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みんないっしょのむいかめそのごー!
しおりを挟む『まぁ、そういうわけで技や装備は作られなかった世界ではあるんですが、素材やヒントはあちこちにありますのでなんとかなるはずです』
「なんとかとは」
「あちこちにあるって、わたし達にそれを探せと?」
『そういうことになりますね!』
いや、どういうことだよ。ドヤ顔してそうな声で腹立つなコイツ。
「えーと、遺跡とかダンジョンがあるからそれでなんとかしろってことかな」
「なるほど?」
『察しがいいですね! そういうことです!』
ドラゴさんが野生の勘で察してくれた。さすがドラゴさんである。
「ええ……めんどくさ……」
「あるものを作るのは楽だけど、全部一から作るとなるとしんどいねぇ」
「ですねぇ」
納得はしたものの、めんどくさいものはめんどくさい訳で。
まじかよ。この世界のこともまったく分かってねェのにそんなことまでしなきゃならんのか。
『ご安心ください! 時間だけは腐るほどありますよ!』
「なんも嬉しくねェんだよなァ」
「それな」
寿命が無ェってなんの罰ゲームなの。
そんな感じのやりとりをした後、ワタナベさんからの様々な情報を整理しながら、街が見えなくなったのを見計らって三人で走り出した。
えーと。
・寿命無い
・レベルがチート
・神々が気持ち悪い
・レベル上げし放題(ただしダンジョンその他を自分達で見つけるしかない)
あとなんだっけ。まあいいや。
正直、これ以外だって色々と気になることは多い。まったく解決していないことだってどちゃクソある。だがしかし、なんかもうめんどくさかった。
考え続けンのって頭が疲れるンすわ。
そんな感じで走ってたら途中で変なキノコを見付けたドラゴさんがそれを持って帰ろうとしてハーツさんに止められるという、ちょっとしたコントをしつつ走ったら、なんか五分とか十分か十五分かそこらで村が見える所までに来ることが出来た。時間は測ってないから知らんけど無駄に早すぎるのだけは実感した。
興味本位でちょっと本気出して走ってみようぜって、ちょっと本気のスピード出したらこうなった。
正直怖い。なにこの肉体やだこれ。こわい。
途中でドラゴさんが木にぶつかったけど粉々に粉砕してたり、足で踏んだ地面が陥没してえぐれて軽く爆発したのも怖かった。だけど、色んなものにぶつかりそうなスピードで走ってンのにひょいひょい避ける自分も怖かった。地面に足付けた後の滞空時間が長すぎて怖かった。空中なのに避けるのなんなの。
なお、ハーツさんは障害物をひょいひょい避けながら通りすがりに見付けた何かをひょいひょい採取しては所持品欄にぶち込んでいるみたいだった。それもそれで怖い。なんなのこれ。
「ユーリャさんちっちゃくて見失いそうなんだけど、もうちょいどうにかならないの?」
なにを思ったのかドラゴさんがいきなり失礼なこと言い出した。
「うるせぇ服装は派手なんだから我慢しろし」
こちとら派手じゃないと成り立たねェ吟遊詩人だぞ。むしろドラゴさんが無駄にでけェんすよ。アタシぁ標準より高いほうです。
「でも木の間に隠れるし緑だし埋もれるじゃん」
「やかましいわチートのくせしやがって」
「ユーリャさんもチートじゃん」
「クソっ……そういやそうだったすわ……」
チートだから見失うことなんてねェだろ、ってつもりで言ったけど、もっともなことを言われてしまって変に凹んだ。
自分がチートだなんて正直しんどい。
今のところは不自由がないけど、力加減間違えたら色んなものが色んなことになっちまうンだもん。マジでやだよ怖い。
「チートがチートを貶すって新しいですね」
「あ、自分これ知ってる! どんぐりの背比べっていうやつだ!」
「……なんすかね、なんか、かなしい」
「えっ、なんで!?」
いやなんでって。むしろ逆になんでドラゴさんは平気なンすかね?
『はぁ……じゃれあうイケオジ……素晴らしい……』
「ワタナベさんは静かにしてろ」
『ハイ』
毎回毎回なんなんすかねアンタは。
「それより、全然疲れが来ないんですが、どういうことでしょうねこれ……」
「えー? 明日筋肉痛になるんじゃない?」
不思議そうなハーツさんに、ドラゴさんが身も蓋もないことを言い出した。
「わあ、なんかありえそうっすけど、ありえてほしいようなほしくないような複雑な気持ち」
「レベルがチートだもんねぇ」
「でも肉体はおじさんですしねぇ」
しみじみと呟いて、三人ともがうんうんと頷く。
しかしいつまでも村に入らない訳にも行かないし、早く村に入りたくてソワソワしてるでっかくて白い人も居るし、さっさと行くか。
「……とりあえず村入る?」
「ん、待って、なんか、入口誰か居る」
二人を促して歩を進めようとした次の瞬間、ソワソワしてたドラゴさんが気付いた。
チラチラと入口を見ていたからこそ気付いたのかもしれない。
「あれ、ほんとだ」
「なんでしょうね」
明らかに村人じゃ無さそうな感じの服装の人が一人。怪しいかと言われれば怪しいけど、単純に村に用があるだけのような感じもする。うーん。
「警戒はしつつ、行こうか」
「りょーかい」
「わかりました」
そんなやりとりのあとに、徒歩で進む。だんだんと村の入口が近付いてきて、必然的にその謎の人物にも近付いて行くことになったその時。
「はっ……!?」
ドラゴさんが何かに気付いた。
「ドラゴさんどしたん」
「あのひと、髪が、無い」
ものすげー言い様である。
「や、無くはないでしょ、うっすら残ってるすよ」
「ハゲ……」
「聞こえたらどうすんですか、シーっですよ、シーっ」
「だって、頭皮光ってる……!」
ハーツさんが必死に人差し指を口の前にして沈黙を促すジェスチャーを繰り返している。
しかし、ドラゴさんは困ったように眉を下げながら入口に立つ人とこちらを交互に見ていた。こっちが困るわ。
「頭皮くらい光るでしょ毛が薄いんだから」
「ユーリャさんが一番酷い気がするんですが」
「え?」
どこが?
「あなた方さっきから聞こえてるんですけど!?」
入口の人がバッとこちらを振り返りながら頭を隠すようにおさえていた。
改めて頭を隠しているとそれなりに整った顔をしている人物であるのがよく分かる。種族は、多分人間。服装は遠目から見てた時にはスーツみたいだなと思ったけど、執事服というか礼服というか、なんかそんな感じのやつだ。やっぱり村人じゃなさそうだな。
「ほらーやっぱり! 失礼なこと言っちゃダメっすよ」
「一番失礼だったのユーリャさんだったような」
「アタシぁむしろダメだってしか言ってねっすよ?」
そんなに失礼なこと言った記憶ねェけどな。
「だめだこの人一番タチが悪いやつだ」
「え、ユーリャさんタチなの?」
「個人的にユーリャさんはネコがいいです」
「なんの話してんすか?」
「ベーコンレタスなお話ですのでお気になさらず」
「どういうことなの」
マジでどういうことなの。
「えーと、何の話してたっけ」
「あの、なんなんですかあなた方……」
頭を隠したまま怪訝そうにこちらを見るその人は、なんというか、Sな人にモテそうだなという感想が湧く。
「あ、そうそうハゲのひと」
「ハゲてません!」
「だからドラゴさん失礼だってば。毛が薄いだけなんだからこのひと」
「ユーリャさんのが失礼ですねぇ」
「気にしてるのに……どうして初対面の方にそんなことを言われなくちゃいけないんですか!」
あ~ぁ~、やっぱり~。
「ほらドラゴさんのせいでこのひと泣いちゃったじゃん」
「え、あ、ごめんね?」
「ユーリャさんのが酷いんですよねぇ」
泣かしたのユーリャさんじゃないですか? とかハーツさんが言ってるけど、ちょっと何言ってるか分からないね。
「でも……ハゲてるよね」
「毛が薄くて頭皮光ってるだけっすよ」
「いやそれやっぱりハゲなんじゃ」
「まだハゲてません!」
いや、うん、さっきからどうしたドラゴさん。さては村に帰れて嬉しくて変なテンションになってンじゃ……?
「だいたい、なんで年上の人からそんなことを……!」
「え、いくつなんですか?」
「25です」
「え」
「苦労……してるんすね……」
「きっと、すごく頭を使うお仕事に就かれてるんですよ」
「なるほど……頭使いすぎると……って聞くっすもんね」
「なん……だって……!? まさか、最近の抜け毛は……!」
どうやら本当に悩んでいたらしい。ちょっと悪いことしちゃったかね。なんか全然初対面な感じがしなくて、なぜか色々と言ってしまった気がする。昔から一言多いってよく言われてたからなァ。遠慮、どこ行っちまったんだろう。
「それはひとまず置いといて、あんたここでなにしてたンすか?」
「ものすごく今更感がある」
「シーっ」
ドラゴさんのツッコミをハーツさんが止めていた。地味にウケる。
「あぁ、ええと、俺は領主様の補佐官で護衛の魔導士、カーム・クレイヤーと申します。今回は領主様からの書簡と、それを村長に届けたあと諸々の手続きの為にこんなド田舎まで来ました」
言葉に若干のトゲを感じる。
あ、コイツ若干性格悪ィな?
───────
(そらそうだ こんだけ言えば そうなるよ…… ワタナベ 心の俳句)
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