46 / 68
みんないっしょのむいかめそのよーん!
しおりを挟む「ていうか、それよりも気になってることあるんすけど」
「分かる。あれでしょ」
「あれですよね」
空中に浮き出たステータス画面を三人ともがそれぞれ眺めつつ、呟いた。
「レベルっすよね」
「レベルですよね」
「レベルだよね」
上からアタシ、ハーツさん、ドラゴさんである。
「ゲームだと確か上限が99だったっすね」
「そう、だからなんもすることなくて三人で高難易度コンテンツばっかり行ってたんですよね」
「自分はアイテム製作ばっかもしてた」
「それを言ったらわたし採掘とか採取とか漁もしてましたよ」
記憶を辿れば、ワタナベさんはアタシらのことを“レベルが高い”とは言ってたけど、“カンストしてる”とは言ったことがない。ということはつまり、そういうことなんだろう。
なお職業レベルとこっちのレベルは完全に別物で、簡単に言うなら職業レベルというものは練度というか、完全に独立した職業に対するレベルだったりする。
「でもそれ、このステータス画面には出てないっすね」
『それはこの紋章が戦闘に関するステータス画面だけに接続されてるので、それしか表示されてないんですよ』
なるほど。冒険者と言えば探索、探索といえば戦闘だから仕方ないのかもしれない。
「じゃあ生産職系は?」
『ゲームのメニュー画面を出して、自分の名前のところを長押しするともっと細かいステータスが見られますよ!』
「長押し」
「スマホかよ」
「草」
それぞれ納得したところで、もう一度紋章から出てるステータス画面に視線を送る。
『あれ、見ないんです?』
「ラノベでもステータスの表示とか飛ばし読みしてたし、ゲームでも気にしたことなかったから、良いかなって」
「わかる。わたしも新しい装備手に入った時すら最強装備ボタン押して終わらせてました」
「数字で出されても意味わからんすもんね」
「ねー」
ステータス出されてもイマイチ分からんからね。DEXが685とか言われても、それよりギミック覚えてどれだけ正確に避けられるか、スキル回し完璧にしてどれだけ高火力が出せるか、どれだけ短時間で攻撃を叩き込めるかとかが重要だし。
とか考えていたら、ふとドラゴさんが何かに気付いてしまった。
「……ん? え、じゃあワタナベの輝きって加護、戦闘系なの?」
『戦闘中はきっとめっちゃカッコイイでしょうから、すごく輝けますね!』
「なにそれやだ」
「目がチカチカしそう」
戦闘中に輝かそうとすんなよ。どうすんだよそれ。
「前向きに考えましょうよ二人とも。洞窟とかで戦闘すれば光源が要らなくなりますよきっと」
「そんな光られたらめちゃくちゃ目立つじゃん」
「草」
めっちゃ敵寄ってきそうだよね洞窟なんかで光ったら。あと隠密行動出来んすわそれ。まじどうすんの。
「そんなことよりレベルなんだよ」
「あ、そうそう、レベル」
「レベルレベル」
なんかレベルって言いすぎて脳内で文字が崩壊してきたな……。一回落ち着けアタシ。
「ねェワタナベさん、この255って上限?」
『そうですよ。255までレベル上げられます』
改めて問い掛けるドラゴさんに、ワタナベさんが頷きつつ答えてくれた。
そして、その答えはアタシらゲーマーにとって、とてつもなく価値のあるものだった。
「やっっったーーー!!」
「よっっっしゃあアアア!!」
「これで……ようやく……!」
両手を突き上げ喜ぶドラゴさんに、ガッツポーズで叫ぶアタシ。
それから、天を仰いで目頭を押さえるハーツさん。
そしてそんなアタシらに戸惑うワタナベさんである。
『な、なんですか皆さん、どうしたんですか』
「どうしたもこうしたも! レベル上げ出来るってめちゃくちゃ嬉しいんすよ!?」
『そ、そうなんですか?』
そうなんだよ!
「毎日インしては、まったり素材を採取してもらって装備作るだけの日々……」
「繰り返し同じようなコンテンツを周回して、もう目を瞑っても躱せる作業と化したギミック……」
「その全てからおサラバなんですね……!」
過去を思い返して出てない涙を拭う三人に、何故かワタナベさんが引いていた。
『ガチ勢ってそんな感じなんだぁ……』
いやなんでお前が引いてんだ。失礼な。
ちなみに真のガチ勢はアタシらみてーに生ぬるくねーから。もっとヤベー奴めっちゃいるっつーの。
「そりゃそうだよ。次のパッチでの拡張がいつになるか分からんし、それがあってもすぐ終わらせちゃうし、楽しいけど脳死状態というか」
「255なんて、めっちゃレベル上げられるじゃん。レベル上がるってことは新しい技が増えるし、着られる装備も増えるってことすよね」
「ですねぇ」
たのしみー、とほくほくしている三人に、ワタナベさんはバツが悪そうに口を開いた。
『あの、喜んでいるところで水を差したくはないんですが、一応言いますね。ここ、ゲームじゃないので、技とか装備とか、作るのは全部あなた方になります……』
「………………えっ」
「それはどういう……?」
ちょっと言ってる意味が分からんすけど、どういうことかねそれ。
『まずこの世界の、世間一般的なレベルの上限は50とされています』
「へ?」
ドラゴさんが素っ頓狂な声を上げた。しかしその気持ちが凄くわかる。
えっ、上限に対してそれは低くない?
なんで技とか装備とか存在してないの?
『上限は255なんですが、そこまで辿り着く前に寿命その他もろもろで死ぬ人が多いんですよ。だからこそ、50の壁と呼ばれていて、そこを越えるのが本当に難しいそうなんです。
ちなみにそれを越えると超越者と呼ばれて、国からも神に選ばれし勇者とか言われて、なんかめんどくさいことになります』
え、まじでか。
『一番長生きなエルフの中でレベルの高い人でも70までで頭打ちなんです』
エルフでも70……?
え、エルフってファンタジー世界じゃ相当長生きだよね?
それでもそんなにレベル上がらないのはおかしくない?
「……えぇと」
「つまりこの世界って、あのゲームで一番最初のパッチで上限だったレベル50で止まってて、凄いヒトでもレベル70ってことすか?」
『少し違います』
「え」
違うの?
『この世界の平均レベルは25で、凄い人が50、それ以上はエルフやその他の寿命が長い種族しか居ないけど、それでも上限が70なんです』
はァ!?
「どうしてそんなことに!?」
「何があったんすかこの世界」
『なんかちょっと目を離した隙に衰退してました』
「お前のせいじゃねェか」
衰退させてんじゃねェよ。にも関わらずなに他人事みたいに言ってんだお前。
『仕方ないんです。推しの雷神トーリェンダーさんが引きこもって出て来なくなっちゃって、神界大騒ぎだったんですから』
「いやなんも仕方なくねェだろ……」
なに言ってんだお前……。
「いや、推しは仕方ない」
「推しは仕方ないですね」
「えっ、責めてんのアタシだけ?」
推しって仕方ないものなの? 実はアタシそういうの居ねェからよく分からんのだが。
しかしハーツさんとドラゴさんには推しが居るらしい。多分アタシの知らん作品の知らん奴なんだろう。
「一旦推しは置いといてもらっていいっすか」
「推しは置いとくもんじゃなくて愛でるもんなんだよ」
「アッハイ」
ドラゴさんの目が怖い。白目が黒いから余計に怖い。
「で、何の話でしたっけ?」
「えぇと、レベルの話っす」
ハーツさんナイス助け舟である。
『御三方のレベル、この世界じゃ高過ぎるんですよね……』
「そう、それ。完全にチートっすよコレ、どーすんすか」
「ラノベでよくある、クソ設定の最強チートみたいな、マジでそんなんになってますねぇ」
「すっげぇヤなんすけどそれ」
もうちょい別の表現なかったんすか。
しかしハーツさんがそういうラノベを読んでいるということは分かった。
「自分あぁいう苦労知らずみたいなの好きじゃない」
「気持ちは分かる」
うんうん、レベルは着実に上げていくものだよね。
でもドラゴさん、前に職業レベル上げるのめんどくさがって、課金でレベルを買ったこと、アタシは覚えてるよ。
「楽して最強とか、どう考えても対価ヤバそうですよね。人間性とか持ってかれてる気がします」
「ヒェッ」
「こわっ」
疑いの目で、フワフワ浮きながら光り輝くワタナベさんを三人で見つめると、当のワタナベさんから苦笑とも微笑とも取れる声が聞こえて来た。
『わたくしたち神々があなた方に望むのは……歌って踊って戦って、カッコよく過ごすあなた方を撮らせて頂いて、それをキャーキャー愛でさせてもらうことだけですので、どうぞご安心ください……』
「いやそれはそれでどうなの」
キモイんすけど。
0
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界に転移す万国旗
あずき
ファンタジー
202X年、震度3ほどの地震と共に海底ケーブルが寸断された。
日本政府はアメリカ政府と協力し、情報収集を開始した。
ワシントンD.Cから出港した米艦隊が日本海に現れたことで、
アメリカ大陸が日本の西に移動していることが判明。
さらに横須賀から出発した護衛艦隊がグレートブリテン島を発見。
このことから、世界中の国々が位置や向きを変え、
違う惑星、もしくは世界に転移していることが判明した。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
超文明日本
点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。
そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。
異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる