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みんないっしょのいつかめそのろーく!

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 その後、受付のお姉さんにパーティを組んだと報告して、パーティ名と共にメンバーを登録してもらった。
 なお、登録しておくことで何があるかというと、多人数用依頼を受けられるようになったり、受けた依頼金の分配を組合が自動でやっておいてくれたり、ソロでやるよりも何かと優遇されたりしてお得らしい。
 よくわからんがお得ならいいか、ってことで登録してもらったけど、これ、デメリットとかないよね?
 もしあったら今度モティさんに聞いてみよう。

 そんなこんなで冒険者組合から出て、役所へ行きドラゴさんの身分証を作って、ようやく三人ともがこの国の一員として一歩を踏み出せる下地が出来上がった。
 あとは、戸籍を作って貰えば完璧である。

「そういや、パーティリーダーがアタシになってたけどよかったんすか?」
「むしろ自分は絶対無理だと思う」
「わたしはめんどいんでヤです」

 ただ貧乏くじ引いただけだった。ちょっとこの件について小一時間ほど問い詰めたい。なにそれひどくない?

「戸籍って領主さんしか作れないんですっけ?」
「村長さんの話ではそうだったすよ」
「戸籍が取れれば、市民権が取れんの?」
「役所のお姉さんの話じゃ、そうだったすね」

 他にも市民権を取る方法はあるっぽいけど、今回は最短コースだったからか関係無いらしい。

「意外としっかりしてるんですねぇ」
「ねー、ファンタジーってもっと適当かと思ってた」

 しみじみと会話するドラゴさんとハーツさんだが、その話前もしてなかったっけ?

 なお、現在何をしているかというと、大通りの屋台食べ歩きである。
 お土産も買わなきゃならんからそういう話になったけど、ハーツさんの空腹が限界っぽかったから仕方ねェやな。

「ほんで、実はここからシリアスな話入りたいんすけど」
「やだ、シリアルがいい」
「シリアルだったら牛乳買わないといけませんね」
「えぇー……」

 真剣な話がしたいのに、食べ物の話も混ぜなきゃいけないらしい。えーと、つまり、真剣過ぎず、グダグダな会話をしようということか。

「……分かった、じゃあ適当な感じで行くわ」
「シリアル食べたい」
「パフェに入ってるやつもいいですよね」
「わかるー」

 ドラゴさんとハーツさんの会話に便乗する。チョコパフェ食べたい。

「えーと、まずドラゴさん、予期せず男になっちまったわけですが、ご感想どうぞ」

 今まで聞くに聞けなかった事をインタビューするみたいに聞いてみた。

「えーとね、楽!」
「まぁ、ドラゴさん大人しそうに見えたっすもんね」
「そう! 変なオッサンが絡んで来なくなったし、わざわざ声掛けてくる男もいねーし、最高!」

 ノリノリである。もしかするとドラゴさんにとっては良い事だったのかもしれない。
 世の中って男女問わず勝気な人より大人しめに見える人のがなぜか損すること多いんすよね。なんだろうねアレ。

「ゆーて、男性っすよ体。不都合とか違和感とか」
「そりゃー身長と体格違いすぎて最初は大変だったよ? でも、全部夢だと思ってたからなぁ」

 夢だと思ってる間に慣れちまったんすね。適応力高ェなァ。さすがドラゴさん。

「え、女だった自分に未練とかないの」
「昔から男の子って楽そうで良いなあって思ってたから、特にはないな。ただ自分、イケオジじゃなくてイケメンがよかったけど」
「わかる」

 それに関しては分かりみしかねェっす。

「はい次、ハーツさん。ご感想どうぞ」
「結婚とかそういうの考えなくてよくなったので、良かったなぁって思います」
「え」

 屋台の串肉むしゃむしゃしながら、なんかいきなり真顔で返されてつい固まった。

「両親から言われてたんですよ。アンタいつ孫の顔見せてくれんの? って……、その孫ってわたしが産まなきゃいけないじゃないですか」
「あー、まぁ、そうっすね?」
「つまり、とっとと男捕まえて結婚して子供産めってことですよね? でもそれそんな簡単に出来ることじゃないですし、何言ってんだこいつらってずっと思ってたんです」
「はぁ」

 それはたしかに。
 そういえばハーツさんは三人の中で一番年上だったな。年齢とか全く気にしない関係だったから誰も気にしてなかったけど、なるほどなぁ。

「でも、こうなったらもう関係無いですよね! もし子供作っても産むの自分じゃないし!」
「あ、そっち?」
「ハーツさん、すごく最低なこと言ってるー」

 ドラゴさんが珍しくマトモなこと言ったんすけど、明日槍とか降らんよね? やだよそんなの。
 まぁ、たしかにさっきのは“自分は誰かに産ませるけどあとは知らん”みたいなニュアンスを強く感じてしまったから、仕方ない気はする。そんな人じゃないのは知ってるけど、もうちょい言葉選ぼうよ。

「恋愛とか結婚とか絶対無理なので、その最低なヤツの被害者は出ません。ご安心ください」

 最低な自覚はあったんかい。どうすんだよ被害者出たら、とは思ったけど、実際にそれがありえないのは理解出来た。

「なんかそーゆーこと言うとフラグになりそうだけど、恋愛無理なのはわかる」

 だって、恋愛って相当心の余裕とお金の余裕と仕事の余裕が無いと出来ないじゃん。

「まず恋愛って、出会いがあったとしても相手に惹かれるかどうかだと思うんですよ」
「うんうん」

 あー、それもあったすね。好きになるかどうかってのも大事だよなぁ。たしかに、それは結構ネックな気はする。

「鏡の中に理想が居るわたしは、どう考えても無理です」

 真顔でキッパリと返されて、なんか微妙な顔してしまった。
 うん、そっちかぁ……。

「ハーツさんがナルシストに……」

 ドラゴさん、シーっ。言わないのそういうこと。

「え、二人は鏡見て何この素敵なイケオジ……! ってならないんですか?」

 つまりハーツさんは自分見る度にそんなんなってるんすね。

「自分は出来れば美青年が良かったなぁってなる」
「ユーリャさんは?」

 案の定の質問にちょっと考えてから、正直に答えることにした。

「アタシぁ、……なんか麻痺ってて」
「えっ、それ一番ヤバイやつじゃない?」
「自覚した時が怖いですね……」

 二人の反応に改めて自分のヤバさを自覚する。うーん、やっぱりヤバいかぁ。

「確認なんすけど……みんな、無理してるわけじゃねェっすよね?」

 もしそうなら、なにか方法を考えたり、探したりしなきゃいけない。
 なにより、兄弟や家族でも仲違いして、険悪になってしまうことだってあるのに、この三人は仲がいい友人とはいえ元は完全な他人。
 どのくらい一緒に居るか分からんが、それでも、できるだけ長く共に在りたいから、トラブルになりそうなことは減らしておきたい。

 とか考えてはいるけど、正直、二人に無理して欲しくないだけだったりもするあたり、自分勝手だなぁーと思う。

「うーん、その点に関しては、まだ分からない、としか答えられそうにありませんね」
「そうそう。だってまだ一週間も経ってないよ? こっち来てから」

 あっけらかんとした二人の言葉に、ふと納得した。

「……あー、たしかに」

 こっち来てから色々と濃かったから時間の感覚が行方不明になってたけど、そういえば一週間も経ってなかった。

「だいたい、そんな急に男として生きてく覚悟とか、ちゃんと割り切るとか、無理じゃないです?」
「いや、無理でしょ。自分は無理」
「うわー、たしかに、しか言えねェっすわ」

 まじで他の言葉が出てこない。
 改めて言われてみれば、本当にそうだ。

 もしかしなくても、ちょっと焦りすぎたんすねアタシ。 

「そーそー、覚悟とか、そーゆーのってそんな簡単に決められるもんだっけ?」
「目標があるなら出来るとは思いますが……わたしたち、なんかありましたっけ?」

 ……うーん。

「なんもねェっすね」

 考えてみたけど、現段階で全身全霊を賭けられるような目標なんもなかった。

「じゃあ無理だ!」
「無理ですね!」

 真顔でキッパリとした断言だった。うん。

「無理だったかー」
 
 それでも今後のことを考えたら頑張って色々と何かしらを考えなきゃいけないんだろうことは分かっている。
 だが、なんかちょっと気が楽になった。

 ……もうちょいのんびり行きますかね。


 
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