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困ったもんだ。
しおりを挟むはてさて、結果としちゃあなんか知らんけど全て丸投げされちまった訳ですが、そんでもタダじゃ転びませんよアタシぁ。
そんな訳でよっこいせと抱っこしてたままだったクリスちゃんを床へ降ろし、ドラゴさんへと向き直る。
「んじゃドラゴさんにゃ作ってもらいたい物があるンすけど」
「へ?」
「書類をコピーするコピー機みたいなやつ。今後絶対必要になるんで」
ものすげーキョトン顔なドラゴさんに畳み掛ける。
手書きで書類とかダルさしかねーんよ。作れ。マジで要るから。
「えっ」
「活版印刷でも可」
「カッパ印刷?」
「うん、言うと思った。とにかく印刷出来る物作って欲しいンすわ」
「うーん……材料無いよ?」
ドラゴさんだって活版印刷を知らねェ訳じゃねーんでしょうが、なんか響きが良いからな。カッパ印刷。言いたくなる気持ちは分かる。
「そりゃ今すぐって訳じゃねェんで大丈夫っす」
「カッパ印刷出来るようにする設計図とか作ってればいい?」
「いや、まぁそうなンすけどカッパは印刷しなくていいんで、大体何でも印刷出来るような何かをお願いしたいっす」
「わかった! ハゲ薬も作らなきゃだからその後になるけど、いい?」
「あ、全然いいっす」
なんかもうどこにツッコミ入れたらいいか分からんくなって来たぞ。よし、放置しよ。
言葉足らずでいっつも主語行方不明にするドラゴさんだしな。うん。
いや、まぁアタシも人様の事どうこう言えるようなモンじゃねェけども。
「なぁおっさん、かっぱってなんだ?」
「カッパはねー、川に住んでてねー、頭にお皿載せた緑色したなんかそんなアレな生き物だよ!」
「川……リバーゴブリンか?」
ロンちゃんが素朴な疑問を投げ掛け、それにドラゴさんが答えている。が、ちょっとまてお前それ説明って言っていいの?
いや、うん、ドラゴさんだしな。仕方ねぇ。
ていうか、リバーゴブリンとか居んのね、この世界。ゲームでも居た気がするけど、ゴブリンとか小鬼とか色んな派生があって種類がよく分からんのよな。
同じモーション同じグラフィックで、色だけ変えたような奴とか、大きさ変えただけの奴とか、しまいには表記されてる名前だけ変えた奴とかも居たっけ。
とか考えていたら、見かねたハーツさんが説明してくれた。
「河童は、川のそばを通る人間の尻子玉を抜くのを信条とする相撲好きな妖怪ですよ。力比べで勝てば何もしないので、まだ人間には友好的ですね」
説明って言っていいのそれ?(二回目)
日本じゃないよココ。異世界だよハーツさん。忘れてんじゃねェだろうな?
案の定、理解出来なかったロンちゃんが首を傾げた。
「しりこだま? すもう?」
まあ、ここはアタシの出番か。ロンちゃんにも分かりやすいように説明しますかね。
「ケツに手ェ突っ込んで来たり全裸で飛び掛かってレスリングしようとして来るバケモンっすよ」
「ユーリャさん、ダメです。あなたがそんな事言うと卑猥にしか聞こえません。アウトです」
「なんで??」
いや、そんなヤバいこと言ってなくね?
「そうだよユーリャさん、ダメだよ! どうやってもBでLだよ!」
「だからなんで???」
酷くない?
えっ、なに、どれがダメだったん?
放送禁止用語とか言ってねェよアタシ。
え、全裸? 全裸ってワードがダメだったん?
二人とも真顔なのが余計に意味分からんのだが。
「色気しかないイケオジがケツに手ェ突っ込むとか、全裸で飛び掛かってレスリングとか、卑猥以外のなんでもないですよ。子供さんが聞いてるんですから自重して下さい!」
「あー、言葉選び間違えたンか」
そりゃそう……なのか?
えっ? これってアタシが悪ィんか?
えっ、アタシ悪くなくね?
「けっきょくかっぱってなんなんだ……?」
「川に住む化け物って事でいいんじゃないかな」
「じゃあさ、れすりんぐって?」
「うんとね、パンツ取ったら勝ちの大体なんでもありな格闘技だよ!」
混乱してる後ろでそんな会話が聞こえて来て、さすがに放置出来なくなり全力で振り向く。
「いやちょ待て待て待て」
「ドラゴさんんんん????」
「あれ、違った?」
違いまくるわ。何を子供に教えようとしてんだお前。
ハーツさんですらツッコミに回っとるやないか。
「あっ確信犯な顔してる」
「いや、今のはさすがにアカン」
「てへ?」
可愛く首傾げんなお前イケオジなんやぞ外見。うん、かわいいな?
「なぁ、おっさんたちだけ楽しそうにすんなよ! 仲間はずれは、よくねーんだぞ!」
「あー、ごめんごめん」
「今のァ、アタシらが悪かったな。すまん」
ぷんすかしたロンちゃんにドラゴさんと二人で謝罪しつつ、ロンちゃんの頭をポンポン撫でる。満更でもなさそうなロンちゃんにほんわかして癒されていたら、ハーツさんがなんか呟きだした。
「…………ショタとイケオジの絵面良すぎん……? なにこれ天国?」
「ハーツさん?」
「あっ、すみませんでしたレンくん」
「ちげーよエルフのおっさん、おれはロン。ロンギヌス」
なんか唐突にものすげー不意打ちで衝撃の事実が発覚した。
「予想よりゴツイな???」
「ロンちゃんそんな名前なの???」
え、めっちゃカッコイイけど子供にゴツイ名前付けんのこの世界の伝統かなんかなん?
「あぁ、すみませんランバルドくん、わたし、名前を覚えるのが苦手で」
「待ってハーツさん、何もかも違う」
「えへへ?」
ツッコミを入れたものの、ハーツさんはほんわかと笑うだけだ。
……うん。これもう名前覚えるのめんどくなって適当に浮かんだ名前言っただけだな。
「……あー、悪ィなロンちゃん。自由人しか居ねーんだココ」
「……猫のおっさんも大変だな……」
ぽん、と肩、じゃなくて腰を叩かれた。身長低いから仕方ないね。頑張って大きくなるんだよ。
そんなこんなでロンちゃんが帰って村長さんとかに報連相してる間に、書類やらなんやらを用意するための紙を用意しようと思ったんだが。
さすがにクリスちゃんも持ってなかったのでドラゴさんを頼ることにした。
「ドラゴさん紙作って」
「えぇー、作るもの多すぎない?」
まぁ、それはそうなんだけども。
「レシピ書くのにいるじゃん」
「そういやそうだった……!」
そうなんよ。
結局、紙って色々なことに必要になってくるから、どうしても要るんよ。無いと困るンはアタシらなんよ。
「えーと、紙の材料って木材と草でしたっけ」
「……あと、灰汁があれば完璧なんだけどなぁ」
「インクとかの筆記用具も要るくね?」
ハーツさん、ドラゴさん、アタシの順番でそれぞれに話しながら考える。
ふとドラゴさんが困ったように眉を下げ、ため息を吐いた。
「…………自分は一人しか居ないんだから、そんなに一気に作れないよ」
そりゃあそうだ。
とはいえ、家の中の色々だって今のうちしか出来ないし、料理だってドラゴさんが居ないとただ焼くだけになってしまう。
うーん。なんとか負担が減らせんかな。
「あ、そういや、アレはどうですか? 簡易製作」
「ゲームで一回作った事ないと無理だよ?」
一回作ったもので、今回役に立ちそうな物……あ。
二人のやりとりで思い出した。
「そういやあるじゃん、紙。ほら、家具でさ」
「あ! そういえば雰囲気出す用の家具で本棚とか書類棚とかあった!」
「その中に白紙の書類とかあるかもですね!」
ゲームで家具は売るためにも置くためにも腐るほど作ったドラゴさんだからこそ、思い付いた方法である。
「待って、それなら新しく作らなくても地下の倉庫にあるよ!」
「え、そうなん?」
「じゃあ、使えそうな家具もそうですが、今後必要になりそうな物がある家具もあるかもしれませんし、物色しに行きましょう」
バタバタと倉庫へ向かおうとして、ドラゴさんと二人でハーツさんの服を掴んだ。
「ハーツさんはダメ」
「えっ」
「そうだよ、ハーツさんはダメっす」
グイグイ引っ張ってハーツさんを椅子へ戻すと、大混乱なハーツさんが困ったような顔で見上げてくる。
「な、なんでですか?」
「今日はもう働きすぎ。寝ろ」
「えっ、いやです」
いやですじゃねェのよ。キッパリ言ったってダメです。
「だめだよハーツさん。朝から今までずっと畑仕事してたじゃん」
「でも、まだ夕方にもなってないですよ」
「もうすぐ夕方だから勤務時間終了です」
立ち上がろうとするハーツさんの肩を押さえ付けながら言い放つと、ハーツさんは見たことないくらい困った顔で叫んだ。
「えええええやだぁあああああ」
「やだじゃない。寝てよ」
「仲間はずれにしないでくださいよおおおおお」
「ハーツさん働きすぎなンすよ。文句は朝からやっちゃった自分にどーぞ」
「やだあああああ」
半泣きである。え、なに、そんな嫌なの?
「もー、仕方ないなー。横で見てるだけならいいよ」
「やったああああああああ」
あまりの様子にドラゴさんが折れた。仕方ないね。
そしてハーツさんは諸手を挙げて喜んでいる。うん。
「……キャラ崩壊してンなぁ……」
そんなに休むの嫌なンか?
あんだけ休みたい休みたいって言ってたのに。
まぁ、どうせ明日から三日は寝ててもらうし、今日くらいいいか。
やれやれ、なんて肩をすくめながら、そんな感じに三人で仲良く地下倉庫へと向かったのであった。
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