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みんないっしょのいつかめそのななー!
しおりを挟む「ねーねー、そういやロンちゃんたちのお土産どこで買うー? ていうかお金どーするー?」
「……うーん、冒険者組合でなにか引き取ってもらいましょうか」
「そーすね。正直、所持金全部がハーツさんの胃袋に消えると思ってなかったすわ」
そんな食うと思わんやん。
よかったー、口座のお金触ってなくて。なんなんすかねハーツさんの食欲。どうなってんすかまじで。
「なんかオッサンでエルフだからダイエットとか気にしなくていいと思ったら食べたくなっちゃって」
「うん、にしても食べ過ぎなんじゃないかな」
「イケオジエルフになったら胃袋がブラックホールにでもなったんすかハーツさん」
えへへ、とか笑ってるけどこれ笑いごとじゃないからね?
この先どうすんのこんなんで。食糧危機だよこれ。
「そうなのかもしれないですねぇ。全然満腹にならないんですよ」
「うそだろ」
「まじかよ」
ハーツさんが不思議そうに首を傾げ、それを見たドラゴさんが驚愕で変顔になった。多分アタシも似たような顔してる気がするけどまあいいや。
さすがのアタシらもドン引きである。
「ストレスによる過食……?」
「正直、前に少しそのケがあったのは認めますが、今はストレスゼロなので……」
「うーん……」
どう見ても異常なんだけど、理由も分からない。
とはいえ、なにかしら理由はあるはずだ。
ハーツさんをじっと観察して、ひとつの結論を出す。
「あれだけ食べて体型にすらなんも影響が無いってこたァ、なんか起きてるっすね。腹ン中で」
「なんですかそれやだ」
悲しそうな顔が返ってきたけど、他に可能性がないんだから納得して欲しい。
「え、ハーツさんお腹になにか飼ってるの?」
「もっとやだそれ気持ち悪い」
「あ、じゃあ妊娠?」
「きっとこーんな長いミミズみたいなのだよ」
「どっちもやだ」
長いミミズみたいなのって、たしか寄生虫で、サナダムシって名前だったような。よく知ってたなドラゴさん。
なお、アタシがなぜそれを知ってるかというと、学生時代の友人に医者志望が居てたまたまそんな資料を見せられた記憶があるからだったりする。
キモくてめっちゃ記憶に焼き付いてる。だれか取って。要らんこんな記憶。
『はいはーい! ようやくわたくしの出番ですね!』
サナダムシの記憶と戦っていたら、久しぶりな気がするワタナベさんがひょっこりしてきた。
「あ、えっと、だれでしたっけ。ワナビさん?」
「ちがうよ、ワタワタさんだよ」
『ワタナベです!』
「間違われすぎてて草」
ワナビはまじ草なんすけど。むしろワしか合ってない。響きは近いね。うん。どっちかというと最初の二文字繰り返したドラゴさん意味わからんくて草生える。
「紛らわしい名前だよねぇ」
「覚えにくいのかもしれないね」
「いやどう考えても覚える気ないだけでしょ」
「興味無い人の名前覚えるの苦手なんですよね」
「わかるー」
やっぱ覚える気ないんじゃねーか。かわいそうに。まあ、特になんも思わんすけど。
『みなさんなんか酷くないですか?』
「酷くないよ多分」
「そうそう」
『多分って言っちゃってますけど』
ドラゴさんは正直だから仕方ないね。
「それより、ハーツさんになにが起きてんすか」
『あ、それなんですが、まず、この世界のエルフがどういう性質を持っているか、の説明をさせて頂きますね』
「ふむ」
そういえばゲームとかファンタジー系のラノベでもエルフって作品ごとに地味に違ったりするっけ。
村焼かれたり、里滅ぼされたり、村焼かれたり、好奇心で外に出て奴隷にされたりしてるっすもんね。
……なんか違う気がするけどまあいいや。
『エルフが長命なのは、みなさんご存知だと思うんですが、その理由は魔力にあります』
ほほう。こっちはそういう感じか。
『彼らには特殊な性質があって、周囲の魔力を溜め込み、生命力として変換することが出来るんですよ』
「ん? つまり、魔力さえあれば生きていける種族ってことなんすか?」
最強じゃね?
『簡単に言えばそうですね。魔力があるからこそ長命で、しかもそれを貯蔵しながら使用出来ますので』
まじか。すげェなァエルフ。
「エルフって霞食って生きる仙人みたいな感じなんですね……」
え、仙人ってそんな生き物なの?
「ハーツさん、霞は食べられないよ?」
「知ってますよ?」
「え?」
「え?」
ドラゴさんは何言ってんすかね。
「……で、それと食事になんの関係が?」
『つまり、エルフは食べた物を魔力に変換することが出来るってことなんですよ』
「なるほど」
周囲の魔力って食べ物も該当するんすね。
まぁ、だいたいのファンタジーではそこらじゅうに魔力があったりするから、多分そういうことなんだろう。知らんけど。
「つまり、食べ放題じゃないですか!」
『それでも本来なら余剰魔力は吸収出来ないはずなんですが……ハーツさんもレベルが高いので、溜め込める魔力の量が桁違いなんでしょうね』
ハーツさんもゲームじゃカンストしてたもんなァ。
「ねーねー、よく分からんからお土産見に行っていい?」
「待ちなさいアンタお金ないでしょ」
「あっ」
さっき金無いって話したばっかじゃねェのまったくもう。
「そういえば、アンタ今までめっちゃ静かだったけど何してたんすか」
『あ、イケオジが三人揃ったのでデジカメで色々撮ってました』
いや、なにしてんだお前。
「え、デジカメあるんですか」
「どゆこと?」
だよね。そうなるよね。なんでデジカメあるんでしょーね。全然分からんよね。
『あなたがたのお写真をたくさん撮って、神々ネットワークで公開して、広告料でブロマイド作って販売する予定です』
「どういうことなの」
まってツッコミが追いつかない。
「え、イケオジが神様に需要あるってことなんですか」
「神様ってイケオジ好きなの?」
『神って言ってもめっちゃ数が居ますから、そりゃイケオジ好きも居ますよ』
「そりゃそうなんだろうけどさ」
だとしてもどういうことなのかさっぱり分からん。
『美女や美少年や美青年や美少女な神が多くて食傷気味だからか、イケババアやイケジジイ、イケオバ、イケオジの需要が高いんです』
「まじかよ」
「うそだろ」
「神界どうなってんの……」
神様って老若男女居るもんじゃないの?
なんでそんな偏っちゃったの?
『ちなみに、神界いちのイケオジ神は、雷神トーリェンダーさんといってあらゆる神々からモテモテだったんですが、度重なる神々のストーカー行為により神不信に陥って引きこもってしまいました』
「かわいそう」
「めっちゃかわいそう」
気の毒な神様も居るんすね……。
ていうか神様ってストーカーするんだ……。
『ですので、相手がヒトなら好きに愛でても良いだろうってことで、あなたがたの需要はとても高いのです。良かったですね!』
「良い部分ってさっきの話のどこにあったんですか?」
「さっぱり分からん」
「おなじく」
むしろ戸惑いしか感じんすわ。
「え、つまり、わたしたちも神にストーカーされるかもしれないってことじゃないですか」
「えっ、あっ、そういやそうか!」
「ええ……やだ……」
ハーツさんが気付いてしまったことで、三人ともがそれぞれ戦慄した。
ストーカーとか要らん。お帰りください。
『ご安心ください。そうならないようにわたくしがマネージャーとして全力でサポートしておりますので!』
「ん? 自分らってアイドルグループかなんかなの?」
「え、なんか知らん間にえらいことになってませんかそれ」
「どうも出来んのが一番困るんだが」
ドヤ顔で自信満々に言ってるけど、三人から総ツッコミされてるワタナベさんである。色々とどういうことなの。
『大丈夫です! ファンクラブ会長が統率してくれてますし!』
「まって」
「ファンクラブてなに」
「なにが起きてんの」
いや、意味わからん。
『ちなみに、ヨウサイ会長はユーリャさん推しです』
「めっちゃオッサンみたいな名前……」
『女性体の神です』
「一気にカッコイイお姉さんイメージになった」
『吟遊詩人として活躍するのを楽しみにしています、って言ってました』
意味わからん。
「え、アイドル? アイドルなん?」
「ユーリャさんモテてるぅ~」
「おめでとうございますユーリャさん」
「えぇー……、よく分からんけど頑張りますって伝えといてください」
『かしこまりました!』
いやまって、まじで意味わからんなにこれ。
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