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おいしいです。
しおりを挟むあの悪魔は結局あの後、一応任務である温泉周辺の調査を手伝ってくれた。
足腰立たなくなって動けなくなった私を横抱きにしながらだが、一応。
いや、うん。
責任は全て奴にあるから手伝うのは当たり前だと思う。
だが別に俵担ぎとかそんなんで良かったと思うんだが何故横抱きという名のお姫様抱っこしてんの。
途中、あの触手の魔物と遭遇したのだがアレって珍しい魔物なんじゃなかったっけ、と解析の魔法をカードに付与して調べてみたら、どうやら温泉が近いせいで良い繁殖地になってしまっているらしい事が分かった。
調査結果としては、温泉周辺の危険度は、一般人でも倒せるあの触手の魔物しかいない事からかなり低い事も分かった。
他の魔物もあの触手には近寄りたくないのかもしれない。
とりあえず、もし何か施設を立てるなら、もういっそラブホとかそんなんにしたらいいと思う、と調査書に書いておく事にした。
オカマ?
あぁ、なんか触手に囲まれてアッー!な事になってたから、とりあえずまるごと爆破して簀巻きにして猿轡噛ませて引きずってるよ。
悪魔は見捨てたがってたけどまぁ仕方ない。
正直私も見捨てたかった。
でも一応一緒に任務を受けた学園の生徒だから見捨てる訳にもいかないのだ。
とりあえず起きる度に気絶させてるからとても静かです。
え?人権?
私の人権を無視した挙げ句様々な意味で食い物にしようとしていた奴にそんな上等なモノある訳が無いじゃないか。
命が助かっているだけマシだと思ってほしい。
それからそんな感じに調査を終えた私達は、何故か悪魔が持ち前のチートを遺憾無く発揮し、来るのに三日かけた道程をたった半日で、その日の内に学園へと帰還した。
具体的に言うと、奴の翼で飛んで帰ったのだ。
本当に普通の感性のヒトに喧嘩売ってるよねコレ。
そんな感じに帰還して、とりあえずオカマを医務室へぶち込み、そのまま調査書を園長に提出、そしてようやく部屋へと帰った。
悪魔と会わない為に任務へ出たのに、結局悪魔に助けられるなど誰が予想出来ただろうか。
いや、BLではよくある展開ですね、むしろテンプレですねちくしょうやっぱ私じゃ萌えない。
いやまさかあんなテンプレな状況に、私が。
大事なのでもう一度言う。
わ た し が 陥るとか思う訳がないのです。
いくら外見が私の考えたキャラクターでも、まさかあんな何の捻りもない状況に陥るなど、有り得ないと思っていたのです。
だって考えてみて欲しい。
此処は漫画やアニメや小説の中ではなく、現実なのだ。
誰が思うよ、テンプレが現実に起きるなんて。
いや、まぁ様々な要素から考えて、予想出来た筈の事を予想していなかった私が悪いのだ。
言い訳しても仕方がない。
とりあえず反省し、次に生かす為にもっと予想する事から始めようと思う。
どんなテンプレだろうと予測してやるぞこんちくしょう。
次に来るとしたらあの悪魔の添い寝イベントだろうと予測した私は、
チート故に半日で全快まで回復した私の後を、ピッタリと着いて来ていた悪魔が帰還を知らせる為にミズキの元へ行ったのを見計らって外へ飛び出し、そのまま学園の外にまで飛び出したのだった。
「.........何故だ」
目が覚めたらあの部屋のベッドで、しかも奴の腕の中(ガッチリ抱き枕状態)でした。
回避不可能なイベントだなんて聞いてないぞちくしょう。
『ぎゃあああああ!!?』
どうやって抜け出そうかと考えた瞬間、隣の部屋からそんな声が聞こえた。
今の声はミズキだろうか
一体何事だと思った次の瞬間、部屋のドアが吹っ飛ぶかと思うくらいの勢いで開けられ
「うわあああアイレ!聞いて俺ルイに添い寝されてたんだけどってこっちも添い寝されてる!?」
ミズキがそんな事を捲し立てながら飛び込んで来て、抱き枕状態で動けない私を見ながらツッコミを入れた。
「......ミズキ様、どうされましたか」
「あっ、そうそう、なんか起きたらルイが俺を抱き枕にしててさ、目茶苦茶ビビってついアイレに相談に来たんだけど......」
いや、良いから離せよこの悪魔ちくしょう。
ミズキも普通に会話してんじゃねぇ助けろ
「なぁアイレ、どう思う?」
知るか。
BL的に考えたらかなり好かれてるって事だろうけど、ルイは魔族のクォーターだから深意までは分からん。
むしろそういうのはミズキの方が分かるんじゃないの。
「それがルイ本人が分かってねぇーから分っかんねぇーんだよー!」
私の考えに対して答えながら、頭を抱えぐねぐねするミズキを悪魔の腕の中から眺める私。
うん。
なんだろうねこの状況。
客観的に見るとシュールだわ。
まぁそんな事考えても仕方ないので、とりあえずミズキに声を掛ける事にする。
「......後でカズハに聞きに行くか?」
「カズハちゃんなら分かるかなー......」
「幼なじみだからな、もしかすると分かるかもしれん」
秘技、丸投げ。
いやだってめんどくさいもん。
不意にその時、ミズキによって開け放されたままだったドアから、ルイが普通にノックも無く部屋へ入って来た。
いやちょっとまて、こんなカオスに入って来んなよお前何してんの
とか考えて居たら、当の本人は気にした様子も無くミズキに近寄った。
「おいミズキ、勝手に行くな」
全くこっちに気付いていない。
むしろミズキしか見えてない気がするなんだコレ。
「いや、お前のせいだかんな」
「......?、俺が何かしたか?」
良く分かって居ないのか不思議そうにしているルイ。
「......えぇえ......いや、お前俺を抱きまくらにして寝てたじゃん」
「何かダメか?」
「駄目に決まってんだろ!俺は男!
そういうのは可愛い女の子にやれ!もしくはアイレにやれ」
おいばかやめろ私を引き合いに出すな。
これ以上問題増えてたまるかちくしょう。
と、思ってたらルイは不思議そうに口を開いた。
「......なんでそこでソイツが出て来る?
ソイツで大丈夫ならお前も大丈夫だろ」
............うん。
「俺は嫌、大丈夫じゃない」
「知らん、減らないから良いだろ」
.........えっと。
「俺の精神がゴリゴリ削られるから止めろ」
「なんでだ?」
無表情のままコテ、と首を傾げるルイ
「......俺達男同士だろ」
「何かダメなのか?」
傾げた首を戻しながら、やっぱり不思議そうな声音で尋ねるルイ。
「普通あんな事しねぇーの。
それにお前の隣に俺とかマジありえねぇ」
ないないと手を横に振りながらあっはっはと笑うミズキに、ルイは眉間に皺を寄せた。
...............何だコレ。
私が任務でちょっと離れてる間に何が起きたんだ。
何か知らんが物凄く美味しい事になってるじゃんやだ何コレ
コレ確実にアレじゃないか?
もうなんか完全に矢印向いてないか?
あっいやでもまだ分からんぞ、確認が必要だ。
私もカズハちゃんに意見が聞きたい。
気になる。
これは気になる
そんな事を考えていたら、ルイがミズキをジッと見詰めた。
「俺はミズキが良い」
無表情のまま、きっぱりと告げるルイ。
ハイ来ました!よくある台詞ですね!確実かもしれんね!確認はしたいけど!
「ルイは嫌だ」
あ。
きっぱりとそう返したミズキに、私はつい憐れみの視線を送ってしまった。
......あーぁ、言っちゃったなー、言っちゃったよミズキ馬鹿だなー。
ああいうタイプにそれ言ったら余計に燃え上がるだけなのに。
ほら見て、物凄く楽しそうに笑ってるよルイ君。
そんな私の思考による呼び掛けによって、ルイの表情を意識したらしいミズキは顔を引き攣らせた。
「......まぁ良いや、お前の気持ちどうでもいいし」
「ひでぇ!アイレ助けて!」
ミズキはそう言って逃げるように私のベッドの上に乗っかり、そのまま私とベリアルを布団ごと抱きしめた。
いや何してんだお前。
「......ミズキ、もう無理だ、諦めろ」
「諦められるかぁ!誰が好き好んでこんな奴!」
「そうかそうか、そんなに嫌か。
よし分かった、もっと色々やってやろう」
普段無表情で戦闘以外に殆ど表情を変える事が無いルイが、物凄く楽しそうに、ニィヤリと笑う。
「はっ!絶対てめぇの手には入ってやんねぇから」
あっ。
あー......これが売り言葉に買い言葉で墓穴掘るというテンプレですか。
成る程成る程。
......ミズキ、馬鹿だなぁ。
「そりゃ良い......、すぐに手に入んのなんて面白くねェからな」
今度はニヤリなんて可愛いものじゃない程の凶悪さで、にぃ、と。
ルイが笑った。
「という訳なんだが、カズハはどう思う」
「リア充爆発しろ」
「いやそうじゃなくて」
「二組とも爆発しろ」
休み時間、教室のカズハの席の周りに集まって朝の事を相談した結果、彼女から返って来たのは、死んだような目をして告げられたそんな言葉だった。
「ひどーいカズハちゃん、俺真剣に聞いてるのに」
そう言って、拗ねたようにぷぅと頬を膨らませるミズキ。
うん、シバきたい。
「......アンタの場合、ルイに反抗的な態度貫くから余計に興味引いちゃっただけじゃない。
ただの自業自得でしょ」
「今から従順な態度取ったら諦めてくれたりしないかな」
溜め息を吐きながらミズキを見て答える彼女に、当のミズキは困ったように眉を下げながら呟いた
「......ニヤニヤされて終わりだと思うわ。
ていうかそれだとアンタ、ルイのモノになる事になるわよ。」
「それはやだ」
「そもそもなんで添い寝とかそんな事になったのよ?」
確かにそうだ。
起きたらなってたとか以前に何か原因があると思うんだが…
とりあえず先手を打って私の方は答えておく事にする。
「私の方は、良く分からん」
何せあっちも分かって無かった。
「ミズキは?」
尋ねれば、困惑した様子を見せながらも口を開いた。
「分かる訳ねーだろ。
昨夜は......肉よりお前が良いって意味分からん事言われたくらいだ」
......うん。
............うん?
「......えーと、ミズキ。
アンタ、ルイが魔族のクォーターって事は知ってるわよね?」
こめかみに人差し指を当ててほぐすようにしながら、眉間に皺を寄せてカズハが確認する。
「うん、知ってるよそれくらい」
「じゃあルイの頭ん中が、肉、戦う、壊す、殺す、楽しむ、しか無い事も知ってる?」
「そりゃあね」
ミズキの答えを聞いた途端、カズハは盛大な溜め息を吐いた。
「......ならなんで気付かないワケ。
つまり今のルイの頭ん中はミズキ、肉、戦う、壊す、殺す、楽しむ、ってなってるって事よ?」
うん、ですよね。
聞く限りそうなってるとしか思えないもんね。
カズハの言葉に固まったミズキが、眉間に皺を寄せながらたっぷり10秒、間をあけてから口を開いた。
「......何、アイツが俺の事を好きだとか言いたいわけ?」
「......好きだとかそういうのは......アイツ魔族混ざってるから分かんないけど、そんだけ頭の中占めてるって事は、手に入れたいモノって認識されてるんじゃないの」
十中八九そうですよね。
フラグの回収お疲れ様です。
何コレめっちゃ美味しい。
生BLって結構引くかと思ってたけどそんな事無かったわ。
美形同士だからですね分かります。
ジャ○ーズがキャッキャしてるとニヤニヤするのと同じ感じするわコレ。
しかしミズキは眉間に皺を寄せたまま、本当に不快そうに口を開いた。
「......きっしょく悪ィ。
俺なんか欲しがってどうすんのさ」
その言葉に、なんだか少し悲しくなった。
アッー!な事になった事があるらしいのに気持ちが悪いと言い切れる神は、やっぱり男の子なんだろう。
案外、ゲスの極みみたいな奴の餌食になりかけたのかもしれないが、それでも、自分の知ってる誰かの気持ちが目の前で否定されるのは悲しかった。
向こうは、きっと、
ただ想ってしまっただけなんだろうに。
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