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みんないっしょのいつかめそのさーん!

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 ハーツさんは、基本的にテキトーでマイペースだ。
なんか色々あったとしてもめんどくさいと思えば誰かに言うとか、相談するとか、全くしない。
 せいぜいストレスがMAXになった時にそういえばこんなことがあった、とその時のことを話すくらいで、だからこそアタシらはハーツさんと仲良くなれた。
 この三人の共通点が、細かいことをあんまり考えず、テキトーでマイペース、そして、根本的に大雑把でめんどくさがり屋だからだ。

 体が男性になってしまったことだって、今のところ不都合がないからまあいいや、とすら思ってるに違いない。アタシがそう思ってるくらいなんだから、ハーツさんやドラゴさんが思ってないとは思えないくらいには、考え方が良く似た、似たもの同士だ。

 だがしかし、大雑把だからといって見過ごせないことはある。
 そして今回ハーツさんから無理矢理に聞き出したそれらは、明らかに見過ごしたりスルーしたりしちゃいけないし、むしろ出来るわけが無かった。

「へぇー、そんなことが。でもなんでそんな大事件を黙ってたのかな?」
「言ったと思ってたんですけどねー」

 ハーツさん、目が泳いでるけど。

「うん、色々あったけどなんとか冒険者になりました、としか聞いてないなぁ」
「あれ? おかしいなぁ?」

 おかしいなぁじゃないんだよハーツさん。誤魔化されないよ?

「ハーツさん?」
「えへへ?」

 首を傾げてるけど、アタシの萌えはワイルド系チャライケオジなんで範囲外です。

「なぁハーツさん、俺今から街ぶっ壊してきていい?」
「いいと思うよ」

 ドラゴさんの言葉を肯定すると、うさぎのおっさんが慌てたように声を荒らげた。

「いやダメに決まっとりますやろ! なに真顔で破壊宣言してはりますのん!?」
「そうですよ! そんなことしたらお食事処なくなっちゃうかもしれないじゃないですか!」
「そっちなん!? もっと気にするとこありますやろ!?」

 イラッとしたらしいドラゴさんがドスの効いた声でうさぎのおっさんを睨む。

「さっきからうるせぇな、そもそもアンタなんなんだよ?」
「それもそうだね。たしかに、こんなところまでわざわざ来て何したいのかな? まさかとは思うけど、ハーツさんを狙った組合員とグルだったりしないよね? もしそうなら」
「なんでそうなりますのん!? あーしはただの冒険者です! アンタさんら、このへんの見廻りが強化されとんの知らんのん!?」

 ドラゴさんに続いてワンブレスで言ってたら食い気味に否定された。ちっ、許可してないのに喋りやがった。自己主張強いなこのおっさん。

「見廻り?」
「そう! 行方不明者の手掛かりを探すために、冒険者組合で募集されとった依頼を受けた冒険者が、このへんをうろうろしとるんです! あーしはそのひとり!」

 オウム返しなハーツさんに希望を見出したのか、なんか、うさぎのおっさんの自己主張が激しくなった。なんでこの人こんな必死なんだろ。引くわ。

「ふーん」
「なんなんその目! 疑ってはりますの!? 証拠やったらここに……、あれ、どこ行ったん!? たしかにここに入れてたんに……!」

 必死な様子でごそごそ懐に手を入れたり出したりしてるうさぎのおっさんの横で、一枚の畳まれていた紙を開いて中身を読む。

「えーと? 行方不明者捜索と見廻り、手掛かりになるようなものがあれば良し、なくても見廻りを頼みたい…………、ちっ、嘘じゃないのか」
「なっ、いつの間に!?」

「え? なんか懐からはみ出てたけど」
「出てたら取っていいとかそんな訳あれへんやろ!!」

 実はこれ、アタシの手癖が悪ィわけじゃなくて、吟遊詩人になるために取った忍者で覚えた“情報収集”ってスキルが発動しただけだったりするけど、それはこの際まあいいや。

 なおこの世界の職業が、みんなでやってたあのゲームと同じ仕様ということは、取った職業のスキルが職業ごとに消えずに蓄積されていくあのゲームと同じということで。
 つまるところ、吟遊詩人という職業は、忍者、暗器使い、弓術士、ガンナー、四つ全部のスキルを使うことが出来るのである。

 改めて考えると何この怖い吟遊詩人。

 でもなんか怖くなったらちょっと怒りが落ち着いてきた。ありがとう吟遊詩人。

「ここの同意署名のサインって、このうさぎのひとの名前ですかね?」
「そうみたい」

 紙を背後から覗き込んできたハーツさんに簡単に答えると、ドラゴさんも反対から紙を覗き込んでくる。両側からイケオジに挟まれているが、どっちも若干好みのイケオジではないので若干残念だ。
 しかしいい匂いがするのでヨシ。

「へぇ、うさおっさん、キトって名前なんだ」

 うさおっさんは草。

 なお、この草は“笑”の頭文字wを連打したら草が生えてるようにしか見えなかったことから生まれたらしいネットスラングである。
 ちゃんとは知らんけどたしかそんなんだったって誰かから聞いた気がする。
 オンラインゲームじゃみんな普通に使うから覚えちゃったけど、それがどんな経緯で出来たのかは実はよく分からんスラングの一つだ。他にもあるんだろうけど今は思い出せないから置いとこう。

「おっさんおっさんやかましわ! アンタさんらもおっさんやないの!」
「この中で純粋天然素材なおっさんはうさおっさんだけだから安心していいよ」
「アタシらが養殖されたおっさんみたいな言い方まじで草なんすけど」

 ドラゴさんも怒りが落ち着いたみたいだけど、何気に酷いな。でもなんも間違ってないからなんも言えねェわ。ウケる。

「これっていくらくらいの報酬なんです?」
「聞いて驚かんといてや! なんと! そのへんうろうろするだけで銀貨一枚や! しかも! 手掛かり見付けたら金貨一枚! 定員三十名!」

 ハーツさんの問いで、なぜかものすごいドヤ顔し始めるうさおっさんだが、何に驚けばいいか分からなかった。

「へー」
「ほー」
「ふーん」

 三人共、耳とか鼻とかほじりそうな反応である。

「なんやのその全然興味なさそうな反応!」
「他国から来たんで、まだ貨幣価値がよく分からんのすわ」
「はァ? 他国からなんでわざわざこんな田舎に? アンタさんら、どんだけ怪しいか自覚ありませんのん?」

 ものすごく怪訝そうな顔をされたけど、自分達が怪しいかと問われると、……正直なところ常識や環境が違い過ぎてそこに慣れるだけでいっぱいいっぱいなので、考える余裕がない。
 つまり、自覚はない。

「ねェなァ」
「ないねぇー」
「ありませんねー」

 案の定三人共なかった。

「…………このことは組合に報告させてもらいますえ」
「どのこと?」
「……え」

 間髪をいれずに問い返したドラゴさんに、うさおっさんが戸惑う。

「むしろなんて報告するンすか?」
「そりゃあ……他国から来たばかりの冒険者が女の子を寄ってたかってやましいことしようとしてた、と」

 とりあえずで聞いてみたら、気を取り直したドヤ顔で堂々と言い放った。
 なるほどなるほど。

「あ、ちなみに、アタシら全員この依頼受けた帰りなんすわ」

 ポケットから出した風を装ってアイテム欄から依頼書を出し、ぺらっと見せる。

「いや、それ初めから言うて!?」
「聞かれたっけ?」
「何してるか聞いたんやから答えるのがスジちゃうん!?」
「えー、でもうさおっさん色々勝手に決めつけて話聞く気なかったじゃん」
「ぐぬっ」

 頑張って食い下がるうさおっさんだが、もっともなドラゴさんの言葉に言葉が詰まった。

 やっぱ決めつけってよくないよねー。

「そうは言うてもアンタさんら、怪しすぎるんやわ」
「うーん、ミルガイン君どうしたらいいと思う?」
「あ、僕もう喋っていいんですか?」
「ミルガイン君空気読みすぎで草」

 それでも頑張って食い下がってくるうさおっさんの姿に、そろそろ第三者の意見を聞いとくべきかとミルガイン君へ声をかけたのだが予想外で草生えた。

「くさ?」
「いんやこっちのこと。で、どうすりゃいいと思う?」
「冒険者組合に行って真偽を確かめるのが簡単だと思います」

 はぇー、なるほど。

「へぇー、冒険者組合ってそういうことも出来るんだね」
「むしろ出来へんかったら冒険者の偽物出まくりやないの」
「たしかに」

 そんな感じで、ようやく街に入ることになったのだった。


 
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