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みんないっしょのむいかめそのろーく!

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 なるほど。
 つまり村長さんが領主様に連絡したから、このひとが来たのか。
 移住に関する何かだとするとめっちゃ早いな?

 連絡送ってそれが届いて、色々と合間の作業もあるだろうに一日二日でこのひとが来たってことになる。もしかすると村長さんだからこそ使えるなにか特別な連絡手段でもあるのかもしれない……が、うーん。
 まぁ、魔導士……魔道士? 魔導師、……うん、どうでもいいや。魔法が使えるみたいだから来るのは多少簡単なのか、もしくは距離が近いのか。どっちにしろ、何かあるんだろう。知らんけど。

 それか、随分前とかにまったく違う案件で村長さんから連絡が行ってて、その件について、としてこの村に来たとかもありうる。
 ……どっちでもいいな。まぁ今はドラゴさんをなんとかせんと。

「うん、なるほどわかったよハゲのひと!」

 説明を聞いたドラゴさんが、結局分かったンか分かってねェンか判別が付きにくい顔で堂々と言い放った。
 多分理解はしたんだろうが、どうしても頭髪が気になって気もそぞろになってンのがよく分かる。

 だから失礼なんよソレ。

「まだハゲてません!」
「ドラゴさんこのひとになんか恨みでもあンの?」

 さすがにアカンしょ。これ。いちお初対面よ?

「もしかするとこう、頭髪の……な、どなたかがドラゴさんになにかしたとか?」
「え? とくになにもないけど」

 ハーツさんの問いかけに、ドラゴさんからは、なんかめっちゃキョトン顔で不思議そうな雰囲気で答えが返ってきた。

 いや、まって、アカンアカンアカン。

「なにもないのにそんなイジってんの? イジメ?」
「あ、そういえばたしかにそうだね、ごめんね。昔からどうしてもハゲてるひと見かけたら過剰反応しちゃうんだ」

 いや、むしろ笑っても言ってもいけない24時間みたいなそんな感じなるやろ。ナイーブでセンシティブな話題よ、こういうの。

「……理由あるンすか?」
「なんか見てると楽しくなっちゃって。とくに光ってたりすると“わぁ! 光ってる!”って」
「子供かな?」

 いや、わぁ! じゃねぇんよ。

「もしかするとドラゴさんにとっては蛍とかと同等なのでは」
「ホタルも好きだよ。“わぁ! 光ってる!”ってなるもん」
「同じじゃねェか」
「同じですねぇ」

 相手人間だからね。たしかにホタルって綺麗だけどさ。
 なんというか、さすがはドラゴさんである。
 でもこれセンシティブな話題なんで、そんな嬉しそうに言わないでほしい。

「さっきからなんなんですか本当に……ハゲハゲと気安く……! 無礼にも程がある!」
「だよねェ。そうなるっすよねェ」

 むしろ今までキレなかったのが凄ェわ。普通は一回目でガチギレするもん。

「家名もない平民の冒険者風情が! 己がどれほど身の程知らずなことをしたのか、その浅はかさに後悔するがいい!」

 高らかに宣言した男に、明らかな怒りと愉悦を感じた。
 予想はしていたので三人がそれぞれ戦闘態勢を取る。

「おっ、やんのか?」
「ふぅむ、なにをする気ですかね」
「へェ、そういう感じ?」

 好戦的に笑うドラゴさんと、眼鏡を指先で持ち上げ冷静に観察するハーツさん。そんな二人を確認してから、いつでもハープを取り出せるように思考だけでメニューを開く。

「これを見よ!」

 だがしかし、男は突如自分の懐に手を入れ、何かの書類を取り出した。

「ん?」
「え?」
「うん?」

 なにこれ。

「これが、土地移住許可証です!」

 ババ~ン! とか効果音が付きそうな見せ方である。

「えええ」
「なるほど、そう来ましたか」
「なになに? どゆこと?」

 人質ならぬ、物質モノジチである。
 事態を飲み込めていないドラゴさんがついていけなくて戸惑っているが、お構い無しに男がドヤ顔で口を開いた。

「あ~ぁ~、良いのかな~、俺ってばこの許可証を好きに破棄できる立場なのに~、逆らっちゃって良いのかな~?」

 良いのかな~、って言われましても。

「…………それ、領主様に再発行してもらえば良いだけじゃね?」
「むしろ、領主様の決定を補佐官が勝手に変えちゃって大丈夫なんでしょうか」
「あっ! 知ってる! これ“虎の威を借る狐”ってやつだ!」
「グヌゥ!」

 素朴な疑問とツッコミ、そしてトドメのドラゴさんの言葉に、男が悔しげな声を上げた。

 そこでふと、何かが引っかかった。物理的にではなく、記憶的に。

 移住許可……権利……土地……ハゲ……、……んんん?

「あ、思い出した」
「なにをですか?」

 不思議そうなハーツさんに向き直りつつ、説明する。

「このひとがどっかで会ったことあるような気持ちになる理由なンすけど、ほら、あのひと」
「んんんー? だれ?」

 まったく思い出せないらしいドラゴさんがめちゃくちゃ不思議そうな顔をしている。いや、アンタら二人は確実に知ってるひとっすよ。

「ほらほら、ギルドハウス建ってた地域に入ると居たじゃん。“この土地に住まうことが出来ることを光栄に思え!”って言ってたNPC」
「あー、そういや居たね。なんか偉そうなのが」
「近くのNPCから“あいつ、そうやって偉そうに言ってるけど、この土地に関する権利とかなんも持ってねーんだよな”とかなんとか言われてた、あのひとですか」

 さすがに思い出した二人が、あー! と納得して嬉しそうに笑う。

「どの土地にギルドハウス建てても出て来るNPCで、ただ近くでウロウロしてるだけの謎のおっさんだっけ」
「そうそう、ゲーム作ってる会社の初代社長がモデルなんじゃないかって噂になってたあのNPC」
「ドラゴさんが“ゲームなのにハゲてる!”って全力で眺めてたあのNPCですか」

 ご納得頂けたところで、今回の被害者の男性へと視線を送る。

「ほら、そっくりっすよあのひと」

 二人が改めて目の前の男性の姿を確認する。始めは懐疑的だったドラゴさんが五秒くらいでようやく反応した。

「…………うわ、ほんとだ!」

 ドラゴさんアンタNPCの容姿がどんなんか忘れてたとか言わんよね?
 思い出したみたいだからヨシとするけどさ。

「なるほど、それで既視感があったんですねぇ」

 納得した様子のハーツさんだが、多分これどうでもいいと思ってるな。

「なんの話してるんですか」
「あー、気にしないでこっちのこと」

 怪訝そうな男性に、取り繕う感じで誤魔化す。
 まだ納得出来てなさそうな男性だが、一旦は引き下がってくれた。

「それよりも、理由が分かったからには謝罪しませんと」
「たしかに」

 さすがハーツさん、正論である。

「めっちゃ気安くしちまったけど、ガチの初対面なンすよね……うん、謝りましょ」
「はーい!」

 ドラゴさんに声をかけたら、良いお返事が返ってきた。小学生かな?

 そのまま男性へと向き直り、頑張って謝罪する。

「いや、本当に申し訳ない。知り合いにアンタがめちゃくちゃそっくりで、つい遠慮がなくなっちまったンすわ」
「つい、で遠慮なくさないでくださいませんか」

 適切すぎるツッコミにぐうの音も出ねェ。

「二人が申し訳ございませんでした、えーと、クライマーさん」
「クレイヤーです」

 安定のハーツさんである。うん、クライマーは山とか崖とか登る人だな。

「ごめんねハゲのひと」
「謝る気あります?」

 ドラゴさんは一旦落ち着こうか。

「いちお、ちゃんと反省してるっすよ。アタシのこの胡散臭いのは生来からで、そっちのエルフは名前覚えるのが苦手で、そっちの白いデカいのはマジで天然なンすわ」

 みんなキャラ濃いよね。

「なんなんですかあなたがたは……」
「移住予定の冒険者っす」
「分かってますよそのくらい」

 ですよね。じゃないと許可証とかモノジチにしないよね。

「それで、えーと、クレイヤーさんでしたっけ。土地移住許可証を持ってきたってことは、住んでいい土地があるってことすよね」
「……そうです。引退前の冒険者がこの周辺に住むのは珍しいことではありますが、人口が増えること自体は歓迎しておりますから」
「税金増えるもんね!」

 ドラゴさんのドヤ顔が眩しい。

「なんつー身も蓋もない」
「酷い話ですね」

 たしかに酷い。ドラゴさんが。
 マジでどうしたんドラゴさん。帰って来れて嬉しいのは分かるが落ち着こ。な?

「……村長からの連絡で変な冒険者だと聞いてましたが、本当に変なひと達ですね……」
「変って言われてるよユーリャさん」

 なんでや。

「いや、今のは三人ともだろ」
「えー? 自分は変じゃないよ?」
「見ました? ハーツさん、これが天然っすよ」
「天然って怖いですねぇ」
「怖くないよ!?」

 怖いよ、色んな意味で。


 


 
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