以外のナニモノでもないんだよ改めて歌うとか恥ずかしくて出来るかクソッタレ。

 「大丈夫だってー、今ヒトは僕しかいないよー?、ねーハンサムも聞きたいよねー」

 呑気に傍らに居る何かに呼び掛ける青年。
 ひょっこりと姿を見せたのは

 .........ペンギンだった。

 しかもシルクハット被ってる。
 あとなんかあんまり可愛くない。

 えっ、前に見た時ペンギン連れてたっけ。
 連れてたの?
 このペンギンが居て当たり前ー、みたいな空気はきっと連れてたんだろうね。

 それより何より

 「ハンサム......?」

 「うん、ハンサムー。この子の名前ー」

 「何故そうなった......」

 「あー、名前付ける時に冗談で言ったらー、本人?本鳥が気に入っちゃったんだー」

 あぁ、うん。
 そうか、それなら仕方ないね。
 ていうかさ

 「......何故ペンギン」

 ごめん本当に意味が分からない。
 誰だこんな設定考えたの。

 いや、あったよ?
 中学の友人の考えたキャラクターも謎の動物をペットにしてたよ
 つまりはそういう事ですね分かります。

 濃いわ。


 「僕の相棒だよー、カワイイでしょー、へへへー、あげないよー」

 「いらん」

 つーかそんなナマモノ貰っても困るわ。
 どうしたら良いか分からんわ。

 ていうか、さっきから青年が何か喋る度にあのペンギンが青年の頭を静かにバッシバシ叩いてんだけどアレ本当に懐いてるんだろうか。

 「もーハンサム痛いよー、大丈夫だってーあげたりしないからー、いたっ、え、なに?、痛い痛い、痛いって、いたた、ちょ、いたたたた」

 なんかめっちゃ連打されてる...。

 「なに、どうしたのハンサム、僕がアイレと話してるのが気に食わなぶっ!」

 無言のビンタ入りました。

 えっと多分だけど、そのペンギン、君に上から目線で色々言われるのが嫌なんだと思うよ。
 自分が君の面倒見てるんだとか考えてそうだ。
 テンプレ的に。

 「もー、僕はハンサム一筋だってばー、機嫌直しぶっ!」

 スッパァンと、とても良い音だけど同時にめっちゃ痛そうな音が響き渡った。

 いや、うん
 その言動は腹立つと思うよ青年。

 なんか若干殺伐としているけど、雰囲気としては、ほのぼの、と言ってもいいと思う。
 そんな訳分からん雰囲気の中、私はどう対応したものかと若干困っていた。

 まぁ悲しい事に残念系イケメンで間違いなさそうではある。
 希望とはやはり儚いものだ。

 そんな事を考えつつ、一応ペンギンに挨拶しとこうと思います。

 「...ハンサム、というのか。宜しく頼む」

 じっとペンギンを見詰めながら、そんな感じに挨拶したら、当ペンギンは短い手でサッとシルクハットを持ち上げ軽い会釈をした。

 ちょっとカワイイ。

 「アイレ」
 「っ!?」

 考えた次の瞬間に背後から掛けられた声に、ついビビって体がビクッとなった。

 「あ、ベリアルだー、こんばんはー」

 青年のそんな暢気過ぎる挨拶に、恐る恐る振り向く

 予想外に距離が近くて胸元しか見えず、それにも軽くビビってしまったが、ゆっくりと視線を上に向ければ、無表情かつ感情の読めない目で私を見下ろしている悪魔がそこに居た。

 ......ごめんちょっと怖いソレ

 そう考えた瞬間、いきなり奴に抱きすくめられた。

 え、ちょ、人前で何すんだやめろ

 しかし奴はそのまま私をギュウッと力強く抱きしめたかと思えば、私でも冷や汗が出てしまうくらいに濃密な殺気を、青年へ向けて放ち始める。

 いや、ちょっと待て、何してんだ貴様、止めたげて!

 余りの殺気にザワザワと枝葉が揺れ、足元を支える枝もミシミシと嫌な音を立てる中、ちらっと後ろの青年の様子を探る。

 「あれれ、風出て来たねー、そろそろ帰ろうかー、ねーハンサムー」

 青年はそう言って、何も気付いていないのかさも不思議そうにペンギンに声を掛けていた。

 全く気付いてねーとかなんだあの子。
 逆に、ペンギンだけがワタワタしている。
 ちょま止めたげて!ペンギンが可哀相!

 「......行くぞ」
 「は?、おい、待て、ちょ」

 反応を返す間もなく横抱きにされたかと思えば、気が付いたら空に浮いていた。

 色々と急展開過ぎて頭が働かず、ちょっとしたパニックに陥った私とは裏腹に、ゆるふわ系青年は朗らかに笑う。

 「またねー二人ともー」

 お前はもう少し細かい事気にしろ。

 呑気に手を振って私達を見送る青年に内心そんなツッコミを入れながら、私は悪魔に連れ去られたのだった。









 無言のまま空を飛んで、なんか気まずい雰囲気のまま寮の部屋に連れ帰られると、珍しく乱暴にベッドへ投げるように降ろされた。

 顔面からボフンとベッドへダイブする形になって少し息が詰まる。

 「ぶっ、貴様、何を...!」

 意味が分からなくて慌てて起き上がると、間近に奴の顔があって思わずのけ反った。

 近い、えっ何、近い何コレ

 焦って殆ど同じ内容を何度も考えてしまいつつ、その端正な顔を見つめる。
 奴は私との距離を詰める事もなく、ベッドの縁へ腰掛けて私を覗き込みながら、じっと見ていた。

 「なんなんだ、一体」

 問い掛けた時、奴の目が、初めて会った時よりも冷たい事に気付いて、怖くなる。

 スッと心臓が冷えていくような感覚だった。

 一体何が、起きたんだろう。

 怒らせたのか、それとも呆れられたのか
 失望、されたのか。

 そういえばコイツ、私の脆く儚い所を気に入ったんだったか。
 少し前向きになったから、それが原因かもしれない

 ならばきっと奴は、私の事などどうでも良くなったんじゃないだろうか

 そうか、だからこんなに冷たい目で私を見ているのか

 脆くない私は無価値なんだろう

 つまり私はコイツから解放されるという事か

 嬉しい筈なのに、心臓が鉛にでもなったみたいに重くなった気がした。


 「何を勘違いしている」

 「何がだ」

 「全てだ」


 .........うん?


 「解放などする訳無いだろう。貴様は我のモノだ」


 ん?、んん?

 淡々と告げられる奴の言葉が理解出来なくて、首を傾げる。

 「...貴様の気に入った、私の脆さや儚さは、いつか無くなるぞ?」

 私はもっと強く図太くなる予定なんです。

 「それがどうした」


 あれっ


 「無くなった所で、どうでもいい」

 「...なら私の事もどうでもよく」
 「ならん」

 なんでだ。

 「貴様が貴様であるなら、他はどうでもいい」

 なんかよく分からないままに、何故かきっぱりと断言されてしまった。

 「...何故だ。私には何も無いぞ」

 「それも、どうでもいい。貴様は我のモノだ」

 えっ、あれっ

 「アイレ、我は貴様を欲している。そこに理由は必要としていない」

 奴のそんな言葉に、何故か少しホッとしている自分に気付いて、自己嫌悪で死にたくなった。

 しかし奴はそんな私を放置して口を開く。

 「にも関わらず貴様は他を見るか」

 ......ん?

 「あのガキの方がいいのか?」

 .........んん?

 「我以外を見るつもりか」

 えっと
 ちょっと待って、あれっ

 まさかとは思うが、もしかして
 自惚れじゃなければもしかすると


 「......嫉妬、か?」

 「......そうか成る程、これが嫉妬か」

 私の問い掛けに、どこか納得した様子で見つめて、奴はそっと私の頬を撫でた。

 「アイレ」

 「っ...なんだ」

 突然の呼び掛けにビクッと身体が震える。

 「どうやら貴様は分かっていないようだ」

 「何を...」

 だんだん近付いてくる悪魔を避けようとするが、二の腕を掴まれ動けなくなった。

 「貴様が一体誰のモノか」

 「んぅっ!」

 突然顎を掴まれ奴の唇が私のソレと重なる。
 呪いによって力が抜け、何の抵抗も出来ずベッドへ押し倒されながら、口腔に侵入した奴の舌に翻弄された。

 「はんっ、んん...っ!」

 歯列をなぞられ、舌の裏を舐め上げ、軽く吸われて、その度に腰をぞくりと何かが駆け上がっていく。
 息継ぎの暇さえ与えて貰えなくて苦しかった。

 誰のモノって、お前。
 私は誰のモノでもないよ

 私のモノですら、きっと

 霞みの掛かる頭で、ボンヤリと考える。

 そこでようやく私の口を解放した悪魔は起き上がりながら、じっと私を見下ろした。

 「そうか、......では分からせてやろう」

 奴はそう言って、虚空からずるりと何かを引っ張り出した。

 「一応採っておいて良かった」

 ずるずると虚空から引っ張り出され床にボトリと落下した結構な体積のそれは

 「な...!」

 あの、私がオカマにけしかけられた触手の魔物だった。

 えっあれっちょっと待って
 なんでソイツが今?

 ニヤリと笑った悪魔はおもむろに私から離れたかと思えば、ベッドの脇へ立つ。
 そして、ウネウネと蠢く触手の塊を片手で持ち上げ抵抗力を失った状態の私の上へとかざした。

 「おい...嘘だろ、やめ...!」

 「防音の結界を張っておいた。存分に鳴くが良い」

 制止の声も虚しく、無情な言葉と共に、触手の塊は私の上にボトリと落ちて来た。

 「あっ、あぁ!」

 ぬるぬるした感触が気持ち悪くて反射的にそんな悲鳴が上がる。
 仰向けになった身体の上で触手が蠢くたびに鳥肌が立った。

 酷い
 いくらなんでもコレは無い
 ちょっと待って本当に私そこまでの事した覚え無いよ

 衣服の隙間という隙間から入り込み、肌の上を滑る触手が気持ち悪くて、なんとか逃れようと身を捩るけど、力が入らなくて全く意味を成さなかった。

 そうこうしている内、細い触手が私の胸の突起に触れ、キュッと絡み付いてくる。

 「...っぁ!」

 たったそれだけの刺激なのに私の口からは甘い声が漏れて嫌悪感が募った。
 細い触手は更に胸の突起を先端で突いてきたり、ぬめぬめとした粘液を身体中に擦り付けてきたりと忙しそうで、なんかもう全部引きちぎってやりたい。

 「ぅあ、いや、だ!ぁぐっ」

 抵抗虚しく口の中に触手が入ってきて、舌に絡み付いた。
 引っ張ったり舌裏を触手の先端でなぞられ、腰をあの感覚が伝う。

 「...んぁっ、んんっ」

 ままならない現実、勝手に反応していく身体に嫌悪感で涙目になった。

 奴を見ればどこからか取り出した椅子に座って、こっちを見ながら優雅にコーヒーカップを傾けている。

 完全に傍観するつもりかあの野郎...!

 「ん、んんんっ!」

 口の中の触手が動き、先端から甘い、あの液体がトロトロと溢れ出す。

 と、同時に私の緩く持ち上がり始めた股間のソレを、触手は掬い取るように触れたかと思えば、絡み付いて漉いてきた。


 先生、ズボンとパンツが仕事してくれません。
 いやもう触手の粘液でぐちゃぐちゃだけどさ

 現実逃避についそんな暢気な事を考えてしまった。

 「んうっ、んっ、んんっ」

 ソレに与えられる刺激にくぐもった声が漏れて身体がしなる。

 突然、口の中で挿入を繰り返していた触手が喉の奥まで入ってきて吐き気を催した。
 が、次の瞬間喉の奥に放たれた熱い液体を反射的に飲んでしまって焦りを覚える。

 ヤバい、最悪だ
 だってこの触手の粘液には媚薬効果が…!

 そう考えている間に身体の奥が熱くなって、それが徐々に疼きへと変わって行く。

 それを察知したのかソレに巻き付いている触手が更に激しく私のソレを扱き上げてきて、あっという間に追い上げられた。

 「んっ、んんーー!」

 くぐもった声を発してしまいながら、反射的に身体がのけ反るのも止められず、私のソレが白濁を放った。

 粘液だけじゃなく、息子が吐き出したもので更に下着が汚れて、なんかもう、前回よりぐちゃぐちゃだ。

 巻き付いた触手が最後まで搾り取るようにぐにゃぐにゃと動いた後、イッたばかりで敏感になっているソコに尚も刺激を与えた。

 「んぅっ、んっ、んっ」

 「声が聞こえんのはつまらんな」

 ふと聞こえた声に視線だけを送ると、奴はいつの間にかすぐ側にいた。
 かと思えば、私の口の中を蹂躙する触手を掴み強引に引き抜く。

 「ふぁっ!けほっ、んっ」

 唾液や粘液が混ざった汚いものが引き抜かれた触手から糸を引いて、口の端に垂れた。

 「は、ん、あぅっ」

 未だ私のソレを弄ぶ触手のせいで、私の口からは腹が立つくらいに艶のある声がこぼれていく。

 なんでこんな目にあってるんだ私
 クラスメイトと会話しただけでコレってどういう事なの

 なんで、あぁ、駄目だ、心が折れそう

 そんな事を考えた次の瞬間、とうとう触手に負けたズボンや下着がずらされ、ぐちゃぐちゃの下半身がさらけ出された。

 「ぅあ、あ、いやだ、や、みるなぁっ!」

 羞恥とふがいなさと、嫌悪感に涙が零れ、じっと私を見つめ続ける悪魔を視界に入れたくなくて、ギュッと目を閉じる。
 しかしそうやって閉じた目は、次の瞬間、開けざるを得なかった。

 「っ!」

 ずるりと身体を這う細い触手が、尻の割れ目の奥にある、入って欲しくないあの器官へ侵入を始める。

 「あ、あぁ...!」

 いくらほぼ毎晩私を喰う奴のせいで不本意ながら少し慣れたとはいえ、嫌なものは嫌だ。

 圧迫感と中で蠢く触手の感触が気持ち悪い。
 だがそれも少しの間だけで、触手がとある場所を掠めると、私の喉から反射的な嬌声が零れた。

 「ひぁっ、あ!、あぅ!」

 あぁもう嫌だ
 何が嫌って勝手に出る声とか、勝手に反応する身体とか、もう全部が嫌だ。

 私の中で蠢く触手が増やされて、私の中がどんどん馴らされていく。
 前も後ろも何もかも、体中触手に弄ばれて嫌悪感しかない。

 私は今どんな顔になっているんだろう

 見られるのが嫌で、力の入らない身体を少しずつ捩り、なんとか体勢を変えてシーツに顔を埋めた。

 身体の上を陣取る触手はお構い無しに私を蹂躙していく。

 「っは、っぅ、んんンっ!」

 血管が浮くほどギュッとシーツを握り締めて、身体を襲う快感と嫌悪感を誤魔化した。


 自分が嫌だ。

 本当に、嫌だ

 だって、結局、こんな事されても私は
 本気で奴を、嫌う事が出来ない。

 奴だけが私を欲しいと言った

 だから、私が奴を嫌ったら
 私は結局一人になって

 あぁ、そうか私、縋りたくないと言いながら、既にあの悪魔に縋ってしまっていたのか。

 最低だな私。

 中途半端に関わるくらいなら始めから完全に拒絶していれば、.........

 .........あれ、してたよね私。

 目茶苦茶関わらないように頑張ってたよね

 .........やっぱり私悪くねーじゃん。
 全部あの悪魔が悪いじゃん。

 恋人ですら無いのに遠慮なく喰うわただのクラスメイト(殆ど話した事無い)に嫉妬して触手けしかけるわ最低じゃねーか!

 「くそったれ...!」

 ギリ、と音が鳴るほど歯を噛み締め呟く。
 気付いても結局奴を完全に嫌えない事実に自己嫌悪しか感じなかった。

 「随分と余裕があるようだな。」
 「く、うるさ...っ、だまれっ!」

 「そろそろ来るぞ?」
 「なん、っひ!」

 ピトリと、今までとは違った太い触手が私の後孔に当てられ、引き攣った声が上がる。
 細めの触手がずるりと出ていったと同時に、それが一気に私の中を貫いた。

 「ッああぁァ!」

 ビクッと身体が跳ね上がり、鼻にかかったような甘い声が出て、嫌悪感に涙が零れた。

 「あっ、あぁ!、嫌だ、いや...!」

 触手は容赦なくズルズルと嫌な音を立てながら私の奥へ向かい、ふと止まったそこで熱い液体を吐き出した。

 ......液体?

 え、待って、ちょっと待って
 そこでそんな事されたら私どうなるの?

 だって媚薬の効果あるんだよあの液体

 うそでしょ、や...

 「は、あ、あぁあ...!」

 ドクドクと心臓の音に連動するように、今まで感じた事も無いくらい身体の奥が疼いていく。

 何が何だか分からなくなりそうだった。

 「あ!、ぁんっ!んっ!」

 次の瞬間、触手が律動を繰り返し始めた。

 奥を突かれる度に嬌声を発してしまうが、それを止める余裕など無くて、ただ喘ぐ。

 「ひんっ、んンっ!、んぁっ、あっ!」

 悪魔を見れば、奴は止める様子もなく、椅子に座ってただじっと触手に蹂躙される私を見ていた。

 卑猥な湿った音と私の嬌声だけが部屋に響いて、頭がおかしくなりそうだ。

 どれくらいたっただろう

 靄のかかる頭でそう考えた時だった。
 不意に動きが止まり、触手がビクビクと震え始める。

 「はっ、は、...ふぁ!?」

 呼吸を整えようと肩で息をしていると、身体の奥で触手が何か吐き出した。

 液体じゃない。
 小さくて丸い、卵のような何か。

 「っあ...うあ、あああぁぁ!」

 ひとつ、ふたつ、みっつと、どんどん私の中に増えていくそれに、恐怖した。

 何コレ。
 いや、知ってる。
 知ってるけど、でも。

 考えたく、ない

 もう用がないとばかりに、触手はソレを残して私の中から出ていった。

 快感が残る身体はビクビクと痙攣しているが、頭の中はパニック状態だ。


 「ほう、種を植え付けられたか」

 ニヤリと笑った悪魔が、認めたくない現実を告げる。
 途端に恐怖で一気に血の気が下がり、何も考えられなくなった。

 「いや、いやだ、こんな、はんっ」

 身を捩った瞬間、種だか卵だか分からないソレがあの場所を掠めて鼻にかかったような甘い声が漏れる。

 「これが孵化すれば、貴様はどうなるのだろうな?」

 「あ、あぁあ、いや、いやだ、たすけて、むりだ、こんな......!」

 「ならば、名を」

 奴は私の頬にそっと手を添えながら、にっこりと笑う。

 「我の名を呼び、懇願してみろ」

 懇願て、おま...!

 「ひきょう、もの、め...!」

 「なんとでも言うがいい、さぁ...どうする?」

 「くっ...!」

 え、懇願、て。
 一体何言えば良いの。
 えっと、

 ぼやける思考のまま頑張って考える。

 「ベリアル、たのむから、たすけてくれ...!」

 お願いだから助けて下さいって言ったつもりなんだが仕方ない。

 これで勘弁して貰おう

 「今後、内心でも我の名を呼ぶと誓うか」


 えええええ!


 「...誓うか?」

 「......わ、わかった、ちかう、ちかえば、いいんだろ」

 うまく回らない舌を頑張って動かしながら渋々そう答えたら、奴、ベリアルは嬉しそうに笑って、私の頭を撫でた。

 「...良い子だ」
 「くそったれ...」

 もうやだコイツ。

 両手で顔を覆って盛大な溜息を吐きたくなった。

 「では暫し待て、ミズキ様を呼んで来る」

 「な...!」

 人任せかよ!






 その後、やって来たミズキに触手の種だか卵だかと媚薬効果を何とかして貰った私は、ついでに体力も元に戻して貰って、シャワーを浴びた。
 そしてその間、あの悪魔、ベリアルはミズキに思い切り説教されていた。ざまあみろ。

 そういえばあの触手どこ行ったのかと思って聞いたら、もったいないからまた虚空に収納したというふざけた返事が返って来た。

 今度は絶対爆破四散させたいと思いましたこんちくしょう。


 だからなんで私がBL官能小説の主人公みたいになってんだよ!萌えない!
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